宇宙の初期段階に存在していた「ビッグホイール」とは? – GIGAZINE


ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による赤外線を用いた観測は、ビッグバンによって宇宙が誕生してからの初期段階に存在していた銀河をも捉えることができます。2025年3月に発表された研究では、「ビッグホイール」と名付けられた120億年前の銀河が発見されましたが、その観察結果は銀河の形成方法に関する従来の知識に疑問を投げかけるものであったことが報告されています。

A giant disk galaxy two billion years after the Big Bang | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-025-02500-2

You’ve heard of the Big Bang. Now astronomers have discovered the Big Wheel – here’s why it’s significant
https://theconversation.com/youve-heard-of-the-big-bang-now-astronomers-have-discovered-the-big-wheel-heres-why-its-significant-252170


ビッグバンから現在までの宇宙の年齢は、約138億年と算出されています。銀河は周囲の宇宙からガスをゆっくり集めたり小さな銀河と融合したりして長い時間をかけて徐々に形成されると考えられてきましたが、国際的な科学ジャーナルであるNatureの天文学関連誌「Nature Astronomy」で2025年3月17日に公開された論文では、宇宙の最初の数十億年で円盤型の銀河が既に存在していたことが示されました。

論文で「ビッグホイール」と呼ばれている銀河は、JWSTによる波長1.5μmと3.2μmでの撮影により、赤方偏移3.25の明るいクエーサー領域で発見されました。論文の共著者であるスウィンバーン工科大学のテミヤ・ナナヤッカラ氏によると、ビッグホイールを発見できる可能性は2%未満と超低確率で、かなり幸運な発見だったそうです。以下は、論文で示されているビッグホイールの合成擬似イメージ。


ビッグホイールは、現在の宇宙で最大の「超大型渦巻銀河」と大きさや回転速度が同等であることが判明しています。通常、銀河間の急速な合体は繊細な渦巻き構造を乱し、より混沌とした形状に変化します。しかし、ビッグホイールは独特の渦巻き形状を失うことなく、驚くほど大きなサイズに急速に成長しているため、「巨大銀河の成長に関する長年の考えに疑問を投げかけています」とナナヤッカラ氏は指摘しました。

さらに興味深い点として、ナナヤッカラ氏はビッグホイールが形成された環境の特異性を挙げています。ビッグホイールは一般的な宇宙と比べて10倍高い密度に銀河が密集したエリアに位置していたことがわかりました。アメリカ天文学会が2009年に発表した「円盤銀河はどのようにして合体や相互作用の中で生き残るのか?」という論文では、仮説のひとつとして「高密度領域では、大規模な合体が宇宙平均よりも頻繁に起こり、例外的な条件下では、合体により円盤銀河が破壊されるのではなく、円盤の回転を増加させることで成長を促進する可能性がある」というものが挙げられています。そのため、ビッグホイールの観察結果はこの仮説を裏付けるものであり、密集した環境が銀河の急速な成長に理想的な条件であった可能性が考えられています。

ナナヤッカラ氏は「私たちのいる天の川銀河や最近発見されたビッグホイールのような円盤銀河を研究することは、数十億年にわたって銀河がどのように形成され、成長し、進化するかを明らかにするのに役立ちます。これらの研究は、私たちの銀河に似た銀河を理解することで、私たちの銀河系の宇宙史に対するより深い洞察が得られる可能性があるため、特に重要です。ビッグホイールの発見により、初期宇宙のもう一つの謎が明らかになり、銀河の進化に関する現在のモデルはまだ改良の余地があることが示されました。ビッグホイールのような巨大な初期の銀河の観測と発見が進めば、今日私たちが目にする構造が宇宙でどのように構築されたかについて、より多くの秘密を解明できるようになるでしょう」と語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ビッグバンのわずか3億5000万年後に炭素が誕生したことが判明、生命の起源に大きな一石 – GIGAZINE

NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測史上最も遠い銀河を発見 – GIGAZINE

観測史上最も遠い銀河で「酸素」が発見される、銀河の形成が予想より速く起こっていることを示唆 – GIGAZINE

銀河の自転方向に偏りがあることをジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見、「宇宙はより大きなブラックホールの内部」との理論が強化される – GIGAZINE

ブラックホール「LID-568」は理論上の限界の40倍以上という驚異的速度で成長している – GIGAZINE


ソース元はコチラ

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事