マフェオ氏は心理学者として、人々がさまざまな経験を解釈する主観についてよく考えるとのこと。「一見すると非日常的な経験にも、ごくありふれた説明が存在するのではないかと疑問に思います。もしかしたら日常的なさまざまな要因が重なりあって、超常現象のような感覚を引き起こすのかもしれません」と述べ、心霊的な現象を引き起こすかもしれない3つの要因を挙げています。
イギリス・エディンバラで行われた実験では、幽霊騒ぎが起きた場所では電磁場の変動が大きいことが示されました。また、ロンドン南西部のハンプトン・コート宮殿で行われた研究でも、幽霊が出るとされている場所では電磁場の変動が大きいことがわかりました。これらの結果は、人々が電磁場などの環境刺激の変化を無意識のうちに感知し、それを幽霊によるものだと解釈している可能性を示唆しています。
2009年の研究では、特別に設計された小部屋の中に被験者を入れて、電磁場などを含む環境要因を変化させてどのように感じたのかを尋ねました。その結果、被験者からはめまいや体から切り離されたような感覚、さらに「何かの存在」を感じたといった回答がありましたが、これらの体験は研究者による電磁場の変化に関係なく発生していたとのこと。興味深いことに、異常な体験を感じたのは超常現象をより強く信じている被験者だったそうです。
マフェオ氏は、「電磁場のような環境要因は超常現象の知覚につながるのでしょうか。一方では、幽霊が出るとされる場所と電磁場の変動との間には相関関係があります。また、人間が磁気を感じ取れることを示唆する証拠もいくつか存在します。しかしもう一方では、実験室環境における電磁場の操作は奇妙な感覚と一致していませんでした」とまとめました。

◆2:神経系の混乱
研究者たちは精神疾患などの治療の一環として、患者の脳に電流を流すことがあります。この際、脳の側頭葉と頭頂葉が接する側頭頭頂接合部という領域に微弱な電流を流すと、被験者から「誰かが近くにいるような感覚がする」「自分の動きをまねしたり模倣したりする誰かがいる」「自分の体から意識が離れる体外離脱を経験した」といった報告が寄せられる場合があるとのこと。
実験的証拠から、側頭頭頂接合部は「自分が体の中に存在している」という感覚にとって極めて重要だと考えられており、この脳領域の機能を阻害すると意識が体から切り離されたように感じるとみられます。神経科学者らは、身体感覚が脳でどのように構築されるのかを完全には解明していませんが、おそらく脳はバランス感覚や位置感覚といったものを、自己意識や主体性といったほかの内部プロセスと統合していると考えられます。この統合が崩れると、人々は奇妙な感覚を経験することになるだろうとマフェオ氏は指摘しています。
神経系の混乱によって生じる体験のひとつに、医学的には睡眠まひと呼ばれる「金縛り」があります。最も鮮明な夢を見るレム睡眠中の脳は体が夢の内容に反応して動いてしまわないように、身体の骨格筋の動きを抑制する信号を送っています。しかし、中にはレム睡眠中に目が覚めて「体が動かない」と気付き、それと同時に夢の影響で鮮明な幻覚を見る人もいます。この時間は決して長くありませんが、骨格筋の動きが抑制されることで身体と脳のフィードバックに不一致が生じ、失われた感覚情報に恐怖を感じて「金縛り」を経験する人もいるというわけです。

◆3:性格特性
幽霊を見たり超常現象に遭遇したりするためには、何かしらの経験を超常現象や幽霊の仕業だと考えなくてはなりません。たとえば、複数の人が同じような電磁場にさらされて奇妙な感覚を経験したとしても、その感覚を「超常現象によるものだ」と考える人もいれば、「何か変な感じがしたけど理由はわからない」と考える人もいます。
近年は、「スキゾタイピー(統合失調症傾向)」と呼ばれる性格特性を持つ人が、超常現象を信じやすい傾向にあると示唆する研究結果が増えています。スキゾタイピーは魔術的な思考やゆがんだ思考、異常な思考、まとまりのない行動などと関連しており、人と親密な関係を築くのが難しい場合があるとのこと。
スキゾタイピーの傾向が強い人は超常現象を信じやすい傾向があり、身体と精神の乖離や外部のトリガーがない状態での自発的な感覚を経験しやすく、自分と他人を区別するのが難しい場合があるそうです。なお、スキゾタイピーはあくまで性格的な傾向であり、その人が統合失調症であるかどうかには関係ありません。

マフェオ氏は一部の人々が幽霊や超常現象に遭遇しやすい理由について、「幽霊や超常現象を信じるかどうか」が重要ではないかと指摘しています。1997年の研究では、アメリカの廃劇場を歩く被験者に「劇場には幽霊が出る」あるいは「劇場は改修中」と伝えた場合、幽霊が出ると言われた被験者だけが超常現象による奇妙な感覚を報告しました。
マフェオ氏は、「超常現象を信じる人が電磁場の自然な変化や睡眠まひを経験したとしましょう。こうした経験は、その人には説明のつかない奇妙な感覚を引き起こします。曖昧さの中に意味を見出そうとするあまり、その人は内的に生じる感覚と外的に生じる感覚の区別を曖昧にしてしまいます。そして自分にとって唯一納得のいく説明、 つまり『自分が経験した奇妙な感覚は幽霊の仕業だった』という結論に落ち着くのです」「信じるだけでは幽霊は生まれないかもしれませんが、信じることに加えて環境的な刺激、神経系の異常、心理的な状態といった幽霊につながる要因が少なくともひとつあれば、幽霊を現実だと感じるのに十分かもしれません」と述べました。