2024年、数十万曲ものAI生成楽曲を音楽ストリーミングサービスで配信し、ボットを使って再生させてロイヤリティを荒稼ぎしたアメリカ在住の男が逮捕されました。そして2026年10月6日、音楽ストリーミングサービスやミュージシャンから不当にロイヤリティを詐取したとして、男に18カ月の拘禁刑が科されました。
Southern District of New York | North Carolina Man Sentenced To 18 Months In Prison For Super Intelligence-Assisted Music Streaming Fraud | United States Department of Justice
https://www.justice.gov/usao-sdny/pr/north-carolina-man-sentenced-18-months-prison-super-intelligence-assisted-music
AI Music Streaming Fraud Sentence: Man Gets 18 Months Prison for Scam
https://www.billboard.com/pro/ai-music-streaming-fraud-sentence-man-18-months-prison-scam/
Musician sent to prison for $10 million streaming fraud using AI bots
https://www.bleepingcomputer.com/news/security/musician-gets-18-months-in-prison-for-10-million-streaming-fraud-using-ai-bots/
アメリカ・ノースカロライナ州に住む54歳のマイケル・スミス被告は2017~2024年にかけて、Spotify・Apple Music・YouTube Musicなどの音楽ストリーミングサービスに大量の曲を配信していました。当初は自分で作った曲を配信していたものの、2018年頃からはAI音楽会社のCEOおよび音楽プロモーターに協力を仰いでAI生成楽曲を入手し、合計で数十万曲ものAI生成楽曲を配信したとされています。
そしてスミス被告は数千ものボットアカウントを運用し、自身が配信した曲を合計で数十億回も再生させました。プラットフォームの不正検知システムを回避するため、スミス被告はボットを仮想プライベートネットワーク(VPN)経由でプラットフォームにアクセスさせていたとのこと。ボットアカウントの作成には偽のメールアカウントや不正に入手したデビッドカードなどが用いられ、一度に最大1万ものボットアカウントを運用することもあったそうです。
アメリカ司法省は、2023年4月にYouTube Musicのファミリープランを通じて楽曲が再生された回数は、国際的シンガーソングライターであるテイラー・スウィフトの全曲が合計930万回だったのに対し、スミス被告が配信した曲は合計8900万回に至ったと説明しています。
一連の不正行為により、スミス被告はストリーミングサービスから合計800万ドル(約12億6500万円)以上のロイヤリティを受け取りました。一般にストリーミングサービスの収益分配システムでは、全体の資金プールに入っている金額から再生回数に応じてミュージシャンに分配されます。つまり、スミス被告のように不正にロイヤリティを稼いでいる人物がいた場合、その分だけ真面目に活動しているミュージシャンの取り分が減ってしまうというわけです。
スミス被告は2024年に逮捕・起訴され、2026年3月には電信詐欺共謀罪で有罪を認めました。スミス被告の弁護士は個々のアーティストに対する被害は取るに足らないものであり、誰も本当の意味では被害を受けていないと主張して、拘禁刑を下さないように裁判官へ求めていました。一方で検察側は、スミス被告が勤勉で低賃金なことが多いアーティストに損害を与えたと主張し、「寛大な判決はストリーミング詐欺が意味のある罰につながらないという、間違ったメッセージを送ることになるでしょう」と反論していました。
そして10月6日、ニューヨーク南部地区連邦検事のジェイミー・マクドナルド氏は、スミス被告に18カ月の拘禁刑および2年間の保護観察処分、そして800万ドル超の没収金の支払いが命じられたと発表しました。
マクドナルド氏は、「マイケル・スミス被告はAIを悪用して詐欺行為を行いました。スミス被告は音楽ストリーミングプラットフォームへ消費者の代わりに自動ボットを、創造性の代わりに偽の楽曲を大量に送り込むことで、本物のアーティストとそのファンから数百万ドル(数億円)ものロイヤリティをだまし取ったのです。私たちはあらゆる市場の健全性を確保し、AIを詐欺に利用する者から国民を守ることに尽力します」とコメントしています。
全米レコード協会はスミス被告への判決について声明を出し、「ストリーミング詐欺はクリエイターに損害を与え、ファンを欺く行為です。裁判所がこの有害な行為の重大性と、真のアーティスト・シンガーソングライター・レーベルパートナーの懐から不正に得られた利益を認識してくれたことに感謝します」と述べました。
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