中国に拠点を置く「ZRON」と呼ばれるサイバーセキュリティ企業が、外国政府から盗み出した機密データを中国の治安機関に提供していることが内部資料から明らかになりました。さらに、ZRONはAIなどの技術を駆使することで、データの統合・分類・分析をして理解しやすくするダッシュボードも開発しています。
How a Chinese Hacking Firm Tapped AI to Supercharge Cyber-Spying – WSJ
https://www.wsj.com/tech/how-a-chinese-hacking-firm-tapped-ai-to-supercharge-cyber-spying-b577c846
ウォール・ストリート・ジャーナルが入手した資料には、盗まれたデータに基づいていると思われる秘密情報報告書、社内チャットのログ、そして見込み客向けと思われる会社のプレゼンテーション資料なども含まれていました。流出した文書の中には、ロシアの外交文書、外国首脳のフィリピン訪問準備、パキスタン首相官邸での会議の機密議事録などが含まれています。これらの文書の信頼性は明確ではありませんが、多くが公の出来事と密接に関連しているとウォール・ストリート・ジャーナルは指摘しています。
チャットログに基づくと、ZRONの営業担当者は中国の東北部・東部・南部の顧客とやり取りしているそうです。チャットでは顧客はコードネームで呼ばれていますが、特定の警察組織の名前が明かされることもあるとのこと。
またスライド資料によると、ZRONはソーシャルメディアや従来型メディアから収集した膨大な公開情報データベースに加え、アジアを拠点とする通信事業者から取得したプライベートデータへのアクセスもアピールしています。さらに、単に生の情報を渡すのではなく、データを統合・分類・分析して理解しやすくするダッシュボードシステムを開発したと、スライド資料やZRONが登録したソフトウェアの著作権情報に記されていることも判明しています。
西側情報機関の関係者によると、ZRONは機密情報を盗み出して分析し、中国当局に売却するという相互に連携した中国のハッキング請負企業のネットワークに属しているそうです。ZRONはデータを提供するだけではなく、データを整理・分析するためのAI駆動型システムも提供することで、膨大なデータから世界中で何が起こっているのかを理解しようとする政府にとって利用しやすくなるよう取り組んでいます。
具体的には、Windowsを搭載したコンピューター上で、画面の監視・キー入力の記録・コマンドの実行を可能にするツールや、AppleのiOS上でシステム情報・連絡先・位置情報へアクセスするツールを、ZRONのプレゼンテーション資料は約束しています。また、主要なウェブメールサーバーや社内メールシステムからデータを収集するシステムおよびメール通信ネットワークを視覚化するデータ可視化ツールもプレゼンテーション資料で紹介されています。これら全てをまとめて、スライド資料では「AlibabaやDeepSeekといったAIモデルを実行できるインテリジェントシステム」が概説されているとウォール・ストリート・ジャーナルは指摘しました。
ZRONのデータの一部を閲覧したサイバーセキュリティ企業・SentinelOneの中国アナリストであるダコタ・キャリー氏は「大量のデータにアクセスできるのであれば、独自にデータを取り込んで分析し、それを製品として多くの顧客に販売するのは非常に理にかなっています。企業がこの分野で事業を展開しようとしているのは驚くべきことではありません」と語りました。
ウォール・ストリート・ジャーナルはZRONの従業員に関連付けられた電話番号に複数回電話やテキストメッセージを送りましたが応答はなく、登録されているメールアドレスに送ったコメント依頼もエラーで返送されてきたとのこと。また中国外務省は、ファックスによるコメント要請に回答しませんでした。
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