気候変動は既に地球上にさまざまな悪影響をもたらしていますが、温室効果ガスの影響は衛星軌道にもおよび、運用できる人工衛星の数が最大で半分以下にまで減少することが、マサチューセッツ工科大学(MIT)などによる新しい研究で判明しました。
温室効果ガスによる気候変動に関する研究の多くは、地球上のほとんどの生命や人々が暮らす対流圏内を対象としており、大気上層部への影響は軽視されてきました。一方、インターネット通信や天気予報、ナビゲーションなどのテクノロジーのために打ち上げられる低軌道(LEO)衛星が近年急増しており、この領域の持続可能性に対する人類の依存度はこれまでになく高まっています。
2025年3月10日に査読付き科学誌・Nature Sustainabilityに掲載された論文の研究で、MITおよびバーミンガム大学の研究チームは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが大気の上層部の収縮を引き起こす可能性があると報告しました。
特に問題となるのが、国際宇宙ステーションやほとんどの衛星が周回している熱圏の収縮です。この領域が収縮すると大気の密度が下がり、空気抵抗が低下します。
空気抵抗は人工衛星を減速させ、最終的に地球上に落下させてしまうため、空気抵抗の減少は一見すると好都合に思えますが、同時に運用が放棄された廃棄衛星や宇宙ゴミの寿命も延びてしまいます。これにより、スペースデブリが長期にわたり人工衛星と同じ軌道を高速で周回するようになり、軌道上での衝突事故の危険性が加速度的に高まるケスラーシンドロームが深刻化することが予想されます。
過去に行われた予備的なシミュレーションにより、人為的に排出される温室効果ガスが増えると、その働きで大気の下層に熱が閉じ込められて気候変動が起きる一方で、上層では熱が放射されて熱圏が効果的に冷却され、大気の収縮が起きていることがわかっていました。
さらに、研究チームは今回、増え続ける温室効果ガスが熱圏にどのような影響を与え、軌道上の物体の挙動をどう変化させるかをシミュレーションするモデルを開発し、低軌道の「衛星収容能力」を計算しました。その結果、人工衛星の軌道として最も人気のある領域の収容能力が2100年までに50~66%減少する可能性があるとの予測が示されました。

論文の筆頭著者であるMITのウィリアム・パーカー氏は「気候変動が現状を破壊しているため、大気の上層も危うくなっています。同時に、宇宙からブロードバンドインターネットを提供するための衛星の打ち上げは大幅に増加しています。こうした動きを慎重に管理しつつ、炭素の排出量を削減する努力をしなければ、宇宙空間は過密状態になって、衝突やデブリの増加につながるおそれがあります」と話しました。
宇宙ゴミを減らす手段として、強力なレーザーでデブリを破壊する技術や、ビームによる電気的な作用でスペースデブリを回収する技術などの研究が進められていますが、いずれも実用化にはほど遠いため、衛星軌道の安全は大気による自然なブレーキに頼っているのが現状です。
「トラクタービームで宇宙ゴミを引き寄せて回収する」というまるでSFな技術が実現する可能性がある – GIGAZINE

論文の共著者でMIT航空宇宙学部の准教授であるリチャード・リナレス氏は「地球上の温室効果ガスに関する私たちの過去100年間の行いが、今後100年間の衛星の運用に影響を及ぼしています」と話しました。
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