今回紹介する作品タイトル
フルメタルジャケット
あらすじ
この作品は前半と後半が明確に分けられています。前半は米軍海兵隊の新兵の訓練の様子が克明に描かれ、後半はベトナム戦争における戦場の様子が描かれています。他の戦争映画のように何等かの問題提起や反戦的な内容ではなく、ただ、ひたすらに淡々と描かれて行きます。これが独特の臨場感を生み出しており、前半、後半とも見所が沢山ある映画です。監督は名監督して有名なスタンリー・キューブリックです。キューブリック監督の常として、あまり細かい説明は入らないので「感じる」しかありません。しかし、この映画ほど「見る者に独特なショック」を与える映画はありません。ある意味「究極の戦争映画」とも言えると思います。未見の方は「戦争映画」という先入観を一切、捨ててご覧になることをお勧めします。
おすすめする(見どころ)ポイント
この映画で有名なのは前半に登場する教官であるハートマン軍曹です。ハートマン軍曹を演じているリー・アーメイは俳優さんではなく、実は元軍人で実際に米軍海兵隊の新兵訓練の教育教官をしていた方なのです。最初は「演技指導」のために来てもらったのですが、そのあまりの凄まじさに監督が驚愕してしまい、そのまま出演してもらうことになったといういきさつがあります。ですので前半で描かれる新兵訓練の様子は「全て本物」なのです。そしてハートマン軍曹の罵詈雑言は日本語訳にすると猥雑すぎて、最初に字幕翻訳を担当した戸田奈津子氏は「穏やかな表現」にしたのですがキューブリック監督に却下され別の翻訳者に変更されたといういきさつがあります。その結果。ハートマン軍曹のセリフはそのまま日本語訳されたため、その猥雑すぎる内容のため地上波では一回もTV報道されたことはない、というほどです。「本物」を見られる唯一の映像です。
改善してほしいと思ったポイント
この映画に「改善して欲しい点」などを上げたらキューブリック監督に鼻で笑われてしまいそうです。それくらいにキューブリック監督の映像に対する考え方は独特なのです。語らないことで、むしろ「感じるしかない」ように仕向けられている、とでも言うのでしょうか。ですので、人により好き嫌いの激しい監督と言えるでしょう。ですが、この作品だけは見たら「とても忘れられない」ほど強い印象を残します。キューブリック監督宇が苦手な方でも大丈夫です。
やるべき・観るべき
はっきり言いますが、この作品は絶対に見るべきです。これほど面白い映画はないからです。前半部分だけでも「見る価値十分」です。米軍海兵隊の新兵訓練の「本物」が見られるだけでも凄いですよ。また、そういった環境で人が「当然、行うであろう」ことが、当然のように描かれ軍隊という、独特の場所がどんなものかを見ることもできますし、前半を締めくくるラストエピソードには、きっと驚かれると思います。
類似似作品
戦争映画は、これまでにも沢山、作られています。プラトーン、地獄の黙示録、ハートロッカーなど名作もたくさんあります。しかし、この映画ほど現実感に溢れた映画は多分、ないでしょう。これまでの戦争映画は「少しでも、それらしくするために」細部に凝りキャラクターも、それらしく作られています。しかし、この映画は逆で「これは映画だぞ」という「作った感」があるのです。そして不思議なことに、その「作った感」が逆に現実感を強めているのです。実に不思議な映画で類似作品はちょっと思いつきません。あえていえば「博士の異常な愛情」でしょうか。キューブリック監督、独特の手法で、ちょっと真似はできない作品だと思います。
総評
スタンリー・キューブリック監督といえば代表作は2001年宇宙の旅、です。それは当然のことであり納得もできます。しかしフルメタル・ジャケットほど、キューブリック監督の本質をよく表している映画は無いと思います。この面白さは他の作品では、とても味わえない面白さです。しして、その面白さは「出て来るものは全部、本物」であるという「事実に裏付けされた現実」でもあるのです。日本に「海兵隊」がなく「ハートマン軍曹」がおらず「ベトナム戦争」も無かったことを感謝したくなる映画でもあります。
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