AmazonのスマートスピーカーであるEchoには、いずれのモデルでもマイクをオン/オフするための物理ボタンがついています。Echoは声によって操作したり、スマートフォンと連携してアプリから設定を変更したりできますが、なぜマイクの切り替えは物理ボタンになっているのかについて、Amazonの主任エンジニアが述べています。
Contrast this to Amazon: during design of the original Echo at Lab126, an engine… | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=19208670
以下は、左がEcho第3世代(2019)、右がEcho第2世代(2017)を上から映した様子。Echo第3世代の左側にあるボタン、Echo第2世代の下側にあるマイクのボタンが、マイクの入力をオン/オフするための物理ボタンです。
また、以下は手のひらサイズのEcho Dot(2017)です。Echo Dotにも、上部にマイクのボタンがついていることがわかります。
モニター付きのEcho Showでは、ボタンの代わりにスライダーでマイクのオン/オフを切り替えられるようになっています。以下は、2023年発売のEcho Show 5(第3世代)の商品画像。
Echoシリーズのマイクボタンについて、ソーシャルサイトのHacker NewsでAmazonの主任エンジニアを名乗るillumin8氏が2019年に解説しています。illumin8氏によると、マイクをミュートする機能は、ソフトウェアで実装する方がマイク回路を物理的に切断するよりもコンポーネント要件の面でコストが低くなるそうです。
しかし、Amazonのエンジニアリングチームは、より安価なソフトウェア制御ではなく、物理ボタンによって物理的にマイクの回路が切断される設計を推し進めました。この設計は、Amazonのプライバシーに対する取り組みであるとillumin8氏は述べています。Echoに搭載されているAIアシスタントのAlexaは、データトレーニングのために話しかけた音声を常に保存しており、Alexaが聞き取った音声データはAmazonの従業員によって解析されていることがわかっています。過去には、Alexaと話したわけではない男女の会話が、勝手に録音されて全く関係ない第三者に送信されたという事件も発生しました。
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普段の会話などがEchoに録音されている可能性を気にする人は、Echoをミュートにしておく必要があります。そのためのミュート機能はコストの安いソフトウェア部分で実装しても使用することは可能です。しかし、illumin8氏によると、Amazonのエンジニアリングチームは「将来のエンジニアリングチームが、ソフトウェアのアップデートによって、ミュート機能を削除する」と予想したため、物理的回路でマイクをオン/オフする仕組みにしたそうです。illumin8氏は2019年のコメントで「私は、Amazonがプライバシーに対して取っているアプローチを誇りに思っています。顧客データのプライバシーはAmazonにとって最も重要なことだと考えられており、この顧客重視の姿勢(リーダーシップの第一原則)は組織全体に浸透しています」と語りました。
一方で、Amazonは2025年2月に生成AIを搭載した「Alexa+」を発表したことをきっかけに、スマートスピーカー「Echo」を所有する一部のユーザーに対し「Alexaに話しかけた内容をローカルに保存して処理するオプションが2025年3月28日で終了する」と伝えています。これは、従来は「Alexaとの会話をトレーニング用に使用する」ということを許可するかどうか選べたものを、2025年3月29日以降は「音声録音の利用をオフにする」ことができず、Alexaに話しかけられたすべての音声録音が自動的にAmazonに送信されてクラウドで処理されるようになるというもの。
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ただし、Amazonは「Alexaへの音声リクエストは、Amazonの安全なクラウドに転送される際に常に暗号化され、顧客情報を安全に保つためのセキュリティ保護のレイヤーで設計されています」と説明しており、プライバシーを重要視する意図を示しています。
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