AmazonのスマートドアベルやセキュリティカメラブランドであるRingは、AIによる画像処理やAlexaを用いた応答機能などを搭載した製品を展開しています。そんなRingが訪問者や通行人の顔認識データを無断で収集・利用していることから、「勝手に撮影されて顔認識データにされている人に対して補償するべき」として500万ドル(約8億円)を超える損害賠償を求める集団訴訟が提起されました。
Amazon’s Ring sued over facial recognition feature, latest privacy concern for doorbell maker | Reuters
https://www.reuters.com/legal/government/amazons-ring-sued-over-facial-recognition-feature-latest-privacy-concern-2026-06-02/
Amazon-owned Ring should pay Americans for scanning their faces, lawsuit says – Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2026/06/amazon-owned-ring-should-pay-americans-for-scanning-their-faces-lawsuit-says/
Ringは2025年10月に複数の新製品および新ツールを発表しました。新たなツールの1つに、 AIを用いて登録済みの人物を識別する「Familiar Faces」が登場しています。Familiar Facesにより、知らない人が来たら通知したり、よく知っている人が来たら応答の処理を省いたりすることができます。
このFamiliar Facesが消費者のプライバシーに関する基本概念に違反するとして、バージニア州在住のチャールズ・シグウォルト氏は2026年6月2日にAmazonの本社があるワシントン州西部地区連邦地方裁判所に集団訴訟を提起しました。シグウォルト氏は顔認証を受けた全米の人々を対象とした集団訴訟と、バージニア州住民を対象とした下位集団訴訟を提案しています。
訴状では「Familiar Facesは顔認識技術を用いて、すべての来客や通行人の顔をスキャンし、AIを使って誰であるかを分類します。AIはその後、それぞれの人物の『特徴量(faceprint)』を独自の数値データへ変換します。これにより、Familiar Facesが顔認識を行うたびに、Ringはその人物が誰であるかを再識別できるようになります。Ringカメラの前を通過した何百万人ものアメリカ人が、知らないうちに顔認識システムによるスキャン対象になっているのです。生体認証情報の価値の総体的な損失によって生じた実際の損害に加えて、顔認識データを無断利用された人に支払われるべき法定損害賠償額を計算すると、この訴訟における損害額は500万ドルをはるかに超えます」と述べられています。
アメリカでは州ごとにプライバシーに関する法律が大きく異なるため、Familiar Facesは一部地域でのみ使用できる機能となっています。そのため訴状では「Ringは顔認識機能に関して生体認証プライバシー法を順守する能力を明らかに持っているにもかかわらず、特定の地域に対して意図的に顔認識監視を避けないことを選択している」と指摘しています。なお原告側は、生体認証を直接規制する法律がない州であっても、既存のプライバシー保護法や肖像利用に関する法律に照らして違法性を問えると主張しています。
訴訟ではさらに、バージニア州法違反も主張されています。バージニア州法には「本人の同意なしに商業目的で個人の名前や肖像を商業利用することを禁じる」という条項があり、Amazonは書面による同意なしに写真や生体認証情報といった個人データ、写真、肖像を商業目的で使用することにより、バージニア州法のこの条項に故意に違反したと訴訟では述べられています。その他、Ringカメラの顔認識機能による売上増加にもかかわらず顔認識データとして利用された一般消費者には何ら補償が行われなかったとして、プライバシー侵害に対する金銭的補償と不当利益の返還を原告らは求めています。
Familiar Facesのプライバシーに関する懸念は以前から指摘されていました。デジタルプライバシーや言論の自由を守るために活動している非営利団体の電子フロンティア財団(EFF)は2025年11月に、Ringの顔認識ツールが数百万人の人々のプライバシー権を侵害する可能性があると警告しています。EFFは「Familiar Facesは友人や家族、政治活動家、郵便局員、配達員、クッキーを販売する子供たち、あるいは歩道ですれ違う人など、顔認証に同意していない多くの人々をスキャンするでしょう。Amazonは顧客に適用される法律を順守するよう促すメッセージを送ることで、同意義務の一部を個々のカメラ所有者へ転嫁しようとしています。しかし、Amazonは生体認証データを収集、処理、保存する企業として、数多くの法律の下で独自の同意義務を負う可能性があります。調査を行い、人々のプライバシーを保護し、法律の有効性を検証することを求めます」と語りました。
また、Ringは2025年10月にセキュリティ企業のFlock Safetyとの提携を発表していましたが、「Flock Safetyから当局にRingが撮影した情報が送られるのでは」といった懸念が高まり強い反発を受けていました。反発を受け、2026年2月にRingはFlock Safetyとの提携解消を発表しています。
Amazon Ringが監視に対する反発を受けFlock Safetyとの提携を解消 – GIGAZINE
テクノロジー系メディアのArs TechnicaがAmazonに問い合わせたところ、Amazonは訴訟についてコメントを拒否しています。
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