AWSが新しい海底ケーブルシステム「Fastnet」を開発中であると発表、2028年に運用開始予定 – GIGAZINE


Amazon Web Services(AWS)は2025年11月4日に、アメリカとアイルランドを結ぶ大西洋横断海底光ファイバーケーブルシステム「Fastnet」を発表しました。Fastnetは耐障害性を持つ独自の設計によりグローバルな接続性向上や高まるAI需要に対応することを目的としており、2028年に運用が開始される予定です。

AWS rolls out Fastnet subsea cable connecting U.S. and Ireland
https://www.aboutamazon.com/news/aws/transatlantic-subsea-cable-us-ireland-fastnet-aws


アメリカのメリーランド州とアイルランドのコーク州を結ぶ大西洋横断海底ケーブルのイメージは以下のような感じ。


Fastnetの設計としてAmazonが公開した図が以下。Fastnetは丈夫なケーブル外装と、沿岸部における追加の保護鋼線層を組み合わせることで、自然現象や人為的活動からケーブルを保護します。


また、Fastnetは従来のケーブル経路から離れた戦略的なルート配置をしており、これにより他のケーブルに問題が発生した場合にバックアップルートが提供されます。さらに、Fastnetは高度な光スイッチング分岐ユニット技術を採用しており、増大するAIトラフィック負荷に対応する特別な設計で拡張性の高さを備えているとのこと。

Fastnetの設計容量は320テラビット毎秒(Tbps)以上で、この容量は「デジタル化されたアメリカ議会図書館の資料全体を毎秒3回転送」、あるいは「1250万本の高解像度(HD)映画を同時にストリーミング配信」が可能な規模に相当するそうです。FastnetはAWSの包括的なグローバルネットワークに直接統合されることで、迅速なデータ再ルーティングと多層の冗長設計(一部に障害が起きても自動で切り替わる安全設計)を実現し、顧客の業務中断を防ぐことが可能になっています。

そのほか、Fastnetの事故による損傷や悪意のある切断を防ぐため、海底ケーブルの埋没作業に「多額の投資」をしていると、AWSのグローバルネットワークインフラ開発担当ディレクターのデイビッド・セルビー氏は明かしています。海底地形によって深さは多少異なりますが、設置業者は海岸から海岸まで水平に約1.5メートルの深さの穴を掘り、ケーブルを敷設します。


Amazonは「AWSは2006年以来、世界で最も安全で信頼性が高く、かつ拡張性の高いクラウドインフラストラクチャの構築と運用に多大な投資を行ってきました。Fastnetは、この継続的な取り組みにおける重要なマイルストーンであり、単なるケーブルシステムではありません。世界中のインターネットが通信するためのインフラストラクチャを提供することで、人々が日常生活に溶け込む最新テクノロジーを活用できるようにしていきます」と語りました。

また、Fastnetの敷設作業などは、多くの雇用産出や産業の活性化も期待されています。アイルランドのミホル・マーティン首相は、「Amazonの新しい大西洋横断海底ケーブル『Fastnet』は、アイルランドのデジタル戦略の未来への信頼の証であり、クラウドコンピューティングとAIにおける次世代のイノベーションの波を加速させるものです。コーク州とメリーランド州を結ぶことで、アイルランドは海底通信ケーブルにとってヨーロッパへの真のゲートウェイとなります。アイルランドのグローバルな接続性を向上させ、経済競争力を強化するでしょう」と述べました。また、メリーランド州知事のウェス・ムーア氏は「メリーランド州初の海底光ファイバーケーブルの建設は、メリーランド州がイノベーション、雇用創出、そしてハイテク投資における世界的なハブとしての地位を確立することを意味します」と語っています。

セルビー氏は「こうしたプロジェクトにはとてつもなく長い時間がかかります。ケーブル自体の製造という単純な作業から、船舶の配置、ケーブル作業のスケジュール調整、そして陸揚げ作業まで、すべてにおいて長いのです」と述べ、記事作成時点ではFastnetの設計の最終調整や、メリーランド州とアイルランドのコミュニティと協力して「環境問題、商業問題、観光、その他あらゆる懸念、さらに世界の漁業コミュニティ」の解決に取り組んでいると明かしました。Fastnetの稼働は2028年を予定していると発表されています。

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