犬を飼うことには心臓発作や脳卒中による死亡リスクの低下といったメリットがある一方で、命を預かるという重大な責任やペットロスのつらさ、予防接種や動物病院にかかるための費用といった負担も伴います。ハンガリーの研究者が、犬の飼い主246人に33問の質問を投げかけ、その回答から犬を飼うことのメリットとデメリットを定量化した研究の結果を発表しました。
Perceived costs and benefits of companion dog keeping based on a convenience sample of dog owners | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-025-85254-1
Why You Shouldn’t Get a Dog: Researchers Reveal Surprising Truth About Dog Ownership
https://scitechdaily.com/why-you-shouldnt-get-a-dog-researchers-reveal-surprising-truth-about-dog-ownership/
ハンガリーにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究グループによると、犬を飼うことが人間にいい影響を与えるといわれることがよくあるにもかかわらず、犬の飼い主の身体的な健康やメンタルヘルスについて調べた過去の研究の結果はまちまちで、とても普遍的とは言えないとのこと。
こうした研究には、研究者が事前に設定したメリットやデメリットに関する項目が用いられており、必ずしも客観的とはいえないものもあります。例えば、ある研究で用いられた指標には、犬の飼育を「迷惑」「面倒」といったネガティブな言葉で表現した項目が含まれており、犬を飼うことの負担が意識されがちになっていました。
今回、研究グループはメリットとデメリットを個別に尋ねるのではなく、どちらにも分類されていない33項目の質問の一覧を見せて、それを-3(大きなデメリット)から+3(大きなメリット)までの数字で評価してもらうアプローチを採用しました。なお、研究の参加者は犬を飼っている18歳以上の成人で、有効回答数は246件、回答者の平均年齢は41歳、犬の平均年齢は5.8歳でした。
この調査で平均スコアがプラスになった、つまり多くの飼い主からポジティブだと評価された「メリット」は以下のとおり。最も肯定的に評価されたのは「犬は人生を明るくしてくれる」という信念で、スコアは平均2.78でした。2位以降には、犬を飼うと活動的になること(平均2.7)や、人生の困難を一緒に乗り越えてくれること(平均2.59)、無条件に愛してくれること(平均2.58)などが続きました。
肯定的に評価された項目 | 平均スコア |
---|---|
犬は人の生活を明るくすることができる | 2.78 |
犬を飼うことで身体活動が促される | 2.70 |
犬は飼い主が人生の困難な状況を乗り越える手助けをする | 2.59 |
犬は忠実で、飼い主に無条件の愛を提供する | 2.58 |
犬と一緒に遊んだり笑ったりする楽しい瞬間を共有できる | 2.55 |
犬は飼い主に安心感や安定感を与える | 2.37 |
犬を飼うことで責任感を学ぶことができる | 2.36 |
犬には飼い主の愛情が必要である | 2.23 |
犬を飼うことで朝起きる理由ができる | 2.10 |
犬の保護や譲渡は困っている存在を助け、より良い世界に貢献する | 2.05 |
犬を飼うことは精神的な経験となり、自己成長につながる可能性がある | 2.00 |
犬は家族の絆を深める | 2.00 |
犬を飼うことで他の人との交流が促進される(例:散歩やトレーニング中) | 1.99 |
犬は子どもの遊び相手になる | 1.96 |
犬を飼うことで地域社会の一員であると感じられる | 1.91 |
犬を飼うことで日常の習慣に影響が出る | 1.90 |
犬にはしつけや訓練が必要である | 1.89 |
犬は飼い主が世話をする必要がある | 1.80 |
犬を飼うことで睡眠の質に影響がある | 1.63 |
犬の世話には毎日時間を割く必要がある | 1.59 |
肯定的な項目の平均スコア | 2.06 |
続いて平均スコアがマイナスになったもの、つまり「デメリット」と評価された項目は以下のとおりす。犬の飼い主が直面する最大の困難は犬に先立たれること(平均-1.67)で、ワースト2位以降にはペット可の物件を探すのが難しくなること(-0.7)や、旅行に行くときに誰かに預けなければならないこと(-0.66)、犬が言うことを聞いてくれない時のストレス(-0.64)などが挙げられました。
否定的に評価された項目 | 平均スコア |
---|---|
犬はアレルギーの原因になることがある | -0.31 |
犬はうるさく吠えることがある | -0.44 |
犬は家の中を汚すことがある | -0.53 |
犬の問題行動により飼い主が恥ずかしい思いをすることがある | -0.53 |
犬は所有物を破損する可能性がある | -0.57 |
犬の世話には費用がかかる(例:食費、動物病院、玩具など) | -0.61 |
犬を飼うことで他人とトラブルが生じることがある(例:近隣住民との摩擦) | -0.61 |
犬は他の動物に危害を加える可能性がある | -0.63 |
犬のしつけがうまくいかず、飼い主がストレスを感じることがある | -0.64 |
旅行時に犬の世話の手配が必要になる | -0.66 |
犬を飼うことで住居探しが難しくなる | -0.70 |
犬は飼い主よりも寿命が短い | -1.67 |
否定的な項目の平均スコア | -0.66 |
総合すると、犬を飼うことのメリットに対する評価は平均「2.06」で、デメリットの平均「-0.66」に比べて大きくプラスに傾きました。
これらの定量的な測定に加え、研究グループは自由記述の回答も分析しています。これにより、飼い主の60.8%が犬との間に構築される「意味のある有意義な関係」を実感していることが浮き彫りになりました。例えば、ある飼い主は「犬は無条件の愛を毎日感じさせてくれる」と答え、また別の飼い主は「純粋な愛を体験し、心が開かれ、学びを得ます」と答えました。
一方で、95.2%とほぼ満場一致で「金銭的なコスト」が犬の飼い主たちの負担になっていることも判明しました。特に医療費は大きな負担で、74.9%が持病や予期せぬ体調不良、寄生虫予防など何らかの形でかかる医療費に言及していたとのこと。ある飼い主は「獣医師の診察料、特に麻酔を伴う手術代はどれも高額です。また、当直時間中に獣医師に連れて行かなければならない場合、残念ながら当直料金もかさみます」とコメントしました。
同様に、飼い主の31.7%が毎日の餌代に言及したほか、トレーニングやグルーミングなどの費用を挙げる飼い主も12.3%いました。これに対し、犬の世話にかかる手間や旅行の制限などの実生活上のコストを挙げた人は4%、避けられない別れの悲しみといった感情的なデメリットに言及した人は4.8%にとどまりました。
今回の研究のまとめとして、研究グループは「犬を飼う経験は多面的であり、すべての飼い主に当てはまるような普遍的なコストやベネフィットでそれを説明することはできないとの結果が示されました。特に、犬の飼育に伴うコミットメントや責任が、感情的ないし実際的な負担として認識されることもあれば、有益なものとして認識されることもあったというのは重要なことです」と述べました。
なお、研究グループは記事作成時点でも調査を続けており、犬の飼い主で18歳以上、かつ研究への参加に同意する人なら誰でも、以下のリンクからアンケートに協力することができます。
Dogs and Us: Understanding the pros and cons of dog ownership
https://tally.so/r/nPXKPb
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