Netflixから1100万ドル(約16億4000万円)もの資金を受け取ったにもかかわらず、番組を作成せず個人的な出費に充てたとして、ニューヨーク南部地区連邦裁判所と連邦捜査局(FBI)が2025年3月18日に、映画・テレビの脚本家兼監督であるカール・リンシュ氏を起訴しました。
Southern District of New York | Los Angeles Director And Writer Charged With $11 Million Fraud In Connection With Streaming Science Fiction Television Show | United States Department of Justice
https://www.justice.gov/usao-sdny/pr/los-angeles-director-and-writer-charged-11-million-fraud-connection-streaming-science
Feds charge director with $11 million fraud over his unfinished Netflix show | The Verge
https://www.theverge.com/news/632264/netflix-carl-rinsch-white-horse-fraud-charges
Director Carl Rinsch Indicted in Alleged $11 Million Netflix Fraud
https://variety.com/2025/tv/news/carl-rinsch-indicted-netflix-white-horse-conquest-fraud-1236341650/
リンシュ氏は2018年1月、Netflixの幹部に対してSFドラマシリーズ「White Horse」を売り込みました。海外メディアのVarietyによると、その時点でリンシュ氏は、6話分のエピソードと3分間の予告編の撮影を終えていたとのこと。
その後、Netflixはリンシュ氏と「White Horse」の第1シーズンを制作するために4400万ドル(約65億7300万円)の投資を行うことに合意。2019年にはケニアやメキシコ、ルーマニアなどで数カ月にわたる撮影を行うスケジュールが立てられました。
しかし、ブラジルで撮影を開始したリンシュ氏はすぐに資金難に直面します。裁判所によると、リンシュ氏はNetflixに対して「撮影済みの6話分に加え、新しく7話分のエピソードを撮影し1シーズンとして配信する」と約束していたものの、Netflixから提供された4400万ドルでは1話分のエピソードしか制作できないと伝えたとのこと。
これを受け、Netflixはリンシュ氏への報酬の前払いを実施。2020年3月にNetflixはリンシュ氏の要求に従い、第1シーズンを制作するための費用として同氏に1100万ドルを支払いました。
新型コロナウイルスのパンデミックを受けて撮影が一時中断していた2020年6月には、リンシュ氏とNetflixの幹部が会談を実施。しかし、その際リンシュ氏は新型コロナウイルスや宇宙、ジェンダー論、宗教観などの展開に会談の大部分を費やし、肝心な「作品の完成」については「順調に進んでいます」と述べるにとどめ、ほとんど明らかにしませんでした。
最終的に「White Horse」の主演俳優は制作の不安定さを理由に降板したほか、2020年秋にNetflixはプロジェクトの打ち切りを決定しています。
2025年3月18日にアメリカ地方裁判所に提出された起訴状によると、リンシュ氏はNetflixから提供された1100万ドルを「White Horse」の完成に充てなかったとのこと。また、FBIニューヨーク支局のアシスタントディレクターであるレスリー・バックシーズ氏は「リンシュ氏は資金を受け取ってから数日のうちに別の銀行口座に送金し、証券の個人的および投機的な投資を行いました」と指摘しています。
リンシュ氏による投資は失敗に終わり、Netflixから与えられた1100万ドルは2カ月のうちにほぼ半減したものの、リンシュ氏は残った資金を「White Horse」の制作に使用することはなく、仮想通貨の購入や個人的な出費に使用したことが報告されています。具体的には、高級マットレスの購入費用として63万8000ドル(約9500万円)、高級寝具とリネンに29万5000ドル(約4400万円)、キッチン家電に18万ドル(約2600万円)、家具に370万ドル(約5億5000万円)を支払ったほか、240万ドル(約3億5800万円)で高級車6台を購入したそうです。
一連のリンシュ氏の行動を受け、ニューヨーク南部地区連邦検事代理のマシュー・ポドルスキー氏とバックシーズ氏はリンシュ氏を電信詐欺・マネーロンダリングなど7つの罪で起訴。ポドルスキー氏は「リンシュ氏は、Netflixから多額の投資を募り、数百万ドル(数億円)を盗む計画を画策しました。そのお金は、彼が制作しているテレビ番組の資金に充てられるとリンシュ氏は主張していましたが、それはフィクションでした。リンシュ氏は仮想通貨取引など、個人的な出費や投資に資金を流用したとされています。リンシュ氏の起訴は、連邦裁判所とFBIが詐欺との戦いに警戒を怠らず、不正行為や窃盗をした人々に必ず処罰を下すことを明確にするものです」と語っています。
なお、リンシュ氏は購入した高級車などについて「撮影のための小道具」と主張していますが、裁判所は「制作には必要のないもの」との判断を下しています。
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