トランプ氏の暗殺未遂事件は政治的暴力を支持する共和党員を減少させたことが判明 – GIGAZINE

by Gage Skidmore

2024年7月、当時アメリカ大統領選挙に出馬していたドナルド・トランプ現大統領が銃撃を受け、右耳を負傷する暗殺未遂事件が発生しました。この件では「トランプ氏を支持する共和党員と民主党員の対立が激化し、政治的な暴力行為が加速するのではないか」という懸念も浮上しましたが、新たな研究では「トランプ氏の暗殺未遂事件は共和党員の暴力に対する支持を減少させた」ということが判明しました。

The July 2024 Trump assassination attempt was followed by lower in-group support for partisan violence and increased group unity | PNAS
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2414689121


Trump assassination attempt lowered Republican support for violence and boosted party unity
https://www.psypost.org/trump-assassination-attempt-lowered-republican-support-for-violence-and-boosted-party-unity/

トランプ氏の暗殺未遂事件は政治的紛争のエスカレートを反映したものとみられ、共和党支持者と民主党支持者の対立がさらに深まり、やがて政治的な暴力行為に発展するのではないかと危惧する声もありました。その後も、9月にトランプ氏が訪れたゴルフ場で銃を持った男が逮捕されるなどの事件はありましたが、記事作成時点ではそれ以上の事態に発展していません。

今回の論文で、ダートマス大学の政治学准教授であるショーン・ウェストウッド氏らの研究チームは、暗殺未遂事件が一般市民の政治的暴力と党への忠誠心にどのような影響を及ぼしたのかを調べました。ウェストウッド氏は、「マスコミは、アメリカ人が新たな内戦の瀬戸際にいるという主張であふれています。トランプ氏の暗殺未遂事件の直後、評論家や多くの学者は、アメリカが党派対立の暴力的なエスカレーションのスパイラルに入るだろうと主張しました。私たちは、これらの主張をデータでテストしたかったのです」と語っています。


研究チームは暗殺未遂事件による市民の反応を調べるため、世論調査会社であるYouGovが実施した大規模な全国調査のデータを利用しました。トランプ氏の暗殺未遂事件が起きた当時、調査は進行中だったため、研究チームは暗殺未遂事件の前後で回答を比較可能だったとのこと。

研究には、暗殺未遂事件の26日前に回答した3572人のデータと、暗殺未遂事件の4日後に回答した703人のデータ、そして暗殺未遂事件の前後で2回にわたり調査に参加した345人のデータが用いられました。

すべての回答者は、政治的態度を測定するために設計された標準的な質問に答えたほか、共和党員または民主党員への好感度を「0(非常に好ましくない)」から「100(とても好ましい)」のスケールで評価しました。また、自分自身がトランプ氏の熱心な支持者である「MAGA(Make America Great Again)共和党員」なのか、それともトランプ氏に断固反対の「Never Trumper(ネバー・トランパー)」なのか、あるいはそのどちらでもないのかも尋ねられました。

加えて、民主主義の原則を損なう可能性がある「野党支持の選挙区で投票所を減らすべき」「自分が支持する政党に批判的なメディアの検閲を認める」といった主張について同意するかどうかや、政治的暴力をどれほど支持するのかについても測定されました。政治的暴力の支持については、ある人物が対立政党に対して行った暴力行為について、「許可のない抗議行動」「破壊行為」「暴行」「放火」「狂気を用いた暴行」「殺人」までさまざまな深刻度のシナリオで、どれほど反対するのかが調査されたとのことです。


データを分析した結果、「共和党員の間ではトランプ氏の暗殺未遂事件の後、政治的暴力への支持が大幅に減少した」ことが判明しました。政治的暴力に対する支持の減少は、特に自身を「MAGA共和党員」と認識している人の間で顕著だったと報告されています。

また、共和党員は民主党員に対して、暗殺未遂事件の後も敵対心を増すことはありませんでした。その代わりに、共和党に対するポジティブな感情が増したとのことで、これは暗殺未遂事件の後が共和党員の団結力を高めたことを示唆しています。

同じ人物を暗殺未遂事件の前後で比較した分析でも、やはり暗殺未遂事件が党派的暴力に対する支持を減少させ、党の団結力の増加につながったという結論が裏付けられました。

一方で民主党員の間では、暗殺未遂事件が政治的暴力への支持や民主党および共和党への感情などに影響を及ぼさなかったとのことです。なお、共和党員の政治的暴力に対する支持の減少は一時的なものであり、時間が経過するにつれて共和党員の暴力への嫌悪感は薄れていったと報告されています。


ウェストウッド氏は、「私たちの結果は、アメリカ人が政治的暴力にほぼ全面的に反対していることを示しています。予想に反して、暗殺未遂のような出来事は、不満を抱いた党派的な人々が報復しようとする動機になりません。その代わりに、一般大衆に存在する暴力へのわずかな支持をさらに減らします。アメリカでは政治的暴力が問題になっていますが、その懸念は誇張されすぎているかもしれません」とPsyPostに語りました。

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