貿易事務(フォワーダー)での主な仕事内容
国内・海外問わず、荷主様(お客様)の荷物を船便・航空便で運ぶためには、集配先の輸送の手配から始まり、貨物を乗せるための船便や航空便のブッキング手配、そして、それらに付随する書類作成業務など、さまざまな業務が必要となります。
関係各所と協力しあいながら、いろんな日程や変更事項などがあれば、都度都度調整し、貨物を目的地まで最適の手段で、安全に運ぶことが求められます。海外の取引先とは英語でのやりとりがあるため、連絡にも時差を考慮したり、国が違う相手への異文化理解というものもスムーズな輸送のために必要になってきます。
国内の貨物輸送の場合、集配先の貨物の搬出入の時間調整から始まり、運送会社とも車両や日程の調整を行う必要があります。物流は天候などにも大きく左右されるため、台風や地震、降雪などがあると、遅れた船や飛行機がオンスケジュールになるのを待ちながら関係各所と調整を行います。
また、海外の輸出入となると、支払いの流れなども複雑になったり、通関書類のミス一つで貨物が運べなくなる可能性もあるため、語学スキルはもちろん、煩雑な業務における細かなミスも見逃さない正確さも求められます。
貿易事務(フォワーダー)ならではのやりがい
やはり、貨物を安全に運び終えたときに最大のやりがいや喜びを感じます。
フォワーダーは荷主様と運送会社の間に入り、双方の要望や意見を聞きながらも貨物を確実に安全に運ぶため最善を尽くします。
不動産のような「仲介」業務ではなく「調整」業務といったほうが適切かと思います。
物流というものは、倉庫から荷物を搬出するところから始まり、それを実際に運んでくれる運送会社(ドライバー)がいて、それを船や飛行機に乗せると船会社や航空会社が関わり、到着したあともさらに現地で配送してくださる運送会社があるわけです。
一つの荷物を運ぶにしてもたくさんの関係者がおり、それぞれとうまく調整しながらやっと一つの荷物を運び終えるわけです。
お客様の大切な貨物に破損や水濡れなどの損傷が起きないように細かく貨物の状態を把握することも我々の仕事の大切なところです。
関わる人たちが多いだけにそれらを調整するのは時に大変なこともあります。
現場の担当者同士の阿吽の呼吸でひとつのモノが運べたり運べなかったりするわけです。
関係各所といかに信頼関係を築きながらお客様の貨物を運べるか、目を配らせることがたくさんあり、神経を使う場面も多々あるのですが、そういった難しい局面ほど乗り越えて貨物が無事目的地にて納品されたときのやりがいは大変大きいものがあると思っています。
貿易事務(フォワーダー)のマイナスポイント
とにかく休まることが少ないです。これは仕事を長くやればやるほど実感し、職歴が長くなったからスキルが付いたから楽になるというものではありません。むしろやればやるほど、気を配ることが多くなってくるのは間違いないでしょう。
例えば、震災や台風などの自然災害が起きると、貨物を搬出入する倉庫や会社が被災して貨物を運べなくなったり、船や飛行機のスケジュールが大幅に遅れると貨物の納期にも影響が出てきます。実際に2011年の東日本大震災の際には船に乗船させる予定の港の貨物置場(ヤードといいます)に被害が出たり、貨物船が入港する港の設備にも大きな被害が出て取り扱っていたお客様の貨物を従来のルートとは全く別のルートで運ばざるを得なくなるなどの影響も出ました。また運送中の道路状況なども考慮しなくてはいけません。東京オリンピックの時にも一部道路が閉鎖されるなど、従来の運送ルートでは運べない時期はこういった特段の事情も考慮しながら運送予定を組んでいかなくてはなりません。
物流は血液のように止まることなく24時間動き続けるため、いつ何時トラブルが起きてもそれに対処できるだけの準備をしておかなくてはいけないことも念頭に置かないと貿易事務の仕事は勤まらないでしょう。私は実際に勤めていたときは、早い時は朝4時のまだ寝ている時間、遅い時は夜中の23時過ぎまで対応に追われたこともありました。それも祝日・休日などは関係なくです。
土日祝日はしっかり休みたい、オンオフのバランスをしっかり取りたいという人にはこの仕事はなかなか辛いかもしれません。
貿易事務(フォワーダー)の仕事に活かせる経験・スキル・資格
運行管理者に必要な資格
運航管理の資格や貿易実務検定などの資格があればなお良いでしょう。
日本国内の貨物の9割はトラックによる輸送で成り立っているのですが、それを支えているのは実際に現場で走ってくれるドライバーたちの存在です。彼らが安全に事故なく仕事ができるように重要な役割を果たすのが運行管理者です。
フォワーダーが直接運転手を管理するわけではありませんが、知識があることでより理解が深まりフォワーディングに活かせるかと思います。貿易実務検定はその名の通り、国際貿易業務に従事する方なら持っていても損はない資格です。輸出入に関わるすべてのことをこの資格で一通り学ぶことができます。モノやお金の流れから、INVOICEパッキングリストなどの通関書類の作成方法、貿易実務で使用する英語のテストもあるので、総合的に学べてスキルアップにつながる資格化と思います。
貿易事務(フォワーダー)の仕事に向いている人・向かない人
地味で煩雑な作業をコツコツと正確にこなせる人が向いています。急なトラブルや予定の変更にも抵抗なく対処できる人が求められます。フォワーディング業務自体が、とにかく調整調整の連続で物流を陰で支える仕事です。何か手配をしたり、変更があれば各所と調整が必要になるので、そういった「終わりなき」仕事に対して実直に取り組める人が向いています。また、コミュニケーション能力も重視されます。相手の話に耳を傾けられる方が好ましいです。
一方で、急なトラブルや変更に対応するのが苦手な方や、時間から時間で仕事をしたい、プライベートを大事にしたい、オン・オフをはっきり分けたい方には向いていません。最初のうちは覚えることも多くあるので、学ぶ姿勢のない方はなかなか続けられないかもしれません。また、物流は終わりが見えない仕事です。常にたくさんの荷物がいろんな地域で動いていて、それらひとつひとつを管理していかなければなりません。運び終わってもまた次の貨物が待っています。そのため、終わりのない仕事が苦手な方には向いてないかもしれません。また、地味でコツコツとした作業、煩雑な業務のなかにもひとつひとつ正確さが求められます。これらも苦手な人は厳しいかもしれません。
貿易事務(フォワーダー)仕事でのキャリアパス
貿易事務自体は慣れて覚えてしまえば、基本的にやることは同じなので、
大きく出世をすることはないかと思います。
物流業界自体がそこまで高年収を狙える職種でもないので、
高年収を狙いたいのであれば思い切って通関士などの国家資格を取得し、
通関士として仕事をするなどの新しいキャリアを築いたほうが高年収は狙える気がします。
ただ、自身の語学スキルを磨いたりすることで、
既存の荷主以外にも新たな海外の顧客を営業で獲得したり、
一つの会社に属しながらも自発的な行動で年収・キャリアアップなどを望むことが十分に可能ではないかなと思います。
もしくは大手の物流会社への転職などを視野に入れると給与アップも望めるかもしれませんが、
例えば運送業界では2024年問題など未来に向けて改善しなくてはいけない課題も多くあり、
現時点ではそのような問題から業界全体での飛躍的な成長というのは改善はあれど見込めないような気がしています。
貿易事務(フォワーダー)業界の最近の動向
国際貿易において、直近では大手の海運会社が過去最高利益を出したと報道されています。コロナ禍による物流網の混乱で航空便も船便も需給バランスが崩れ、コンテナの価格も上昇し、運賃価格自体が高騰し続けました。モノを運びたくてもハコがない状況が続いており、円安の影響でドル建てで運賃の支払いが行われることから、為替の影響も大きかったと言われています。
運ぶモノの量はコロナ禍の後押しやECサイトの発達などによって年々拡大していますが、それに比例するように物流業界が抱える問題も大きくなっています。2024年問題や現場の長時間労働などの問題があるため、物流の流れが改善されなくてはなりません。また、持続可能な陸海運の実現のために、代替燃料の開発など、業界全体で解決しなければならない問題がたくさんあります。
今後は、業界が抱える問題に向けてどのように取り組むべきかを考えるフェーズに入ったのではないかと感じています。飛躍的に発展することよりも、業界全体で問題を解決していくことが求められています。
貿易事務(フォワーダー)仕事を未経験で目指すには?
未経験でも成長できる仕事がある
やればやるほど自分のできることが広がり、多くの方と協力して荷物を運ぶやりがいに気が付けたら、仕事も楽しいはずだ。
荷物をただ運ぶだけと思われがちだが、毎回異なる状況下で仕事をしていかねばならず、仕事をするたびに面白さややりがい、新たな発見も得られる。
また、日本にいながら海外の方ともやり取りできるチャンスもある。
多くの人と関わりながら仕事をすることは、時にしんどいこともあるが、そこを乗り越えて協力しながら荷物を運ぶ楽しさを知れば、フォワーダーとして現場を回すプレイヤーになれる日も遠くない。