運動はさまざまな健康問題の改善につながることが知られており、過去の研究では「階段を上る」「バスの停留所まで歩く」といった日常的な活動でがんリスクが軽減されることもわかっています。新たな研究では、たった10分間の激しい運動で「がんの増殖を防ぐ生物学的変化」が生じることが示されました。
Exercise serum promotes DNA damage repair and remodels gene expression in colon cancer cells – Orange – International Journal of Cancer – Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.70271
Exercise helps fight bowel cancer – Press Office – Newcastle University
https://www.ncl.ac.uk/press/articles/latest/2025/12/exercisehelpsfightbowelcancer/
10-Minute Bursts of Exercise Can Trigger Anti-Cancer Signals in The Body : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/10-minute-bursts-of-exercise-can-trigger-anti-cancer-signals-in-the-body
運動は大腸がんなどの進行を遅らせることが知られていますが、その生物学的メカニズムについてはよくわかっていません。提唱されているメカニズムのひとつは、「運動によって血液中へ生理活性分子が放出され、これが腫瘍細胞に作用してDNAの損傷を抑制し、がん細胞の増殖を阻害する」というものです。
イギリスのニューカッスル大学などの研究チームは、運動中に起こる生理学的変化とがんへの作用について調べるため、50~78歳の男女30人の被験者を対象に実験を行いました。被験者はいずれもがんの危険因子である過体重または肥満でしたが、それ以外は健康だったとのこと。
被験者らは簡単なウォームアップの後、約10分間にわたって激しくエアロバイクをこぎました。研究チームは運動前後の被験者から血液を採取し、分子組成がどのように変化したのかを調べるとともに、血清サンプルを実験室で培養してから大腸がん細胞に投与しました。
研究チームが血中に含まれる249種類のタンパク質について分析した結果、運動によって13種類のタンパク質が増加していることが確認されました。増加したタンパク質の多くは炎症の軽減や血管機能の改善、代謝の改善などに関連しており、その中には損傷した細胞のDNA修復を助けるインターロイキン-6も含まれていました。
また、研究チームが培養した血清サンプルを大腸がん細胞に適用したところ、DNA修復やエネルギー産生、細胞増殖などに関わる1300以上の遺伝子の活動が変化することが判明しました。
論文の筆頭著者であり、ニューカッスル大学の臨床運動生理学者であるサミュエル・オレンジ氏は、「注目すべきは、運動が健康な組織にいい影響を与えるだけでなく、血流を通じて強力な信号を送り、がん細胞の1000以上もの遺伝子に直接影響を与えられるという点です」「たった1回の運動でも効果はあります。たった10分間の運動でも体に強力な信号を送るのです」とコメントしました。
なお、今回の実験は培養されたがん細胞を対象にしたものであり、運動後の血清の効果を人間で確かめたわけではありません。また、1回の運動の前後のみを調査しており、継続的な運動がもたらす効果については調べていないといった限界もあります。
それでも今回の研究結果は、短時間の激しい運動あるいは何らかの形で同様の効果を発揮する薬剤が、大腸がんの進行を遅らせる有望な方法になる可能性を示唆するものです。オレンジ氏は、「これは刺激的な発見です。運動の生物学的効果を模倣、あるいは増強する方法を見つける道が開かれ、がん治療や患者の転帰を改善する可能性があるからです」と述べました。
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