中国では行き過ぎた「オンライン詐欺の取り締まり」による家宅捜索や通信の傍受がプライバシー問題となっている – GIGAZINE


メモ


経済の失速が鮮明になりつつある中国では、手っ取り早く稼げるとうたうオンライン詐欺が横行しており、その監視と抑制に注力する当局の取り組みが市民のプライバシー侵害という新たな問題を引き起こしていると、海外メディアのBloombergが伝えています。

China Online Scams: Xi Jinping Cracks Down on Fraud With Huge Surveillance State – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/features/2025-03-07/china-online-scams-xi-jinping-cracks-down-on-fraud-with-huge-surveillance-state


Bloombergの取材を受けたある男性の話によると、男性がある日海外から電話を受けたところ、直後に警察が電話してきて詐欺だと警告したとのこと。それから10分もすると家に何人もの警察官が駆けつけ、男性に金融詐欺の被害者になるようなことはしていないと宣誓する書類に署名をさせて撤収していきました。

あまりの迅速さに驚いたという男性は、「あの程度の詐欺行為に対処するのにそれほどの人員が必要なのかと思わずにはいられませんでした」と振り返っています。

このようなケースは中国ではよくあることで、中国当局は詐欺師との接触を思いとどまらせるために、2021年から2024年5月までの間に約70億件の通話と、ほぼ同じ件数のテキストメッセージを傍受し、1800万件以上の面談を実施しています。

国民を詐欺から守る政府の取り組みが不十分だと批判されているアメリカとは対照的に、強引で個人の自由を顧みない中国政府のやり方はプライバシー問題を提起させており、Microsoftのポスドク研究員で中国本土の国家的な監視体制に詳しい社会学者のChuncheng Liu氏は「多くの人は、監視が厳しいのは政府が自分たちのことを気にかけているからだと受け止めていますが、誰かが自分たちを監視しているという事実に目を向ける人もいます」と話しました。

以下は、中国における通信・オンライン詐欺の起訴者の推移を表したグラフで、最高人民検察院のデータを元にBloombergが作成したものです。


当局が電話、オンライン通信、買い物など、国民のあらゆる活動を監視して詐欺に目を光らせているのは、それだけ詐欺に対する当局の懸念が強まっていることを意味していると、Bloombergは指摘しています。

中国では、以前まで確実に蓄財できる手段だった不動産市場が低迷しており、低金利環境で投資も振るわず、多くの若者が失業しています。これにより、手っ取り早い利益や設け話を売りにする詐欺にだまされる人が増えているそうです。

以下は、中国公安省のデータからBloombergが作成した、オンライン詐欺被害者の年齢の内訳のグラフです。中国公安省によると、2023年に中国でインターネットや通信関連の詐欺に遭った人の平均年齢は37歳で、被害者の約62%が18歳~40歳だったとのこと。


中国は、こうした詐欺で国民がどれほどの損害を被ったのかはまったく公表しない一方で、習近平国家主席が2021年に開始したオンライン詐欺取り締まりキャンペーンにより、これまでに1兆1000億元(約22兆円)以上の被害が未然に防がれたと主張しています。

オンライン詐欺の中でも特に懸念されているのが、ロマンティックベイティングです。「豚殺し」とも呼ばれるこの中国発のロマンス詐欺は、アジアを中心とした大規模な国際犯罪ネットワークを形成しており、2025年1月にはミャンマーとタイの国境付近にある詐欺の一大拠点に監禁されていた中国人俳優の男性が救出されたことが大きく報じられました。カンボジアの詐欺プラットフォーム「Huione Guarantee(汇旺担保)」で、豚殺し詐欺などで集めた仮想通貨490億ドル(約7兆円)以上が処理されていたことが発覚したり、アメリカの成人の5人に1人がオンライン詐欺の被害に遭っていることが報じられたりと、ロマンティックベイティングを中心としたオンライン詐欺は世界的な問題に発展しています。

新型コロナウイルス感染症で寝込んでいた際に詐欺の電話を受けたことで、警察によって銀行口座を1カ月間凍結されてしまい、当座の生活資金のためにAlipayのモバイルウォレットにお金を移すことを許可してもらわなければならなかったというある男性は、Bloombergに「もちろん、警察は市民のためにこうしたことをしていますが、もっと良い解決策があるのではないかと私は思います」と話しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする


ソース元はコチラ

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事