
物事が起こる確からしさを数学的に記述し議論するのが確率論です。YouTubeチャンネルのChalk Talkが、ギャンブルの公平性についての議論から確率論が生まれた経緯について解説しています。
The fairness puzzle that sparked probability – YouTube

動画は「勝者が決まる前にゲームが中断されたら、賞金100ドルをどう分けるのが公平か」という問いから始まります。つまり、「何が公平か」という問いが先にあり、確率はその答えを出すために必要になってくる、というわけです。
ランダムさそのものは古くから賭博や占い、争いの裁定、政治的判断、未来予測などで使われてきました。ただ、それを数学として本格的に整理した確率論は比較的新しく、議論が始まったのは16世紀から17世紀にかけてです。
たとえば、コイン投げで先に3点取った方が勝ち、勝者が100ドルを得るゲームを考えます。この時、相手が2点、自分が1点のところで中断されたら、100ドルをどう分けるべきかが問題となります。
まず思いつきやすいのは、「いま点数で勝っている人に全額を渡す」という案です。しかしながら、1000点先取のゲームで最初の1点だけ取った人が全額を受け取る場面を考えると、まだ勝負がほとんど決まっていないのに配分だけが極端になり、不公平だとわかります。
次に、「現在までに取った点数の比で分ける」というアイデアも提案されました。2対1なら、67ドルと33ドルほどに分けるというやり方で、全額総取りよりはもっともらしく見えます。
しかし、たとえば1000点先取で999対900なら、点数比ではほぼ半々の配分になりますが、実際には999点の側はあと1点で勝ち、900点の側は100点連続で取らなければならず、実際の勝ちやすさとはまったく釣り合いません。
そこで、議論は「すでに何点取ったかではなく、これから先に誰が勝つ可能性が高いかを見るべきだ」という方向に進みます。この議論を進めたのが、17世紀の数学者であるパスカルとフェルマーです。2人は手紙をやりとりしながら、「これから起こり得る展開を平均して考える」というアイデアに到達します。
フェルマーのやり方は、未来の展開を全部並べる方法です。2対1から3点先取なら、残りは最大2回のコイントスで決着するため、あり得る未来は4通りあります。そのうち3通りで2点の側が勝ち、1通りで1点の側が勝つので、配分は75ドル対25ドルが公平だという結論になります。
一方、パスカルは同じ結論を、もっと直感的なやり方で出します。次の1回で勝てば100ドル全部が相手のものになり、次を落として同点になればその時点では50ドルずつになります。そうすると、少なくとも50ドルは相手の取り分として確実で、残りの50ドルはどちらが取るか半々なので25ドルずつに分け、結局75ドル対25ドルになります。
ここで印象的なのは、抽象的な公式ではなく、「この50ドルは確実にあなたのもの」「残りの50ドルは半々」という具合に、実際の札束をどう分けるかの感覚で話が進むことです。最後まで軸にあるのは公平さであり、確率はその公平さを数として表すための道具になっています。
こうして、パスカルとフェルマーは別々の発想から同じ地点にたどり着きます。その地点が「期待値」です。のちには、日常のさまざまな判断にまで広がる基本概念になっていきます。
期待値は、各結果について「その結果が起こる確率×その結果の価値」を計算し、それを全部足し合わせたものです。たとえば、賞金が当たるルーレットを回す場合、期待値は「平均すると何ドル勝つことになるか」を表します。
期待値は単なる平均ではなく「重み付き平均」だと整理されます。試験の平均点で、全部同じ比重なら普通の平均になり、重要な試験ほど重みが大きいなら加重平均になるのと同じで、期待値ではその重みが「確率」になっています。
そして、たとえばルーレット1回の期待値が2ドルなら、参加費2ドルは公平な価格といえます。同じように、中断されたゲームでも、各自が将来平均してどれだけ受け取るはずかに応じて分けるのが公平だと考えられます。
ただし、考え方がわかっても計算は簡単ではありません。期待値を求めるにはまず勝率を出さなければならず、そのためには組み合わせ論が必要になります。
たとえば、相手が5点、自分が2点で、10点先取のゲームが出てきます。この場合、相手はあと5点、自分はあと8点必要です。最大12回のコイントスまで考えれば必ずどちらかが勝つので、その12回分の未来を数え上げれば勝率が求められる、という整理になります。
12回のコイントスには2の12乗、つまり4096通りの可能性があります。これを全部書き出すのは大変なので、「12回のうち何回勝つか」というまとまりで数える方法に進みます。
「12回のうちちょうど5回勝つ並び方は何通りか」「6回勝つ並び方は何通りか」を数えるために、「12C5」「12C6」などの二項係数が出てきます。こうした数を並べたものがパスカルの三角形で、各行がコイントス結果の分布を表せるようになります。
12回のうち少なくとも5回勝てば必要点数に届くので、5回勝つ場合から12回勝つ場合までの通り数を全部足します。その結果、勝ち筋は3302通りとなり、全4096通りのうち約80%を占めるため、期待される取り分も約80ドルになります。
なお、期待値の計算についての議論から数年後、パスカルとフェルマーは「gambler’s ruin(ギャンブラーの破滅)」というテーマで再度議論を行います。これは各ラウンドの勝率が「勝つ確率が14分の5、負ける確率が14分の9」のように50対50ではないというのが特徴。この時、フェルマーはプレイヤーの最終的な勝率について正答を導き出していたものの、別の問題の時と同様に、その導出に至る説明を手紙には書かなかったそうです。
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