ドナルド・トランプ大統領が2025年4月2日に発表した「相互関税」により、海外からアメリカに製品を輸入する企業は最大50%の関税を政府に納めなければならないため、Appleが関税回避のためにiPhoneを満載した飛行機をわずか3日間で5機も飛ばしたことが報道されるなど、関税の影響が特に大きいメーカーらは対応に追われています。同様の動きとして、AppleはiPhone以外にも多くの高額製品を関税発動前に輸入すべく奔走していたほか、Dell・Microsoft・Lenovo・HP・ASUSなども緊急対応に踏み切っていたことが、日経新聞の英字紙・Nikkei Asiaによって報じられました。
From Apple to Samsung, Trump’s tariffs force supply chains to adapt — fast – Nikkei Asia
https://asia.nikkei.com/Business/Technology/Tech-Asia/From-Apple-to-Samsung-Trump-s-tariffs-force-supply-chains-to-adapt-fast
伝えられるところによると、Apple・Dell・Microsoft・Lenovoなどの企業は、特に3000ドル(約44万円)を超える価格のPCなど、できるだけ多くの高級デバイスをアメリカに空輸するようにサプライヤーに圧力をかけていたとのこと。
Appleなどに製品を納入しているある企業の幹部は、「顧客からできるだけ多くの家電製品を製造して空輸してほしいと要請を受けました。しかし、最大の課題は部品や材料の在庫が残り少ないことです。新しい関税の導入まで1週間を切っているので、出荷できる数には限りがあります」と話しました。
緊急対応に追われたのはサプライヤーだけではありません。ある国際航空輸送会社のマネージャーは、Nikkei Asiaに「アメリカ時間の4月8日までにすべての関税手続きを済ませる必要があるので、アジアからの便数を増やすよう緊急の要請を受けています」と話しました。
一部のメーカーの対応からは、どうすべきか途方に暮れていたことがうかがえます。例えば、HPは当初サプライヤーに、できることはほとんどないので所定の出荷計画を進めるよう通達していましたが、24時間もしないうちに決定を覆し、数日間で可能な限り多くのデバイスを出荷するよう催促したとのこと。
また、できるだけ関税の影響が少ない中間輸送拠点を模索する動きも見られました。あるサプライヤーの幹部は「これまでベトナムを選んできた多くの顧客がここ数日、当社に電話してきて『フィリピンの関税はたった17%なので、うちのフィリピン工場の製品の出荷を手伝ってほしい』と依頼してきています」と述べています。なお、トランプ大統領の相互関税では、ベトナムの関税は46%とかなり高い税率を設定されています。
同様に、HPは中国やタイよりも関税が低いメキシコでの生産を増やすようサプライヤーに要請しており、一部の生産拠点をアメリカに移すことも検討していることが、事情に詳しい関係筋によって明かされています。
一方Dellは、ベトナム当局にアメリカ政府と交渉するよう促したとのこと。企業からの要請を受けたことが理由かどうかは不明ですが、ベトナム政府は4月5日にアメリカからの輸入品の関税をゼロにする用意があると表明していたほか、4月10日にはアメリカと貿易協定交渉を開始することで合意したと発表しています。
土壇場での対応を諦めて、慎重な姿勢を取っている企業もあります。例えば、Samsungは一部のサプライヤーに対し、2025年第2四半期と第3四半期のスマートフォン部品の発注を削減し、市場の状況次第でさらに調整するつもりだとの意向を伝えました。また、任天堂は「関税の潜在的な影響と市場環境の変化を見極める」としてアメリカでの「Nintendo Switch 2」の予約開始を延期しています。
任天堂がトランプ政権の関税引き上げを受けNintendo Switch 2の予約注文を延期 – GIGAZINE
さらに、世界最大のPCメーカーであり、アメリカと激しい報復関税の応酬をしている中国の企業でもあるLenovoは、「アメリカの関税が続くようであれば、国内市場や、中国と強い関係を維持する一帯一路諸国、欧州市場に力を入れる」と社内のチームに指示したと、事情に詳しい幹部は明かしました。
また、ASUSは既に十分な在庫を確保しているとして、多くのメーカーとは逆にアメリカへの出荷を停止するようサプライヤーに指示したほか、今後は新興市場やアジア太平洋諸国、欧州市場を優先する意向を通達しました。
Lenovo・HP・Dell・ASUSと取引しているサプライヤーの幹部は「まだ不確定要素が多すぎて、具体的な決定を下すのは非常に困難です。何かについて決定しても、24時間か48時間、あるいは72時間で再検討したり、調整が必要になったりするかもしれません。しかし、1つだけ確かなのは、複数の顧客から『アジア太平洋地域、中東、欧州のようなアメリカ以外の市場に重点を移したい』との要望を受けていることです」と話しました。
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