記事作成時点では世界中で10億人以上が肥満だといわれており、肥満は2型糖尿病や心血管疾患、がんといった病気のリスクを高めます。近年は肥満の治療にオゼンピック(セマグルチド)などの減量薬が用いられるようになっていますが、これらの減量薬には副作用があり、途中で服用を中止してしまう患者も少なくありません。新たな研究では、たとえ減量薬の服用を中止したとしても、減量した体重の一部は1年以上経過しても維持されるとの結果が示されました。
オゼンピックやウゴービといった減量薬は、脳に満腹感をもたらして食欲を抑えるグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)というホルモンの働きを模倣します。これによって満腹感や満足感が普段より早く得られたり、食欲が抑えられたりすることで、強い意思がなくてもダイエットできるという仕組みです。
これらのGLP-1受容体作動薬は高い効果を発揮し、臨床試験では元体重から15~20%の減量効果が期待できると示されています。しかし、これらの減量薬には吐き気や腹痛といった胃腸問題やその他の副作用があるほか、価格や処方上の問題もあることから、患者の約半数は1年以内に、4分の3は2年以内に服用を中止してしまうとのこと。
イギリスのケンブリッジ大学臨床医学部の学生であるブラジャン・ブディニ氏は、「オゼンピックやウゴービといった薬は私たちの食欲にブレーキをかけるように作用し、より早く満腹感を感じさせることで食事の量を減らし、結果として体重が減ります。服用を中止すると、いわばブレーキから足を離すことになり、急速な体重増加につながる可能性があります」と述べています。
そこでブディニ氏らの研究チームは、オゼンピックのような減量薬の服用を中止した後、体重がどのように変化するのかを調べるため、合計で48件の関連研究を調査しました。ほとんどの研究は服用中止から数週間しか患者を追跡していなかったため、研究チームは服用中止後の患者を最大52週間追跡した6件のランダム化比較試験を選択し、これらのデータを用いて服用中止後の体重変化をモデル化しました。なお、絞り込まれた6件の研究に含まれていた患者は、合計3200人以上に達していたとのこと。
作成されたモデルでは、患者が減量薬の服用を中止した直後は急速に体重が増加するものの、徐々にリバウンドの速度は鈍化することが推定されました。服用中止から52週間後には減量分の60%がリバウンドしていましたが、60週目には体重増加が横ばいになり始め、減量分の75%を回復したあたりで停滞すると予測されています。
以下のグラフは、縦軸が「減量薬によって減少した体重の何%が戻ったか」を示し、横軸が「減量薬の服用中止から何週間が経過したか」を示しています。色の付いた線がモデルの作成に用いられたランダム化比較試験のデータで、黒色の線が作成したモデルが示す体重変化の軌跡です。服用中止の直後はほぼ直線的に体重が増加していたものの、次第に増加のスピードが緩み、1年が経過した頃には増加速度が停滞し始めていることがわかります。

研究チームは減量薬の服用中止後から1年が経過しても元の体重に戻らない理由について、これらの薬は食事の量を減らしたり、栄養バランスの取れた食事を選んだりするなど、より健康的な食習慣を身につけるのに役立っている可能性があると指摘。これらの習慣が減量薬の服用中止後も継続した結果、いくらかリバウンドしたとしても、元の体重までには戻らないというわけです。また、減量薬がホルモンレベルを変化させ、脳の食欲制御メカニズムをリセットするなど、長期的な影響を与えている可能性もあります。
論文の共著者であり、ケンブリッジ大学臨床医学部の学生であるスティーブン・ルオ氏は、「減量薬の服用を中止する際、医師と患者は体重が元に戻る可能性があることを認識し、そのリスクを軽減する方法を検討するべきです。薬だけに頼るのではなく、食習慣や運動の改善についてのアドバイスを受けることが重要です。これにより、薬の服用を中止した後もいい習慣を維持しやすくなります」と述べました。
なお、オゼンピックのような減量薬については「減量した体重の40~60%は筋肉である」とする研究結果も報告されるなど、体組成に悪影響をもたらす可能性も懸念されています。今回の研究では、リバウンドした体重分のうちどの程度が脂肪で、どの程度が筋肉なのかは確認されていません。
ブディニ氏は、「私たちの予測によれば、減量した体重の大部分は元に戻るものの、一部の減量分は維持されることが示されています。しかし、現時点では除脂肪体重が同じ割合で回復するかどうかはわかっていません。もし、戻った体重のうち脂肪の割合が不釣り合いに高ければ、個人の脂肪と除脂肪体重の比率は以前よりも悪化し、健康に悪影響を及ぼす可能性があります」と述べました。
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