印刷会社のグラフィックデザイナーの仕事内容、やりがい、向いている人、未経験から始めるには?

印刷会社のグラフィックデザイナーでの主な仕事内容

人口100万人そこそこの地方都市にある、
印刷や広告を営む企業に勤務していました。

主に印刷業を営むかたわら、チラシやカタログなど
各種印刷物を企画デザインする制作部門を社内に擁していて、
その部門の一員=グラフィックデザイナーとして6年あまり経験を積みました。

従業員50名程度のいわゆる零細企業でしたので、
そのレベルだと大手代理店から回ってくる下請けや孫請けなどのお仕事が
一定割合を占めるのが業界的には一般的だと思われます
(高い技術や特殊なノウハウを売りにしている企業は別にすれば)。

しかしながら、その会社では
全国的にも知名度の高いメーカーや販売会社などとも直接取引があり、
やりがいやキャリア構築のうえではとても恵まれていた環境が備わっていました。

デザイナーであればだれもが一度は携わってみたいと思うような
あこがれのクライアントとお仕事ができたことは大きなよろこびと言えますね。

とはいえ、お仕事はそのようないわば「高級料理」だけではなく、
薄利の定食やファーストフードなども大量にこなす町の食堂といった趣きもあり
職人として泥臭く元気にお仕事をこなしていくような資質が求められる職場でした。

印刷会社のグラフィックデザイナーならではのやりがい

有名企業とのお付き合いを例にとると、
先方の担当者さんは大企業の職制上、数年後ごとに昇進や異動が避けられないなか、
商品知識や過去の履歴、打ち出しのノウハウなどが
時を追うごとに当方に大量に蓄積されていくことになっていきました。

その結果、数年ごとにやって来る赴任間もない不馴れな新任担当者さんは
「ブレイン」や「秘書」として当方を頼ってくださるようになり
言われるがまま言うなりにデザインをつくるというようりも、
こちらの情報や提案を土台にしてより良きものを共創しようという
願ってもない関係性に恵まれることになったのです。

むろん、数あるクライアントのなかには無茶な要求を当然のように押しつけてくる
旧態依然とした社風のところも少なくありませんでしたが、
当方を尊重してくださるクライアントに対しては
デザイナーとしても労力や損得を度外視して力を尽くしたい!といった想いを
常に抱いてお仕事させていただくことができたように思います。

印刷会社のグラフィックデザイナーのマイナスポイント

お互いに敬意をもって尊重し合いながらお仕事できる関係性はとても大切ですが、
かといって、一つひとつの成果物のクオリティに関して
いい加減な馴れ合いや妥協が許されるものでは決してありません
(今回はこんくらいでいいっすよねー? で許されたい気持ちとの戦いです、常に…)。

ダメ出しや全否定を食らうことは、この職種上避けられません。
社内外問わず、(ひと昔前は)デザイナーを瞬殺することに
よろこび見出すクラッシャー気質に富んだ方々も数多く見聞きしてきました。

仮に意見が対立してしまう場面があったとしても
プロとして譲れない主張を、決してゆるがせにしない気構えを保つこと。
メンタルの強靱さこそデザイナーの本懐といえるかもしれません。

マイナスなメンタルモードに振れてきたときに
よりよきデザインを武器に、何食わぬ顔して「なにくそ!」で打ち返せるかどうか。
生き残っているみなさんは案外、面の皮は厚いです。

印刷会社のグラフィックデザイナーの仕事に活かせる経験・スキル・資格

わたしの場合は、まったくの未経験・異業種から転身でしたので
特にデザイン系の学歴やキャリアなしで飛び込んだ格好です
(むしろ前職でのキャリアに興味をもってもらえた)。

本気度をみてもらうことを主眼に、
「DTP検定」の資格を事前に取得していました。
テキストが秀逸で、自習するだけでも有用です。

印刷会社のグラフィックデザイナーの仕事に向いている人・向かない人

街中の看板の書体が気になる人、
電車の中吊り広告をすみずみまで読んでしまう人、
店頭のパンフレットをつい持ち帰ってしまう人、
鞄のなかに本が一冊入っていないと落ち着かない人、
出されたおしぼりを丁寧にたたんで手もとに置く人…

などにあてはまる項目がある方なら
個人的には素養を感じてしまいます。

あと、
自分が苦労に苦労を重ねてようやく生み出したものを
勇気をもって上司やクライアントに見せることをためらわない人。
特に無難な案ではない、攻めている案の方を。

その反応として、
マイナス目線や否定的見解が向けられることに一定の耐性がある人。

そして願わくば、そこらから発想の転換を図り
相手を「そう来たか!」と唸らせる場面を想像して
労をいとわずさらなる時間と労力を費やすことを楽しめる人。

印刷会社のグラフィックデザイナー仕事でのキャリアパス

まずはいちデザイナーとして、
あてにできる人材に成長することがまずは必須のステップでしょう。

最初からありとあらゆるデザイン性に対応することは不可能なので
(ベテランでも難しく、このテイストはこの人に…と決まってくる傾向あり)、
このクライアント、この案件なら任せて大丈夫! という評価を得ることが重要。

部署や会社全体としても
手間をかけずに任せられるなら楽なので、
段々とできる人の手もとには受け持つ案件が積み上がっていきます。
経年とともに、上からの仕事が降りてきたり下へ譲り渡したりしながら
手もとの難易度がレベルアップしていくのがいわゆる「成長」過程になります。

もしも全体が見回せることができるよう素養と実力が備わっているなら、
自分自身が手を動かして紙面を埋めていく作業よりも
クライアントとの打ち合わせや、コンセプト立案・要件定義など
よりクリエイティブ力や差別化のスキルが問われる
頭脳労働・管理業務のウェイトが増すことになったりして
結果「ディレクター」として部下を差配しながらチームを動かす立場になっていきます。

印刷会社のグラフィックデザイナー業界の最近の動向

新聞や雑誌、ダイレクトメールをはじめとする
純然たる紙媒体の仕事自体が逓減傾向にあり
紙媒体などは、もはやオワコンなどと言われて久しい世の中。
将来的には、Webやデジタル媒体に
完全に置き換わってしまうだろうという趨勢が
年々声高に喧伝されています。

しかし一方で、Webと比較した紙媒体への信頼性の高さや
直接的な手ざわりが生む体験性の高さやギミックの可能性などの視点から、
紙媒体としての有用性は損なわれないとする新たな可能性も散見されます。

たとえば近年では、紙媒体におけるQRコードの重用が顕著ですね。
いつもの雑誌やなじみのショップやサイトからのダイレクトメールで
モノやサービスをチェックし、気になるものがあれば掲載のQRコードで
直接ランディングページやオンラインショップに瞬時たどりつき、
ポチッとするだけで簡単に購入できるため、
訴求と購入アクションがスムーズに結びつきます。

いわば紙媒体とWEB媒体の特性をかけ合わせた
このようなハイブリッド販促においては、従来同様に
まずは印刷物をより魅力的たらしめる高い「デザイン能力」が求められます。
よく「グラフィック畑のデザイナーは、基本がしっかりできている」というご意見を
現場で耳にすることがよくありました。

紙と電子のハイブリッドな広告手法においては、
よりシビアに堅実なデザイン性を磨き上げてきたグラフィックデザインのスキルが
当然ながらデザインベースにおいても重用され、
展開されていくチャンスに満ちていることは言うまでもありません。
紙のデザインができる、というキャリアは今後も貴重なキャリアであり続けると信じます。

印刷会社のグラフィックデザイナー仕事を未経験で目指すには?

私の出自はまったくの未経験業界からで、
自分の信念以外に頼るべきものはまったくなかったのですが、
この仕事がやりたい! 向いている! という根拠のない想いだけで
何社もの不採用通知の果てに、ひとつのレールに乗ることができました。

しかし、実際に会社のなかから眺めてみると
他の仕事の方が向いていそうなのになー…と思えるような
デザイナーの方々に出会うことも少なくなかったのです。

あらゆる職業について言えることですが、
その仕事が好きで好きで仕方がない!(待遇は二の次みたいな)のような方がいれば、
あらゆる職業のなかから半ばなりゆきでその仕事をなんとなく選んだというような方も
いらっしゃると思います(決して悪いこととは思いませんが)。

言いたいことは、
けっしてこの職種を特別視するわけではないという点もふまえつつも
デザイナーという職種について思うところを申しますと、
好きで好きで仕方がない!タイプの方にしか、私はおすすめできません。

労を厭わずに、自分が一番楽しみながら、よりよきものを目指す気持ちに
勝る能力は存在しないと思うからです。

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