世界最強の経済大国アメリカで国民の幸福度が記録的に低下中、その原因とは? – GIGAZINE


メモ


シカゴ大学の経済学者であるサム・ペルツマン氏が「2020年以降、アメリカ国民の幸福度が急激に低下している」という内容の論文を発表しました。論文を受けて、雑誌「アトランティック」のライターであるデレク・トンプソン氏が原因を分析しています。

The Happiness Crash of 2020 by Sam Peltzman :: SSRN
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=6465460

If America’s So Rich, How’d It Get So Sad?
https://www.derekthompson.org/p/if-americas-so-rich-howd-it-get-so

ペルツマン氏は一般社会調査のデータを分析し、アメリカ国民の自己申告における幸福度が2020年に突如として急激に低下し、2024年まで回復していないことを明らかにしました。以下は調査で「幸せ」と答えた人と「あまり幸せではない」と答えた人の差で、2018年までは「幸せ」と回答した人が20%程度高かったのに対し、2020年は「あまり幸せではない」が「幸せ」を上回り、それ以降も差が5%台にとどまっています。


ペルツマン氏の調査以外にも、2026年に連邦準備制度理事会(FRB)が発表した労働者満足度指数は2014年の調査開始以来最低水準を記録していたり、ミシガン大学経済調査の消費者信頼感指数が最低記録を更新したりするなど、さまざまな調査がアメリカ国民の幸福度が低下していることを示しています。

ペルツマン氏は論文で、国民をさまざまな属性で分けた時の幸福度の違いを調べています。下図は年齢と性別で分けた場合の違いを示していますが、どの区分でも2020年以降15ポイント程度幸福度が低下していることが分かります。


また、結婚状態によらず幸福度は同様の低下を示しており、人種では白人が特に低下幅が大きいものの、黒人やその他の人々も10ポイント以上の低下を示しています。


多少の違いはあれど、学歴も関係ありません。


収入が高いほど幸福度の低下が大きいものの、収入が最も低いグループでも幸福度は約10ポイント低下しています。


思想や政治的立場で分類してみても、いずれのグループも同様の幸福度の低下を示しました。


トンプソン氏は失業率が低く、賃金が上昇しているなど経済状況が好調なのにも関わらずこうした「全世帯で均一な幸福度低下」が発生した理由について、3つの要因を挙げています。

◆1:持続的なインフレ
2007年から2020年にかけて、消費者物価指数は13年で25%上昇しましたが、2020年から2025年までの5年間で消費者物価指数は同じく25%も上昇しました。これまで低いインフレ率を経験していたのに、急に普段の3倍ものインフレを経験し始めた場合、人々は購入しようとするものが全て常に手の届く範囲から外れていくように感じられます。

さらに、経済状況が好調で雇用が豊富なことで従来低賃金だった職の給料が上昇しており、従来低賃金労働者に頼って価格を維持してきた育児や介護などサービス業の物価が急速に上昇したことで中高所得世帯は特に不満が高まったとのこと。

◆2:他人への不信と孤独の加速
1970年代から1980年代の調査では、「多くの人はチャンスがあればあなたを利用しようとすると思いますか?もしくは公平に対応してくれると思いますか?」という他人への信頼度をはかる質問に大多数の人が「他人は信頼できる」と回答しました。他人への信頼度はそれ以降の調査でも比較的高い水準を維持してきましたが、2020年以降は急落しているとのこと。また、他人への信頼だけでなく、政府や企業などの組織に対する信頼も急速に低下しています。

コロナのパンデミックが発生して以降、多くの人がこれまでよりも長い時間を1人で過ごしており、他人との交流は画面上のアルゴリズムに媒介されています。ニューヨーク大学の心理学者ジェイ・ヴァン・バベルは「オンラインでの会話は否定的な意見や集団外への敵意を高く評価するため、人々を敵対者に変えてしまう」と指摘しました。


◆3:危機の連続
100年に一度のパンデミックにつづき、激しいインフレが継続しているだけでなく、ウクライナを始めガザ・レバノン・イラン・ペルシャ湾と戦争が次々と発生しました。また、アメリカ国内でもドナルド・トランプが「ファシズムの到来の象徴」なのか、「左翼の悪魔的な災厄から伝統的な価値観を救うために現れた救世主」なのかなど政治的立場の対立が深まっています。

ニュースは極めて深刻となっており、ブルッキングス研究所が2024年に実施したニュース感情分析によると2018年から2020年までのニュースは実際の各種指標が示している値よりもネガティブな調子で報じられており、2021年以降はさらに指標比でネガティブな調子で報じられていることが分かっています。

ニュース報道における悲観主義はさまざまな危機が連続している時代を反映すると同時に、人々に対し「常に危機の瀬戸際にいる」という印象を与えています。「コロナによるパンデミックがおさまった後も、世界が緊急事態の渦中にあるという感覚が人々に依然として残っているのだ」とトンプソン氏は分析しました。

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