サブスクリプションサービスの中には、契約は1クリックですぐできてしまうのに、解約する手続きは何度も確認が必要だったり中にはチャットや電話を要するものがあったりと、解約を難しくしてユーザーを維持し続けようとするものがあります。アメリカの連邦取引委員会(FTC)はサブスクリプションサービスの解約は申込みと同じくらい簡単であるべきだとして、クリック一発でサービス解約を可能にする「Click to Cancel」を義務化するために働きかけています。FTCのClick to Cancel規則条項は2025年7月に連邦控訴裁判所によって無効と判断されていますが、民主党議員らが2025年7月末にClick to Cancelルールを復活させるための法案を提出しました。
(PDFファイル)To codify the rule issued by the Federal Trade Commission relating to click-to-cancel, and for other purposes
https://sherman.house.gov/sites/evo-subsites/sherman.house.gov/files/evo-media-document/sherma_059_xml.pdf
US moves to ban shady subscription auto-renewals after FTC court loss – Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2025/07/click-to-cancel-rule-cable-companies-fought-to-nullify-could-be-revived/
有料のサブスクリプションは、契約は簡単にできる一方で解約手続きが非常に複雑で、簡単に解約できないという苦情の声が消費者側から上がっています。そこでFTCは、「大企業の利益のために、アメリカ人の時間やお金が犠牲になっている」として、2024年8月頃から当時のジョー・バイデン政権主導でサブスクリプションの解約を簡単にできるようにするための提案を進めていくと発表しました。
サブスクの解約をもっと簡単にすることを義務づける規則を連邦取引委員会が提示 – GIGAZINE
FTCが定めた、有料サブスクリプションプランや有料メンバーシッププランの簡単な解約方法の実装を義務付ける規則「Negative Option Rule(通称:Click-to-Cancel)」は、一部の条項が2025年5月14日に施行される予定でしたが、多くの業界団体から猛反発を受け、2カ月延期されました。結果として、延期後の施行予定日の約1週間前に、「FTCが規則を制定する過程で法律が定める重要な手続きを怠った」として連邦控訴裁判所はFTCの規則を無効とする判断を下しました。
有料サブスクを簡単に解約可能にする「クリックで解約」の義務化は「無効」と連邦控訴裁判所が判断 – GIGAZINE
FTCのClick-to-Cancel規則で最も問題視された点として、FTCが「予備的規制分析」と呼ばれる詳細なコストと便益に関する分析を実施しなかったことが挙げられます。FTCは当初、規則を改正する影響は分析と提案が義務付けられる1億ドル(約145億円)に満たないと判断し、分析は不要だと考えていましたが、その後の行政法判事による審理で「実際には経済的影響が1億ドルを超える」との結論が出されました。そのため、裁判所は「単なる形式的なミスではなく、関係者が実質的な不利益を被った」と認定し、Click-to-Cancel規則の無効を判じています。
また、Click-to-Cancel規則の無効には、政権の交代が関係している可能性が考えられていました。規則を定めた時のFTCはバイデン政権下で、賛成票を投じた3名は民主党員、反対票を投じた2名は共和党員でした。しかし、ドナルド・トランプ大統領は就任後に民主党員2人をFTCから解任しており、これによりFTCのメンバーは2025年7月時点で共和党員のみとなっています。
そこで民主党議員らは2025年7月30日に、Click-to-Cancel規則を復活させる法案を提出しました。この法律はFTCの主張を引き継いだ形となり、企業に対し「サブスクリプションをキャンセルし、課金を即時停止するためのシンプルで直接的な仕組みを提供する」という内容のほか、自動更新の登録前に明確かつ直接的な同意を得ることも義務付けています。
民主党下院議員のクリス・デルジオ氏は「サブスクリプションは、アメリカ企業が人々を騙し取ろうとする新たな手段であり、簡単に解約できないことで人々は困惑しています。サブスクリプションの解約は、苦労して稼いだ時間とお金を無駄にするような、策略やワナであってはなりません。解約は登録と同じくらい簡単にできるべきです」と語っています。また、上院で関連法案を提出した民主党のルーベン・ガジェゴ上院議員は「あまりにも多くの企業が、曖昧な細則や分かりにくい解約手続きによって、同意していない料金で顧客を縛り付けています。顧客が忘れたり、諦めたりすることを期待して、毎月カードに請求し続けようとしているのです」とClick-to-Cancel規則の必要性を主張しました。
記事作成時点では、Click-to-Cancel法案に賛成しているのは民主党議員のみであるため、この法案が支持を得られるかどうかは不透明です。ただし、専門家によるとこの規則は今年議会で実施される可能性のある中で「最も支持される」ものになる可能性があり、民主党は共和党の支持を得るためにClick-to-Cancelに対する国民の支持を訴える可能性が高いと考えられます。
Click-to-Cancel法案が可決された場合、FTC規則に基づいて違反行為は「不公正または詐欺的な行為または慣行」と見なされます。サブスクリプションの解約手続きを妨害していることが判明した場合、企業は違反1件あたり5万ドル(約740万円)を超える多額の罰金を科される可能性があります。
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