脳の老廃物を除去することでマウスの記憶力が劇的に改善したという研究結果 – GIGAZINE

ワシントン大学の研究チームが、マウスの脳内で老廃物の除去システムを強化することでマウスの記憶能力を向上させることに成功したと論文で発表しました。

Meningeal lymphatics-microglia axis regulates synaptic physiology: Cell
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(25)00210-7

Clearing Brain Waste Dramatically Improves Memory in Aging Mice : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/clearing-brain-waste-dramatically-improves-memory-in-aging-mice

脳が機能し続けるには代謝の過程で生成される副産物である老廃物を排出する必要があります。近年では「人間の脳は脳脊髄液を通じて老廃物を洗い流している」という説が有力で、特に睡眠時に老廃物が除去されているとされています。

「睡眠中に脳が老廃物を除去する」という仮説を補強する論文が発表されるも一部の科学者らは批判 – GIGAZINE


こうした老廃物除去のメカニズムは年齢を重ねるにつれて衰えていき、脳内に老廃物が蓄積することで認知障害などを引き起こします。既に脳の老廃物除去システムの改善方法については研究が進んでおり、2024年8月には「プロスタグランジンF2α」という薬品を使用して年老いたマウスの脳脊髄液の流れを若いマウスと同程度まで回復させることに成功したと報告されました。

アルツハイマー病の原因となる「脳の廃棄物除去システムの老化」を改善する治療法が開発される – GIGAZINE


今回、ワシントン大学のチームは特定のタンパク質のみに薬を作用させる標的タンパク質治療を行うことで、年老いたマウスの髄膜リンパ管の成長と機能改善を促進しました。髄膜リンパ管は脳の外側を覆う髄膜に存在するリンパ管で、髄膜リンパ管の機能が向上することでスムーズに老廃物が除去されるとのこと。

治療を受けたマウスは治療を受けていないマウスと比べて記憶能力の向上が確認されたほか、脳の清掃装置が過負荷になったことを伝達するインターロイキン6というタンパク質の放出を低下させ、ストレスを受けたミクログリアによる脳の損傷を予防する効果も確認されました。

治療のターゲットが脳の外側にある髄膜リンパ管のため、脳を保護する血液脳関門を通過するための複雑な手順を踏むことなく治療を行えるのも今回の手法のメリットとされています。

論文の筆頭著者であるキム・キョンドク氏はこうした結果をもとに、「脳の健康と記憶にとってリンパ系の機能維持が極めて重要だ」「体内の老廃物管理システムをサポートする治療法は老化していく脳の健康維持に役立つ可能性がある」と述べました。

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