睡眠の質や睡眠時間を改善させるには、定期的な運動や、寝る前の軽い運動などが役立つことが、これまでの研究でわかっています。さらに、不眠症と診断された人が筋力トレーニングや有酸素運動、ヨガなどの運動をした結果を調べた新しい研究により、「不眠症対策に最も効果的な運動は筋力トレーニング」だということが突き止められました。
New Research Reveals the Best Exercise for Beating Insomnia
https://scitechdaily.com/new-research-reveals-the-best-exercise-for-beating-insomnia/
Muscle strengthening exercise may help tackle insomnia in older adults
https://www.news-medical.net/news/20250304/Muscle-strengthening-exercise-may-help-tackle-insomnia-in-older-adults.aspx
Resistance Training: The Optimal Approach to Combat Insomnia in Older
https://bioengineer.org/resistance-training-the-optimal-approach-to-combat-insomnia-in-older-adults/
タイにあるマヒドン大学ラマティボディ病院の研究グループによると、睡眠の質は加齢とともに悪化する傾向があり、高齢者の5人に1人が不眠症を経験しているとのこと。睡眠不足は、職場でのパフォーマンス低下や欠勤につながるほか、特に高齢者にとっては認知機能の低下やアルツハイマー病のリスクにもなります。過去の多くの研究により、こうした睡眠の問題の解消にはさまざまな種類の運動が有効なことが示されていますが、どんな運動が最も効果的なのかはこれまで不明でした。
そこで、研究グループは2022年10月までに公開された運動と睡眠に関する論文を徹底的に調査し、不眠症患者の症状がさまざまな種類の身体運動や日常的な活動、標準治療、その他の非運動介入によってどのように変化したのかについてのデータを収集して分析しました。
分析には、60歳以上の成人2405人(平均年齢70歳)を対象とした24件の臨床データが含まれました。対象となった研究の参加者は全員が正式に不眠症と診断された患者で、参加者の睡眠の質はグローバル・ピッツバーグ睡眠品質指数(GPSQI)で比較されました。
また、運動の種類にはサイクリング・ダンス・水泳・早歩き・ガーデニングなどの有酸素運動や、ウエイトトレーニング・腕立て伏せ・プランクなどのレジスタンス運動、踏み台昇降や一直線上に足を踏み出して歩く継ぎ足歩行などのバランス運動、体操・ヨガ・ピラティスなどの柔軟運動、およびそれらを組み合わせた複合運動が含まれました。
研究グループが、直接的および間接的な介入効果の両方を統合できる統計手法である「ネットワークメタアナリシス」でデータを分析したところ、筋力トレーニングおよびレジスタンス運動をするとGPSQIスコアが5.75ポイントと大幅に上昇することがわかりました。これに対し、有酸素運動によるGPSQIスコアの改善は3.76ポイント、複合運動では2.54ポイントでした。
つまり、ダンベルやマシンを使ったウエイトトレーニングか、自重を使ったレジスタンス運動かにかかわらず、筋力トレーニングが不眠症の改善に最も効果的でした。
筋力トレーニングといっても、必ずしも高負荷なハードメニューをこなす必要はありません。研究に含まれていた運動の強度の半分は軽度から中程度で、1セッションの平均時間は50分ちょっと、頻度は週2~3回ほどでした。また、運動プログラムの期間は平均14週間でした。
研究グループは、分析対象となった研究の設計や方法論にはばらつきがあり、特定の種類の運動についてのデータは少ない点に注意が必要としています。また、運動の強度に関するデータが含まれていない研究もいくつかあったとのこと。
その上で、研究グループは「運動、特に筋力を強化する運動と有酸素運動は、通常の活動に比べて、臨床的に有意なレベルで主観的な睡眠の質を高めるのに有益です」と結論付けました。
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