SNSなどで、「メチレンブルー」という物質が記憶力を向上させ、活力をみなぎらせるなどの効果を持つといったウワサが流れ始め、実際にメチレンブルーを使ったサプリも販売されています。メチレンブルーには本当にそのような効果があるのか、薬学の専門家が語っています。
Is methylene blue really a brain booster? A pharmacologist explains the science
https://theconversation.com/is-methylene-blue-really-a-brain-booster-a-pharmacologist-explains-the-science-257159
What methylene blue can (and can’t) do for the brain – Neurofrontiers
https://neurofrontiers.blog/what-methylene-blue-can-and-cant-do-for-the-brain/
メチレンブルーは合成染料で、濃い緑色の粉末として存在し、水に溶けると濃い青色になります。一般的に使用されている食用着色料とは異なり、メチレンブルーは石油由来ではないため、着色料にしばしば見られる健康への影響はないとされています。
メチレンブルーは1876年に織物用の染料として初めて合成され、その強烈な色と布地との結合性の良さが評価されました。その後、ドイツの医師ポール・エーリッヒが生体組織を染色し、マラリアの原因となる寄生虫を殺す能力を発見したことで、メチレンブルーは医療分野で初めて使用された合成薬剤の一つとなりました。
ただ、メチレンブルーは当時標準的な治療法であったキニーネよりも効果がなかったため、マラリア治療薬として広く使用されることはありませんでした。1930年代には生乳や未殺菌乳の安全性を調べるという新たな用途が見出され、「青色がすぐに薄くなる場合、その牛乳は細菌に汚染されているが、青色が残っている場合、その牛乳は比較的清潔である」といった判別法が確立されましたが、現代ではこの方法はほとんど時代遅れとなっています。
現代ではメトヘモグロビン血症と呼ばれる血液疾患の治療にメチレンブルーが使われています。また一酸化炭素中毒、敗血症性ショック、薬物中毒の治療にメチレンブルーが使われることもありますが、ウワサのように人間の記憶力を向上させるというような証拠は見つかっていません。
これまでのところ、アルツハイマー病を模倣した状態のラットにおいて、メチレンブルーが学習能力を向上させ、記憶力を高め、脳細胞を保護する可能性があることがわかっています。同じくラットでメチレンブルーが脳の損傷から脳を保護することや、ラットの虚血性脳卒中の治療にメチレンブルーが有用であることが示されていますが、いずれも人間で同様の効果が得られることは示されていません。
サウスカロライナ大学薬学部のローネ・J・ホフセス教授は「メチレンブルーは、医師の管理下で使用される場合は一般的に安全です。しかし、広く使われている薬と相互作用する可能性があることも覚えておく必要があります。例えばメチレンブルーはセロトニンを分解するモノアミン酸化酵素と呼ばれる分子を阻害するため、不安やうつ病の治療に使われる薬と一緒に服用するとセロトニン症候群と呼ばれる状態を引き起こす可能性があり、興奮、錯乱、高熱、心拍数の急上昇、筋肉の硬直、ひどい場合には発作や死に至ることさえあります」と述べました。
この記事のタイトルとURLをコピーする
・関連記事
思考力がガクッと低下する「脳みその曲がり角」が研究で判明、脳のエネルギーを維持するサプリとは? – GIGAZINE
独力で「テアニン」サプリの効果を確かめる盲検自己実験をした方法と結果とは? – GIGAZINE
ソース元はコチラ
この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。