バランスのいい食事は子どもの健康のために重要ですが、好き嫌いが多い子どもに野菜を食べさせるのは困難な場合があります。新たな研究では、妊娠中の母親が野菜を食べていた場合、生まれてきた子どもは野菜を嫌いになりにくい可能性があると判明しました。
Developmental Psychobiology | Developmental Biology Journal | Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/dev.70165
Young children have long-lasting memories of vegetable smells experienced in the womb | Aston University
https://www.aston.ac.uk/latest-news/young-children-have-long-lasting-memories-vegetable-smells-experienced-womb
Scientists Found a Remarkable Way to Help Kids Like Vegetables : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-found-a-remarkable-way-to-help-kids-like-vegetables
イギリスのダラム大学とアストン大学の研究者らが率いるチームは、妊娠中の母親が摂取した食品が子どもの好みに影響を与えるのかどうかを調べる実験を行いました。実験には34人の健康な胎児と妊娠中の母親が参加し、母親は妊娠32週目と36週目にニンジンまたはケールの粉末入りのカプセルを摂取しました。
ニンジンが選ばれたのは野菜の中でも糖度が高く甘い味がするためで、ケールは逆に苦味が強い野菜として知られています。妊娠28週目を過ぎると、胎児は自らを包む羊水に含まれる味や匂いを感知できるほどに発達するそうで、羊水を通じて母親が摂取したものの味を感知していると考えられています。
研究チームは32週目と36週目のカプセル摂取後に、胎児の表情を超音波スキャンで観察しました。そして母親は36週目から妊娠までの間、割り当てられたカプセルを摂取し続けました。なお、妊娠中の超音波スキャンにより、胎児は母親が摂取したカプセルの種類に応じて笑顔や泣き顔を浮かべることがわかっています。
胎児が母親が食べたものの味に反応して笑ったり泣いたりしていることが判明 – GIGAZINE
今回研究チームは、出生から3年が経過した被験者の子ども12人を対象に、ニンジンまたはケールの粉末をつけた湿らせた綿棒を用意し、子どもの鼻の下に当てて匂いを嗅がせる実験を行いました。この時の子どもの表情をビデオで撮影し、出生前および出生から数週間後に観察された表情と比較したとのこと。
実験の結果、妊娠中に母親がニンジン粉末入りのカプセルを摂取していた3歳児は、ニンジンの匂いに対する否定的な表情を示す可能性が低いことがわかりました。同様に、妊娠中の母親がケール粉末入りのカプセルを摂取していた3歳児は、ケールの匂いに対する否定的な反応が少なかったとのことです。
以下の写真は、妊娠中の母親がニンジン粉末入りのカプセルを摂取していた3歳児がニンジンの匂いを嗅いだ時(左)と、ケールの匂いを嗅いだ時(右)の表情を並べたもの。明らかにケールよりもニンジンに好意的な表情を浮かべているのがわかります。
今回の研究には被験者が非常に少ない点や、対象集団が1つに限られている点、出生してから3歳になるまでに食べるものを制御しなかった点など、いくつかの限界があります。それでも今回の結果は、子どもの食の好みを形成する要因について、さらなる研究に値するものといえます。
論文の筆頭著者で、ダラム大学の心理学者であるナディア・ライスランド氏は、「長期的に見ると子どもたちは胎児期に触れた野菜をより好む傾向があることがわかっています。このことから、妊娠後期に特定の味に触れることで子どもの味覚や嗅覚の記憶が長期にわたって残り、出生後何年も経った時点での食の好みを形作る可能性があると推測できます」と述べました。
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