「医者の不養生」という言葉があるように、患者には口を酸っぱくして健康に気をつけるよう指導している医師でも、自分自身のことは案外いい加減だったりします。その究極の事例のひとつとして、心臓発作を起こした男性の治療に当たった救急医が、患者の症状が自分と似ていたことがきっかけで「自分も心臓発作を起こしている」と気づいたケースが紹介されました。
Take Care of your Heart: Marking Heart Month – Timmins and District Hospital
https://tadh.com/news/take-care-of-your-heart-marking-heart-month/
Doctor Realizes He’s Having a Heart Attack While Treating Heart Attack Patient : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/doctor-realizes-hes-having-a-heart-attack-while-treating-heart-attack-patient
心臓発作を起こした男性の救命処置をしたところ、自分の心臓も発作を起こしていることに気づいたのは、カナダのオンタリオ州にあるティミンズ地区病院の救急医のクリス・ロレト氏です。
ロレト氏は2024年半ばから、ランニングをしていると胸の痛みを感じるようになり、時には喉や歯、耳に灼熱(しゃくねつ)感が広がることもあったとのこと。あまりにも痛むため、叫び声をあげてしまうこともしばしばでした。
ロレト氏はかかりつけ医の診察を受けていましたが、痛みを感じるのが運動中だったことは言わなかった上に、医療現場で30年のキャリアを積んできたベテランであるロレト氏が「胃酸の逆流でしょう」と言うので、かかりつけ医は胃薬を処方していました。しかし、胃酸の逆流を抑える薬を数カ月間飲んでも、ロレト氏の胸の痛みは一向に改善しませんでした。
そして、2024年11月12日の夜、ロレト氏がホッケーをプレーしていた時に痛みは最高潮に達し、翌朝になっても肩に痛みが残っていたとのこと。しかし、ロレト氏はそれを無視して病院に出勤し、重度の心臓発作を起こした男性の元に駆けつけました。
患者が一命を取り留めた後、ロレト氏が患者の妻と話をしたところ、ロレト氏と患者の症状がそっくりで、飲んでいた胃薬まで同じだということが判明します。その時のことを、ロレト氏は「彼の物語は私の物語でもありました」と振り返りました。
やっと何かがおかしいことに気づいたロレト氏が、同僚にそのことを打ち明けると、同僚らは「バカ!」を含む言葉でロレト氏を説得し、心電図検査を受けさせました。こうして、ロレト氏の胸の痛みの正体は心臓発作であることが発覚しました。
心臓発作を含む心血管疾患(CVD)は、世界の死因の第1位であり、毎年約1790万人がこの病気で命を落としています。心臓発作の症状には、胸部の不快感(圧迫感、締め付けられるような感じ、膨張感、痛み、灼熱感、重さを感じる)や上半身(首、あご、肩、腕、背中)の不快感、息切れ、発汗、吐き気、ふらつきなどがあります。また、女性は胸部の圧迫感を感じなくても心臓発作を起こすことがあるほか、息切れ、胸部下部または腹部上部の圧迫感や痛み、めまい、ふらつき、失神、背中上部の圧迫感、極度の疲労感を感じることがあります。
地元の心臓専門センターで患者の妻と再会し、「あのとき夫の命を救ってくれてありがとうございます」と言われたロレト氏は「いいえ、こちらこそ命を救ってもらってありがとうございます」と返したそうです。
治療に入る際に、同僚に「今週末のシフトからは外さないでおいて」と告げたロレト氏ですが、それから約3カ月が経過した2025年2月になってもまだ病気休暇中とのこと。トロントにあるセント・マイケルズ病院で、動脈を拡張するためにステントという医療器具を挿入する処置を受けたロレト氏は、元通りの健康を取り戻すべくリハビリを受けています。
ロレト氏は、患者の体を気遣うのに比べて自分のことはおろそかになっていたことや、どこかに「自分は大丈夫だ」という思いがあったことを認めた上で、「私たちは人の世話を焼くのが得意でも、自分の面倒を見るのは不得手なようです」と話しました。
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