Microsoftが、Microsoft 365向けの常時稼働型AIエージェント「Microsoft Scout」を発表しました。ScoutはAIエージェントフレームワークである「OpenClaw」の技術を基盤としており、ユーザーが毎回指示を出さなくてもバックグラウンドで作業を進める「Autopilot」という新カテゴリの最初のエージェントとして位置付けられています。
Introducing Microsoft Scout: Your always-on personal agent | Microsoft 365 Blog
https://www.microsoft.com/en-us/microsoft-365/blog/2026/06/02/introducing-microsoft-scout-your-always-on-personal-agent/
Microsoft Scout documentation | Microsoft Learn
https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-scout/
Introducing Microsoft Scout – YouTube

「Autopilots」はMicrosoftが新たに提唱するカテゴリで、ユーザーから毎回指示を受けるのではなく、バックグラウンドで継続的に動作し、ユーザーや組織が設定した権限とポリシーの範囲内で作業を代行するエージェントを指します。従来のAIアシスタントが質問への回答や単発の作業支援を中心としていたのに対し、Scoutはユーザーの優先事項を把握し、仕事の流れを継続的に前へ進めることを狙っています。
今回発表されたScoutはMicrosoft 365の各アプリに統合され、Windows 11以降とmacOS 12 Monterey以降で利用可能。チャットやメール、カレンダー、連絡先といった日々の仕事に関わるデータを扱うことができ、ユーザーはTeams上でScoutとやり取りをします。また、デスクトップアプリを通じてブラウザ、ローカルリソース、MCPサーバーにも処理範囲を広げられるとのこと。
Scoutの中心的な用途は、日々の仕事で発生する調整作業の自動化です。Microsoftは例として、時差をまたぐ会議日程の調整、重要な会議の通知、会議準備に必要な資料の生成、今後の成果物の把握、カレンダー上の作業時間確保、停滞している意思決定の検出などを挙げています。
自律実行の仕組みとしては、15~120分ごとにバックグラウンドで確認を行う「Heartbeat」と、スケジュールまたは条件に応じて独立してタスクを実行する「Automations」が用意されています。さらに、Word、Excel、PowerPointの文書作成・編集、Loop文書のブラウザ自動編集、HTMLダッシュボードや図表を作る「Web Artifacts Builder」などの同梱スキルに加え、SKILL.mdを配置して独自スキルを追加できます。
デスクトップアプリとしてのScoutはローカルファイルの作成、編集、検索にも対応します。WordやExcel、PowerPoint、コードファイルなどを扱えるほか、シェルコマンドの実行、ビルド、テスト、スクリプト処理も可能で、ブラウザ操作にはPlaywrightを用います。
Microsoft 365との連携ではメールやカレンダー、Teamsメッセージ、OneDriveファイル、会議情報を扱えます。例えば、作業中のコードを編集してビルドを実行し、その結果をメールで送り、さらにフォローアップ会議を設定するといった一連の作業を、1つの会話の中で進められるとされています。
Scoutはバックグラウンドでも動作し、ユーザーが定義したスケジュールやトリガーに基づいてタスクを実行できます。また、複雑な作業では、調査やコードレビューなどに特化したサブエージェントを並列に起動し、結果をまとめて報告する機能も備えています。
ScoutはOpenClawのオープンソース技術を基盤としており、MicrosoftはOpenClaw側にも企業向けのセキュリティ確認機能を追加していく方針です。これにより、OpenClawを使う企業は「このエージェントは社内ルールに沿って設定されているか」「許可されていないデータや機能にアクセスできない状態になっているか」を確認し、その結果を監査用の記録として残せるようになります。
Scoutの文脈理解には「Work IQ」が使われます。Work IQはユーザーがどのように働き、何を重視し、次に何を進める必要があるのかを学習する仕組みで、Scoutは時間とともにユーザーの優先事項により沿った支援を行えるようになるとされています。
また、企業利用を前提とした制御も重視されており、Scoutの各エージェントは共有の匿名サービスアカウントではなく、管理されたEntra IDのもとで動作し、作業がどの主体によって行われたのかを組織のディレクトリ上で追跡できるようになっています。資格情報はタスクの範囲に限定され、ログや診断情報からは秘匿されます。さらに、Scoutがアクセスできるのは承認済みのリソースと宛先に限られ、機密性の高い操作では人間の承認を求めることができます。Microsoft Purviewの秘密度ラベルやデータ損失防止ポリシーも、送信や書き込みの前に適用されるとのこと。
Microsoftによると、Microsoft社内ではすでに初期のScoutデスクトップ体験が使われており、その経験を通じて常時稼働型エージェントが実際の業務でどのように調整作業を担い、リスクを早期に浮上させ、継続的に仕事を進めるかを検証しているとのこと。Scoutは記事作成時点で一般提供されておらず、一部顧客のプライベートプレビューとFrontier組織向けに公開範囲を広げている段階。利用にはFrontierへの登録、Intuneポリシーの構成、オプトインの証明が必要で、GitHub Copilotライセンスを持つユーザーであれば体験版をダウンロードしてインストール可能です。また、Work IQ APIは2026年6月16日に一般提供開始される予定です。
また、MicrosoftはScoutそのものとは別に、Windows上でエージェントの動作範囲を制限する「Microsoft Execution Containers(MXC)」も発表しています。MXCはWindowsとWSL上でエージェントの実行範囲をポリシーで制限する仕組みで、OpenClawもWindows上でMXCを利用してノードとゲートウェイを安全に動作させるとされており、MicrosoftはOS、ID管理、ポリシー制御、評価基盤を組み合わせて、AIエージェントを企業環境で扱えるようにする方針を示しています。
さらに、MicrosoftはAIエージェントを安全に評価・制御するための開発者向け基盤として、組織のポリシーや要件からエージェント評価を作るオープンソースフレームワーク「ASSERT」やエージェントの各段階に安全制御を置く「Agent Control Specification(ACS)」を発表しています。Scoutのような自律型エージェントを実験段階から本番運用へ移すための信頼性確保がテーマになっています。
加えてエージェントが外部情報を扱うための基盤として「Web IQ」も発表されています。Web IQは、人間向けの検索結果ではなく、AIエージェントが推論に使う新鮮で関連性が高く、信頼できる情報を低遅延かつトークン効率よく届けるためのシステムで、Microsoftは「MCPネイティブかつモデル非依存の中立的なプラットフォームだ」と説明しています。
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