探索船が月面着陸に失敗した写真を公開、月に宇宙船を着陸させることが難しい理由とは? – GIGAZINE


NASAが資金提供し、アメリカの宇宙探査会社であるインテュイティブ・マシーンズが運営する月探査船が、月を周回飛行した後、2025年3月6日に月へと降り立ちました。しかし、翌日に公開された写真には斜めに倒れた宇宙船が映っており、専門家は月面着陸の難しさを語っています。

Moon photo reveals how lunar landing just went wrong | Mashable
https://mashable.com/article/moon-landing-sideways-intuitive-machines-image

以下は、インテュイティブ・マシーンズが公開した月着陸船「アテナ」の写真。月面上に倒れているアテナと、背景の地球が合わせて撮影されています。


アテナは、月面探査における大きな飛躍を目指す「IM-2ミッション」の一環として打ち上げられました。2025年2月26日の打ち上げから、アテナは月への飛行と月周回飛行では素晴らしい成果を挙げ、以下のような地球を撮影した写真を安定した通信環境で届けていました。


しかし、2025年3月6日の着陸で、アテナは予定着陸地点から約250m離れたクレーターの中に横たわっていることが判明しました。アテナが横たわっていることで、送信される写真が横倒しになっていることのほか、太陽光による充電のための正しい姿勢が取れていないという問題もあります。インテュイティブ・マシーンズは声明で「太陽の方向、ソーラーパネルの向き、そし​​てクレーター内の極寒の気温を考えると、アテナが再充電できるとは考えていません。ミッションは終了しており、チームはミッション中に収集されたデータの評価を続けています」と述べています。

インテュイティブ・マシーンズの探査船は、2024年2月のミッションでも月の着陸に失敗し、脚を折って転倒したことでミッションが継続困難になりました。以下は、着陸地点へ接近中に探査船「オデュッセウス」の機体が傾いたタイミングで撮影された月の写真。


また、2024年1月に日本の月着陸実証機「SLIM」でも同様の着陸失敗が報じられました。SLIMは狙いの場所にピンポイントで月面着陸し、月面探査ロボットを放出するなどのミッションを完遂しましたが、アテナやオデュッセウスと同じように着陸姿勢を失敗したことで太陽電池からの電力供給ができなくなっています。

月面着陸に成功した「SLIM」はミッションの主目的を果たして「満点」評価も着陸姿勢が話題に – GIGAZINE


NASAの科学ミッション局長であるニコラ・フォックス氏は、インテュイティブ・マシーンズの着陸事故の可能性を明かした会見で、「月面着陸が極めて難しいということに我々は同意できると思います」と語りました。その理由のひとつに、月には着陸を安定させるための大気がない点があります。地球のように大気がある場合、パラシュートなどで機体を減速させてゆっくり着陸することも可能ですが、月の場合は大気が非常に薄いため、大量の推進剤を噴射することでしか着陸のための減速ができません。着陸に使用できる燃料は限られているため、一発勝負で着地させる必要があり、着陸地点が極端にでこぼこしていたり推進剤の噴出するタイミングが少し長かったりすると、探査船は倒れてしまいます。

また、着陸地点を確認する際には、探査船に搭載したコンピューターを頼りに指定した着陸地点に向かうほか、降下中にカメラを使って地面の地図を作成し、着陸場所のクレーターや岩を避けることができます。しかし、アテナは特に月の南極付近の探索を目指す「アルテミス計画」の補助を目的としており、太陽の届かない南極寄りの着陸であったため、着陸箇所が影になって十分に確認するのが困難でした。

アテナには、資源が豊富だと期待されていながら調査が進んでいない南極地域を探索する任務のほか、有人月面ミッションであるアルテミス計画で氷などの地下資源を掘削するのに使うドリルの性能をテストする役割もありました。氷の掘削はロケット燃料の製造に不可欠で、アルテミス計画の重要な部分である月への長い駐留を確立するために必要であるため、アテナの着陸失敗でアルテミス計画の主要なプランが影響を受ける可能性があります。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
民間月着陸機「ブルーゴースト」が月面に降り立つ映画のワンシーンのようなムービーが公開される – GIGAZINE

NASAの2026年月面着陸ミッションで使われる新しい宇宙服「AxEMU」の詳細が発表される、老舗ブランドのプラダも開発に参加 – GIGAZINE

月には氷が「予想よりかなり多く」あるとNASAが研究結果を発表 – GIGAZINE

月の石から水を取り出す研究が進行中、人類が月面に住む時代はもうすぐだと科学者 – GIGAZINE

月の裏側は天文学の新たなフロンティアになるという主張 – GIGAZINE




ソース元はコチラ

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事