イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業のSpaceXは現地時間の2026年5月22日(金)、再使用型の超大型ロケット・Starshipの改良版である「Starship V3」の打ち上げに成功しました。そんなStarship V3の打ち上げに向けて奔走するエンジニアたちの姿を捉えたドキュメンタリー「Critical Path」が、YouTubeで無料公開されています。
Starship – Critical Path – YouTube

Starship打ち上げのシニアディレクターを務めるジャスティン・シュタイアー氏は、ロケット建造や発射台の設置といった複雑なミッションを行う場合、「クリティカル・パス」を意識することが重要だと述べています。
クリティカル・パスとは、相互に依存する一連のタスクのうち、プロジェクト全体の最短完了期間を決定する最も長い経路のことです。
シュタイアー氏は、SpaceXの創業者であるマスク氏から「どんな困難があろうともこのロケットを飛ばせ」というようなプレッシャーを感じたことはないそうです。成功を急ぐあまり、問題のあるロケットを打ち上げて爆発させるのはマスク氏の方針ではなく、問題がある時はたとえロケットの発射直前であっても踏みとどまるとのこと。
Starship V3打ち上げの1週間前。
Starship打ち上げエンジニアリングチームのディレクターを務めるティム・サザートン氏は、SpaceXが他の企業と違うのはテストを頻繁かつ迅速に行うことだとして、「機体が万全の状態で出発できることを確認したいのです」と述べています。
この日のテストではエンジンからの燃料漏れが確認されました。
Starshipの打ち上げ装置には5000トン~6000トンもの推進剤とロケットの重量がかかります。これほど重いものを何かに乗せるというケースは前例がなく、考えることはたくさんあるとサザートン氏は語っています。
Starship V3の打ち上げ時には膨大なエネルギーが放出され、これらがさまざまな設備を破壊する危険性があります。
そのため、エンジニアリングチームは打ち上げに合わせて大量の水を放出することでエネルギーを水の沸騰に変換し、エネルギーを吸収すると共に温度上昇を抑えるとのこと。
テストおよび打ち上げ担当ヴァイスプレジデントのボビー・ペデン氏は、この1~2週間はストレスとカフェインで何とかやり過ごしてきたと語っています。
打ち上げが1日遅れるだけですべての関係チームに影響が及ぶため、打ち上げ担当チームのプレッシャーは大きなものです。
打ち上げチームはテストを繰り返して必要なエンジニアリングデータの収集に努めます。
Starshipオペレーションチームのディレクターを務めるジェナ・ロウ氏は、4回目の静止燃焼試験で全エンジンをフル稼働させられたことを喜んでいます。
しかしペデン氏は、依然として打ち上げの際にどうなるかわからない要素が多く、油断はできないと語っています。
Starshipの発射台は改良を重ね、当初のものよりかなり組み立てが簡単になっているとのこと。
テスト後に問題が発生したため、対応チームが原因を探ります。
問題箇所を調べた結果、発射台のチェーンに問題が発生したことがわかりました。故障したチェーンは基本的に自転車のチェーンと似たような機構ですが、その重量はチェーン1つで約172kgもある巨大なものです。
幸いにも交換部品があったため空輸し、翌日には交換することができました。
問題発見から復旧までにかかった時間は30~36時間ほどだったとのこと。
打ち上げ4日前。Starshipの着水地点であるインド洋では、着水したStarshipのデータを収集するリカバリーチームが準備を進めています。
リカバリーエンジニアのスーレン・サナイ氏はミッションの主な目的について、再突入後のStarshipの耐熱シールドの高解像度画像を撮影することだと語っています。
データ収集のために洋上にブイを浮かべるほか、これまでのミッションよりはるかに多くのドローンも飛ばすとのこと。
ブイは以前のミッションでも撮影に使用されており、補修を重ねて運用しているとのこと。
このような人間が近づけない距離から、着水するStarshipの撮影が可能です。
打ち上げ3日前になると、Starshipの打ち上げに必要なパーツが続々と発射台に運び込まれます。
ここでも超重量物の輸送専門チームが協力し、必要なものを運んでいます。
その裏では、Starship V3のペイロード搭載も進行していました。
Starship V3ではダミー衛星22基の放出が予定されていたため、これらを搭載する必要があるとのこと。
総重量は約37.5トンに達し、これまでにSpaceXが打ち上げたどのペイロードよりも重いそうです。
打ち上げ2日前、巨大なStarshipが発射台へと運ばれていきます。
すでに見物客も集まり始めていました。
困難に見舞われながらも、着々と発射の準備が進められます。
そして発射当日。
管制室にはマスク氏の姿も見えます。
ところが、カウントダウンのタイミングになって問題が発生。通信員が「まだもう一度、試すだけの時間はあります」と伝えて再度発射を試みますが、問題は解決されませんでした。
残念ながらこの日の打ち上げは中止となりました。
管制室には重苦しい空気が流れます。
今回発生した問題は、ロケット燃料を注入する際に地上設備と機体をつなぐ「QD(Quick Disconnector)」という部品の問題でした。
飛行に近い状態でQDを外そうとしたところ予期せぬ振動が発生し、油圧システムが正常に作動しなかったそうです。
発射は翌日に延期されたため、急ピッチで問題の修復が進められます。
発射の延期に伴い、インド洋上のリカバリーチームもさらに1日待機しなくてはなりません。
海が荒れる中、深夜1時にブイの最終準備を終えて放出。
真剣な面持ちでブイが漂うのを見つめます。
翌朝、再び発射ミッションがスタート。この際、前日に起きた問題とその対策についても説明されました。
カウントダウンが始まります。
大勢の見物客も打ち上げを見守っています。
Starshipのエンジンが点火。
見事に打ち上げられました。
見物客からは歓声が上がります。
ブースターの燃焼がうまく完了せず予定地点まで到達しなかったり、エンジンのうち1基はうまく動作しなかったりといった問題はありましたが、ダミー衛星の放出には成功。
ダミー衛星に搭載されたカメラがStarshipの姿を捉えました。
これにはSpaceXの社員らも喜びを隠しきれません。
そしてStarshipは制御されつつ高度を下げ、着水地点の上空に到達。
制御された着水を試みます。
無事に着水に成功。
最後には予定通り爆発しました。
着水時の映像を確認すると、関係者は喜びを爆発させました。
ミッションチームも抱き合って喜び合います。
マスク氏もご満悦の表情でした。
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