福祉現場の音楽療法士での主な仕事内容
福祉施設に入所している方を対象にした音楽療法を実施していました。
年齢は20代から80代までと、分野的には「成人」でしたが、ご高齢の方が多かったです。
生活支援スタッフと連携して、日常生活での困り事や生育歴を資料として提供してもらい、
楽器の音やCDから流れる音楽などを、どのような使い方をして利用者の感性に働きかけていくのかを
日々検討して提供していました。
活動の様子は記録として日々書き留めておき、月の終わりにまとめとして、担当している生活支援スタッフに配布して情報を共有していました。
音楽療法の活動の様子を受けて、日常生活でどのような楽しみを提供していけば良いのか相談を受けることもしばしば。
(例えば、指先を使ったり体全体を使ったりした活動。利用者が好きな曲を使ったアクティブな活動など)
施設で大きな行事がある時は、運営スタッフとして働くこともしばしば。
そのため、施設の役職職員と仕事をすることも多く、とても責任の大きな職種でもありました。
福祉現場の音楽療法士ならではのやりがい
生活の場ではどこか意気消沈している利用者が、音楽療法の活動の場では生き生きとされていたり、
活動を通して表情が豊かになっていくこと。まさに、「変化」が観られた時にやりがいを感じました。
また、音楽療法のスタッフは利用者にとって特別な存在でもあったようで、生活支援員には話せない個人的な悩みなどを
こっそりと相談された時には、微笑ましく感じることもありました。
高齢の方が多かったとのことで、どうしても別れと向き合うことも少なくなかったのですが、ご家族の方から
「先生方のおかげで、とても良い時間を過ごさせてもらいました」という言葉を頂けた際には、自分の仕事のもつ力の大きさを感じました。
また、一緒に人生に寄り添えたような気がして、嬉しかったです。
日々活動を行っていることで、活動のバリエーションもたくさん持っているわけですから、寮での行事の出し物の相談を受けて
生活支援員と相談しながらアイデアを提供するのも楽しかったです。
また、音楽療法の活動自体を施設の目玉として捉えており、外部の施設からお褒めの言葉を頂けたことも、仕事の励みになっていました。
福祉現場の音楽療法士のマイナスポイント
やはり、いろいろなことができるという印象を持たれていたのは、良くもあり悪くもあった点かなと思います。
少ない人数で、たくさんの利用者を受け持っていましたので、事務作業の量もとんでもない量でした。
その上で行事のことが重なってくると、部署はパンク状態になることもしばしば。
また、「何か困ったらとりあえず音楽療法の部署を動かせば良い」という職員も残念ながらいて、
私たちが多忙でいながらも仕事を押し付けられることもありました。
また、はたからみれば、私たちの行っている業務は楽しいことばかりのように見られます。
そのことから、「毎日歌って踊って、楽に仕事できていいね」と声をかけられることもあり、
その時はとても悲しい気持ちになっていました。
しっかり目的を持って活動を行っていることが伝わりきれない時は、とてももどかしかったです。
福祉現場の音楽療法士の仕事に活かせる経験・スキル・資格
短期大学、大学、専門学校等で専門的に学ぶことができます。
そのような養成学校を出ると、卒業をするときに「音楽療法士一種、二種」の資格を取得できます。
さらに上の資格を目指そうと思えば、これは受験が必要ですが、「日本音楽療法学会認定音楽療法士」の資格取得も可能です。
地域独自の資格もあるようですから、上記に述べたことは一部だと捉えてください。
勉強をして資格も持っているとより現場に活かすことができますが、中には独学で勉強をして資格を持たずして活動をされている方もいます。
演奏家をしていて興味を持って、音楽療法に足を踏み入れる方も多くいます。
福祉現場の音楽療法士の仕事に向いている人・向かない人
仕事に向いている人は、まずは自分が音楽が好きであること。人が好きであること。音や音楽をいろんな形で扱っていくので、柔軟な考えを持てる人はとても強みになると思います。また、人を大切にできることが何より大きいと思います。それは、対象者に寄り添うだけでなく、一緒に音楽療法を提供するスタッフを大切にすることにもつながります。
音楽の経験があると、どうしてもプライドが先に立って、周りが見えなくなる人が多いです。どれだけ経験を積んでも、自分に満足することなく、周りの人に対しての敬意を忘れずにいられる人はこの仕事に向いていると思います。
向かない人は、上記に述べたことを受け入れられない人と言っても過言ではないと思います。
音楽はいかなる場合も美しいものでなくては!という、演奏家気質が強い人は、受け入れ難い場面も多くあるので向かないと思います。
福祉現場の音楽療法士仕事でのキャリアパス
音楽療法という言葉は、最近日本でもかなり浸透しつつあります。
外国では医療の一つとしても確立されていますが、それに比べたら日本はまだまだマイナーな立場にあると考えます。
仕事をする環境にもよりますし、フリーで活動をされていることが多いです。
施設によっては療育の一環として力をいれ、大事にしてくれるところもあるでしょう。
しかし、「出世」という点に関して言えば、音楽療法だけでの出世は難しい現状にあると考えます。
学校の先生や施設の支援員、演奏活動の延長線上で音楽療法の活動を取り入れて研鑽を積み、名前を知られていく方が多いです。
学術大会での事例の発表や、研修への参加で知ってもらうというのもあると思います。
とにかく地道に活動を続けていき、人と仕事を繋げて知ってもらう人が多いと思います。
福祉現場の音楽療法士業界の最近の動向
専門的に勉強した身からすれば、音楽療法は療育に近しいものと考えたら結びつきやすいと思います。
しかし、レクリエーションと線引きが難しいというのも事実です。
どういうものが音楽療法と断定できるのか、そのような定義はないので、
大袈裟に言えば、障がいのある子どもにピアノの指導をしているピアノ教室の先生が
「うちでは音楽療法にも取り組んでいます」と謳っているケースも少なくありません。
まだまだマイナーな職業と言えますが、近年、障がいのある方への考えが柔軟になってきていること、
日本全体が高齢社会となってきていることを踏まえると、需要はとても大きくなってきています。
それに伴い、音楽療法士という資格だけでなく、音楽健康?士というように、似たような名前の資格取得講座の案内を目にすることが増えてきました。
施設内に留まらず、音楽療法の活動を気軽に知ってもらおうと、独自にセミナーを行なっている音楽療法士がいることも事実です。
社会のバリアフリー化が進んで来ている今、音楽療法の存在も少しずつ表立ってくるのではないかと考えています。
福祉現場の音楽療法士仕事を未経験で目指すには?
自分が好きな音楽だけでなく、いろんな年代の音楽を聴いて知ることをお勧めします。
音楽の好みには、その人が過ごしてきた時代背景や家庭の環境など、いろんな背景が見て取れます。
好きな楽器の音や、その楽器をどのように扱うのか、その姿を見て、今その人がどんな心境でいるのか、
何を求めているのかなど、深いところを読んでアプローチをしていく仕事です。
上記に述べたことはアプローチのほんの一部でしかありません。
と思ったら、活動を提供していく身としては、それはそれはたくさんの引き出しが必要なのです。
是非とも、いろんな音楽や楽器に興味を持って、それを知るというところから始めて見てほしいなと思います。
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