子どもの頃にリビングで長時間テレビを見ていると、親や親戚から「テレビを見過ぎるとバカになる」と小言を言われた経験があるかもしれません。実際に南カリフォルニア大学の研究チームが行った研究では、中年期に長時間テレビを見ていた人にはアルツハイマー病に関連する脳領域の容積低下がみられることが判明しました。
Associations of distinct sedentary behaviors with cortical, subcortical, and white matter hyperintensity volumes: Evidence from the ARIC study – Feter – 2026 – Alzheimer’s & Dementia – Wiley Online Library https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/alz.71582
以前から「座りっぱなしの生活は健康によくない 」ことが知られていますが、座りながら行う活動にも読書・・勉強・デスクワーク・編み物・テレビ視聴などさまざまな種類があります。そこで南カリフォルニア大学の研究チームは、座りながら行う活動の種類にも目を向けた調査を行いました。
研究対象となったのは、長期にわたって実施されているAtherosclerosis Risk in Communities Study(動脈硬化リスクに関する地域研究) の被験者である1712人の成人のデータです。被験者の平均年齢は1987~1989年に研究へ参加した時点で53歳であり、余暇にテレビを見る頻度について「まったく/めったに見ない」から「非常に頻繁に見る」までの尺度で回答したほか、仕事中に座っている時間の長さについて報告しました。
研究開始から約24年が経過して被験者が70代半ばになった時点で、MRIを使って脳スキャンが行われました。研究チームが着目したのは、アルツハイマー病や関連する認知症で初期変化がみられる前頭葉 や後頭葉 、そしてMRIで白く写るWhite Matter Hyperintensities(白質高信号域)です。白質高信号域の増加は、認知機能低下や認知症リスクに関連する血管性脳疾患の兆候 であることが知られています。
データを分析した結果、中年期にテレビを非常に頻繁に視聴すると回答していた人では、脳容積の減少や白質高信号域の増加が確認されました。これとは対照的に、仕事中に座っている時間が長いと回答した人では前頭葉と後頭葉が大きく、白質高信号域も小さい健康的な脳を持っていました。
以下の図は、長時間のテレビ視聴(左)と長時間のデスクワーク(右)で増減する脳領域を示したもので、赤色が皮質容積の低下に関連する領域を、紫色が皮質容積の増加に関連する領域を表しています。
研究チームが身体活動レベル・糖尿病・ボディマス指数(BMI)・喫煙・飲酒といった要因を考慮に入れても、依然として差は歴然としていました。一方で明確な性差も存在しており、MRIスキャン結果を男女別に分けて分析したところ、テレビ視聴と座り仕事の両方における変化のほとんどが男性にみられることもわかりました。
論文の筆頭著者で、南カリフォルニア大学の生物学者であるナタン・フェイティ 氏は科学系メディアのScienceAlertに対し、「テレビ視聴と脳構造の関連性は、女性よりも男性の方がはるかに強いことがわかりました。これは、男性と女性では座っている時間の蓄積の仕方が異なるため(たとえば女性は座っている時間を中断する頻度が高いなど)、あるいは長時間座り続ける行動に対する脳の反応に生物学的な違いがあるためと考えられます」とコメントしています。
実際に過去の研究 では、女性は全体的なテレビの視聴時間が長いものの、より短い時間単位で視聴することを好む傾向があると示されています。一方で男性は、スポーツや映画といった長い番組を途切れなく視聴するのを好むそうです。また、男女におけるホルモン分泌の違いや育児・家事などの生活習慣、脳の老化の違いなどが影響している可能性もあるとのこと。
一般にテレビを見ることは、認知的に受動的な活動とみなされています。一方、デスクワークには計画立案や文書の熟読、テキストメッセージの作成、重要な意思決定および問題解決といった認知的な要求が高いタスクを伴うことが多くあります。こうした精神的刺激のある活動は認知予備能 の構築に役立ち、脳が加齢に伴う変化にうまく対処できるようになる可能性が示唆されています。
なお、今回の研究ではテレビの視聴時間やデスクワークの時間はあくまで被験者の自己申告に基づいており、客観的な測定と比べると精度が落ちる点に注意が必要です。また、テレビ視聴と脳の変化についての相関関係が確認されたものの、「テレビ視聴が脳の変化をもたらした」という因果関係について証明されたわけではありません。
論文の共著者である南カリフォルニア大学の生物学者デヴィッド・ライクレン 氏は、「私たちは長年にわたり、人々がどれだけ座っているのかに注目してきました。しかし今回の研究結果は、人々が座っている間に何をしているのかにも注意を払うべきだと示唆しています」と述べました。
この記事の続きを見るには、「広告を見る」か 「無料メンバーに登録」が必要です 無料メンバー限定記事は1087本あり、さらに増えるよ!
広告を見る
無料メンバーに登録 無料メンバーで再ログインする場合はこちら
先ほど入力したメールアドレス宛に件名「GIGAZINE無料メンバー登録のメールアドレスの確認」というメールが送信されているので、「メールアドレスを確認するには、次のリンクをクリックしてください。」の部分にあるリンクをクリックして、認証を完了してください。 メールが届いていなければ、この直下にある「確認メールを再送信する」をクリックしてください。
確認メールを再送信する
ソース元はコチラ