小惑星「2024 YR4」が「月に衝突するかも」と研究者、最新鋭の宇宙望遠鏡を使った研究論文で – GIGAZINE


一時は約3%と無視できない確率で地球に衝突することが危惧され、もしそうなれば地上に「都市破壊(シティー・キラー)」級の被害をもたらすとして観測が続けられていた小惑星の「2024 YR4」は、その後の追跡により地球に落下する確率がほぼ0%になったことが確認され、監視が打ち切られました。しかし、地球ではなく月に衝突する危険性は依然として残されていると指摘する論文が、新しく発表されました。

JWST Observations of Potentially Hazardous Asteroid 2024 YR4 – IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2515-5172/adc6f0

‘City-Killer’ Asteroid Impact Still a Possibility (Just Not With Earth) : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/city-killer-asteroid-impact-still-a-possibility-just-not-with-earth

ジョンズ・ホプキンス大学の惑星天文学者であるアンドリュー・リブキン氏らの研究チームによると、地球には「2024 YR4」と同程度のサイズと質量の小惑星が5000年に1回程度の頻度で衝突してきたと考えられているとのこと。

幸いにも、2024 YR4が地球に衝突する確率は0.001%と事実上ゼロですが、2024 YR4の正確な大きさや組成といった詳細は不明なので、もし2024 YR4と同じクラスの小惑星が地球に落下したらどのような被害が想定されるのかもわかっていません。

by European Southern Observatory

2024 YR4の物理的特性を解明し、そのような物体が衝突したらどんな影響が出るのかを調べるため、研究チームは記事作成時点で最新鋭の宇宙望遠鏡であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた2024 YR4の観測を行いました。

JWSTには中間赤外線観測装置(MIRI)や近赤外線カメラ(NIRCam)といった観測機器が搭載されており、10メートル以下の小さな物体まで捉えることが可能な精度を誇るので、これまで光の点でしかなかった2024 YR4をより正確に分析することが可能です。

研究チームが、MIRIによる観測データと地球近傍小惑星熱モデル(NEATM)を用いた計算を行った結果、これまで「直径40~90メートル」とかなり幅のある見積もりがなされていた2024 YR4のサイズを、直径60±7メートルの範囲まで絞り込むことができました。小惑星の直径が50メートル以上の確率は92%で、おそらく55~67メートルの大きさだろうと考えられています。

また、小惑星のアルベド、つまり光の反射率から2024 YR4が岩石質のS型小惑星に近い「S複合型小惑星(S-complex asteroids)」の可能性があることもわかりました。


これらのデータと2024 YR4の軌道パラメーターを組み合わせた計算によると、2024 YR4が地球に衝突するとTNT火薬換算で2~30メガトンのエネルギーが放出され、爆発による被害半径は最大80キロメートルになるとのこと。参考までに、アメリカが実験したこれまでで最も強力な核爆弾のエネルギーは15メガトンしかありません。

研究チームは、アメリカ天文学会(AAS)が刊行する学術誌「Research Notes of the AAS」に掲載された論文に、「この記事の執筆時点では、2024 YR4が2032年に月に衝突する可能性は否定されていません。今後、2024 YR4は2025年5月と2026年前半にJWSTの観測範囲に入るため、月に衝突するかどうかを調べる魅力的な観測目標として追究するする価値があるかもしれません」と記しました。

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