日本政府が支援する国産半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」への投資を民間企業はためらっており出資額は73億円にとどまる – GIGAZINE


Rapidus(ラピダス)は日本政府の支援を受けて誕生した半導体メーカーであり、北海道千歳市に建設した工場で2nm半導体の試作品製造を2025年4月に開始するとしています。ところが、ラピダスへの民間投資の誘致はうまく進んでおらず、記事作成時点では民間企業の出資額が73億円にとどまっていると報じられています。

Japan chipmaker Rapidus slow to attract private-sector investment – Nikkei Asia
https://asia.nikkei.com/Business/Tech/Semiconductors/Japan-chipmaker-Rapidus-slow-to-attract-private-sector-investment


〈AI・半導体〉 50兆円の投資を呼び込む「ラピダス」念頭に新法制定を | お知らせ | ニュース | 自由民主党
https://www.jimin.jp/news/information/209915.html

政府 “ラピダスなどに独立行政法人通じ出資”改正案 閣議決定 | NHK | 半導体
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250207/k10014715491000.html

現代社会では、最先端半導体の確保が産業や国家安全保障にとってますます重要になっています。ラピダスはこうした認識を背景に、トヨタ・デンソー・ソニー・NTT・NEC・ソフトバンク・キオクシア・三菱UFJ銀行といった大手企業から73億円の出資を受けて2022年に設立されました。

ラピダスの設立は日本政府による後押しを受けたもので、経済産業省は2024年4月にラピダスへの5900億円の補助金を承認。また、2024年11月に閣議決定された2024年度の補正予算案では、ラピダスを含むAI・半導体産業の強化に約1兆5000億円もの予算が割り当てられています。

日本政府がチップ・量子コンピューティング・AI産業の強化を目的に約1兆5000億円の補正予算を割り当て、一部はチップ新興企業Rapidusへ – GIGAZINE


与党の自由民主党は2025年2月7日、AI・半導体分野に官民合わせて50兆円もの投資を呼び込むことを目指し、ラピダスを念頭に置いた法律の改正案を閣議決定しました。この法案は、政府が独立行政法人の「IPA=情報処理推進機構」を通じて出資できるようにすると共に、民間からの融資に対する債務保証も付けられるようにするものです。

このように政府は、ラピダスへの投資を誘致しようとしていますが、Nikkei Asiaによるとラピダスは依然として民間部門の出資を得ることに苦戦しているとのこと。政府は記事作成時点で総額9200億円をラピダスに出資しているほか、2024年度予算では商工組合中央金庫の株式売却でまかなわれる1000億円もの資金援助を行う予定です。しかし、民間企業からの出資額は、依然として設立時に支払われた73億円にとどまっています。

政府はラピダスに対し、民間企業から1000億円もの追加出資を見込んでおり、既存株主に加えて富士通やいくつかの大手銀行が新たな資金調達ラウンドに参加を検討しているとのこと。しかし、あるメーカー幹部は「政府からの要請があったので投資を検討するしかありませんが、試作品すら持っていない企業に積極的に投資したくはありません」と語るなど、民間部門が政府と足並みをそろえて出資するかは不透明です。

野党立憲民主党の本庄知史衆議院議員は、巨額の税金が特定の産業や企業に使われることに対し、政府による検討と説明が必要だと主張。「私もラピダスには成功してほしいが、追加支援の前に、支援の全体像、基本方針、ロードマップなどを明確にすべきだ」と述べています。これに対して石破茂首相は、税金を投入する以上は方針を明確にするべきと認めつつ、激しい国際競争の中で出遅れることへの危機感も訴えました。

また、野党共産党の辰巳孝太郎衆議院議員は、過去にNECと日立製作所のDRAM事業部門が統合して設立されたエルピーダメモリが、巨額の公的資金が投じられたにもかかわらず2012年に破綻した件についても追及。ラピダスがエルピーダメモリの二の舞になるのではないかと警鐘を鳴らしました。

ある自民党議員は、「民間部門がラピダスの成功に懐疑的なままであれば、現在の公的資金イニシアチブに対する不安は高まるでしょう」とコメントしました。

北海道千歳市にあるラピダスの工場は2025年4月の試作開始に向け、急ピッチで建設やインフラの整備が進められています。半導体製造に必要な水を確保するため、JR南千歳駅付近から工場への4.1kmに及ぶ専用水道管は、通常なら4年かかるところを2年弱という突貫工事で仕上げられたとのこと。

ラピダス始動へ、「特例」重ね突貫工事 試作は量産への「第一関門」 [北海道]:朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/AST2L3D7CT2LIIPE00CM.html


ラピダス試作ライン稼働に必要な水道管の「通水式」 千歳|NHK 北海道のニュース
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20250228/7000073726.html

また、2024年12月には2nm半導体の製造において重要な量産対応EUV露光装置「NXE:3800E」を搬入。ラピダスの清水敦男専務執行役員は2025年2月28日、工場建設や製造設備の搬入は予定通りに進んでいるとして、4月の稼働開始に向けて自信をのぞかせました。

国産2nm半導体の生産を目指す日本の半導体メーカー・RapidusがASMLの量産対応EUV露光装置「NXE:3800E」の設置作業を開始 – GIGAZINE


ラピダス、4月稼働へ「工場建設・装置搬入は予定通り」 – 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC287RB0Y5A220C2000000/

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