Amazonの「禁書」を分析した結果を研究機関が発表、禁止されているカテゴリーはLGBTIQ・オカルト・エロのほか日本のマンガも存在 – GIGAZINE


Amazonは一部製品が特定の地域へ発送されることを制限しています。特に規制が厳しいのが「書籍」で、中東などの国では、特定のジャンルの書籍を購入できないことがわかっています。Amazonが設定する「禁書」の詳細について、トロント大学のセキュリティ研究機関「Citizen Lab」が分析結果を発表しています。

Banned Books: Analysis of Censorship on Amazon.com – The Citizen Lab
https://citizenlab.ca/2024/11/analysis-of-censorship-on-amazon-com/


Citizen Labによると、amazon.comのストアに導入されている「特定製品の特定地域への発送を制限するシステム」を分析したところ、少なくとも1つの地域への発送を制限されている商品が1万7050点あることが判明したそうです。制限された地域で該当する商品を購入しようとすると、一時的に在庫切れであると表示されるなど、さまざまなエラーメッセージが表示されます。以下は、実際にカートに追加した商品にエラーメッセージが表示された例。メッセージのパターンとしては「現在入手できない」「一時的に在庫切れ」「このアイテムは選択した配送場所に発送できません」の3種類が確認されています。


Citizen LabはAmazonのサイトを階層化して内部の仕組みを分析することで、どの製品、地域で規制が有効になっているかを測定する方法を採用しています。発送制限がかけられていることの多い製品はWiFiやチャイルドシートなどさまざまですが、最も一般的なカテゴリは書籍でした。

規制を受けている地域としてわかっているのはアラブ首長国連邦(U​​AE)、サウジアラビア、その他多くの中東諸国のほか、ブルネイ・ダルサラーム国、パプアニューギニア、セーシェル、ザンビアといったアジア地域。以下は、国ごとの検閲製品数を表に表したものです。最も多かったのはUAEで、1万3604件と大部分を占めていました。ただし注意点として、国によって入手可能な製品の数が異なるため、製品が多いとその分制限製品も多くなっている可能性があります。


Citizen Labの分析では、タイトルに「ゲイ」という言葉が含まれていたりドイツにおける同性愛者の迫害の歴史を語った本などを含む「LGBTIQ」、魔術や都市伝説、占星術、キリスト教関連を含む「オカルト」、ポルノ小説や性行為のハウツー本を含む「エロ」、性教育の教材などの「健康関連」がAmazonの規制対象だと判明しました。また、日本の商品で規制されていることが多いのは「マンガ」であり、「僕のヒーローアカデミア」や「ドラゴンクエスト」シリーズの関連作品が含まれています。マンガの規制について、Citizen Labは「オカルトの拡大解釈が原因で規制されているのではないか」と推測しています。

検閲されたトピックにLGBTIQが含まれていることから、Citizen Labは「私たちの調査結果は、AmazonのLGBTIQの権利に対する公約と、ユーザー全体の権利の尊重に疑問を投げかけています」と指摘しています。

Amazonが商品の発送に規制を設けている理由として、Amazonは「配送制限に関するFAQ」の中で、「すべての法律と規制、およびAmazonのポリシーを遵守する必要がある」「政府の輸入/輸出要件、メーカーの制限、または保証の問題により、Amazonがお客様の所在地への配送を制限する可能性がある」ことなどを示しています。過去には、AmazonがUAE政府からの圧力を受けて、サイトでの検索結果からLGBTQに関する項目を排除したことが報じられました。

Amazonが政府の圧力に屈しLGBTQ関連の商品を検索結果から抹消 – GIGAZINE


同様にAmazonが書籍の内容に応じた「禁書」を設定した例として、Amazonは「LGBTQ+のアイデンティティを精神疾患として描写する書籍を販売しないことを選択した」と上院議員らに宛てた書簡の中で述べていたことが、2021年に報じられています。Forbsによると、2021年2月ごろにAmazonは保守派作家が執筆した反トランスジェンダーの主張が含まれる書籍を作者への告知なくストアから削除したため、4人の共和党上院議員が「この検閲は、保守的なアメリカ人の意見はAmazonのプラットフォームでは歓迎されないという合図です」とAmazonに抗議を送ったとのこと。

Amazon.comの規制について、Citizen Labは「Amazonの検閲に対するアプローチ、特にLGBTIQ関連書籍については、同社のポリシーに基づく人権への取り組みと業務慣行の間に大きなギャップがあることを反映しています。この問題は透明性および効果的な苦情処理メカニズムの欠如によって悪化しており、影響を受けた人々はAmazonの検閲方針を明確に理解できず、救済策や選択肢も得られません」と述べています。Citizen LabはAmazonに質問状を送りましたが、記事作成時点では回答を受け取ってはいません。

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