AI企業のAnthropicが「安全で信頼できるAIを促進する宣言」を公式サイトからひっそりと削除 – GIGAZINE


OpenAIの元メンバーによって設立された人工知能(AI)スタートアップのAnthropicは、AIの性能向上に伴う安全への脅威を「AI安全レベル(ASL)」と呼ばれる指標で分類していたり、2025年~2026年には人類に脅威をもたらすAIが登場すると予測していたりと、責任あるAIの使用を企業理念としてAIの安全性や信頼性を重視しています。そんなAnthropicが、2023年に当時のバイデン大統領政権と共同で作ったいくつかの自主的な取り組みについて言及した文面を、ウェブサイトから削除したことが報じられています。


Anthropic quietly removes Biden-era AI policy commitments from its website | TechCrunch
https://techcrunch.com/2025/03/05/anthropic-quietly-removes-biden-era-ai-policy-commitments-from-its-website/


AI技術の急速な進歩に伴い、生成AIによるディープフェイクの被害や、AIが兵器開発を支援する懸念など、問題点も多く浮上しています。そこでアメリカ政府は2023年に、OpenAI・Meta・Microsoft・Google・Amazon・Anthropic・Inflectionの大手AI企業7社に対し、「AIのリスクを軽減するための自発的な取り組み」を行うよう要請しました。これに基づいて交わされた合意により、AI生成コンテンツに透かしを入れるためのメカニズム開発や、差別ないし偏見の助長およびプライバシーの侵害といった社会的リスクに関する研究を優先的に行うことなどが取り決められています。

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政府との取り決めにより、Anthropicは「透明性ハブ:自発的な取り組み」というページの中で、AIリスクの管理に関する情報共有や研究などの公約を記載していました。

しかし、企業や政府のAIに関する安全政策について監視する団体のWatchtowerによると、Anthropicは政府からの要請に同意した「安全で安心、信頼できるAIのための自主的な取り組み」のセクションを、「透明性ハブ:自発的な取り組み」から痕跡も残さずこっそり削除したとのこと。

トランプ大統領は2025年1月の就任からすぐに前政権の大統領令約80件を撤回しており、その中には2023年10月30日に公布された大統領令14110号「AIの安心・安全・信頼できる開発と利用に関する大統領令」も含まれていました。また、トランプ大統領は「過激で無駄の多い政府の多様性・公平性・包括性(DEI)プログラムと優遇措置の廃止」という大統領令に署名しており、それに伴いOpen AIMetaGoogleがDEIへのコミットメントを表明していたページを削除しています。

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2023年に行われた要請は法的拘束力を持たないものであり、Anthropicが「透明性ハブ:自発的な取り組み」を変更したのもトランプ大統領の就任に伴う政策転換が原因と考えられますが、Watchtowerは「2023年の公約は、期限付きであったり、現職大統領の政党所属に左右されたりすることを定めてはいません」と指摘しています。また、Open AIやGoogleが明示的に方針転換したのに対し、Anthropicはポリシーを発表なく修正したのみである点も問題視されています。

Watchtowerは「Anthropicは2023年の政府との公約について削除したのみで、それ以外の内部慣行に関する詳細はほとんど変更していないため、その点は心配ありません。今Anthropicがすべきなのは、公約を放棄するかどうかの選択について透明性を提供することだけです」と述べています。

ウェブメディアのTechCrunchがAnthropicに問い合わせたところ、Anthropicは声明で「当社は、バイデン政権下で確立された自主的なAIへの取り組みに引き続き取り組んでいます。この進展の状況と具体的な取り組みは、引き続きコンテンツ内の透明性ハブに反映されています。さらなる混乱を防ぐため、当社の進展の状況がどこと一致しているかを直接示すセクションを追加します」と語っており、ページの変更は社内方針の変更を意味するわけではないと説明しています。

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