宇宙が終焉を迎えても人は永遠に生き続けることができるのか? – GIGAZINE


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「宇宙の終焉を迎えても生き延びるための抜け道」について、チャンネル登録者数2460万人超のサイエンス系YouTubeチャンネル・Kurzgesagtが解説しています。

We Found a Loophole to Survive the End of the Universe – YouTube


宇宙の終わりの日には、最後の星が死に、銀河は溶解し、ブラックホールは蒸発します。その後、宇宙は永遠に拡大し続け、何も起こらない空虚な空間となります。これは「生命も目的も意味もない、つまらない、憂鬱な場所」であるとKurzgesagtは表現しました。


しかし、物理法則にはすべてのものの死後も生き残る、未来文明の抜け道があるかもしれません。


その抜け道は「永遠にインターネット上で議論を楽しみ続ける」といった類のものかもしれません。


「星よりも長く生き残る方法」


100兆年後の未来、死にゆく宇宙にまだ生き残っている最後の文明が存在したとします。この未来文明は物理の法則を完璧に解き明かし、人類が夢見ることしかできなかったあらゆる物事を実現しているとします。


この未来人が最後の星と共に死に絶えることを望んでおらず、意識を永遠に維持することを計画しているとしたら、そのようなことは可能なのでしょうか。


最初の問題はエネルギーです。文明を維持するには大量の鉱物が必要ですが、宇宙規模で見ればそれほど多いわけではありません。


太陽が放出する全エネルギーを5時間使用すれば、現在の人類に約100億年分の電力を供給することが可能です。


そのため、もしも宇宙終焉の危機が迫る中で未来人がエネルギーを確保しなければいけない状況に迫られれば、最後の星が放出するエネルギーを収集し、故郷の星の周りに巨大なバッテリー複合施設を建設するでしょう。原理的に言えば、このエネルギーは未来人を数百兆年生き続けさせることができるようなエネルギー量であるとKurzgesagtは指摘。ただし、この数百兆年という時間は長い時間ではあるものの、永遠とは言えません。そのため、未来人は生命の本質そのものを変える必要があります。


「氷のように冷たい思考」


生きているということは何かをするということ、たとえば食べること、テレビゲームをすること、考えることなどがそうです。そして、これらを行うにはエネルギーが必要となります。


有名な論文に、「Dyson’s Cold Thoughts(ダイソンの冷たい思考)」と呼ばれる考えがあります。これは、簡単に言えば、体温が低いほど何かをするのに必要なエネルギーが少なくなるという考え方です。


人間の脳はより高い温度で、より多くのエネルギーを必要とします。しかし、絶対零度になると脳は働かなくなってしまいます。


例えば、脳が「面白い帽子を被ろう」といった単純な考えを1秒で思いつくのに20ジュールのエネルギーを必要とするとします。もしも脳がより低い温度で機能するとしたら、摂氏37度で「1秒で20ジュールのエネルギーが必要な思考」は、摂氏マイナス118度では「2秒で10ジュールのエネルギーが必要な思考」に変わります。


寒くなればなるほど思考に必要なエネルギーは少なくなるため、体温が10分の1まで低下すれば、思考には10倍の時間がかかるようになるかもしれませんが、必要とするエネルギーは10分の1まで低下するというわけ。


この「ダイソンの冷たい思考」を用いれば、永遠に生き続けることも可能になるとKurzgesagtは指摘。そのために必要なのは、生体を冷やすことです。ただし、冷蔵庫に入れただけでは低体温症で死んでしまいます。つまり、「脳を冷やして思考に必要なエネルギー量を節約する」というプランを実現するには、肉体は邪魔なわけです。


肉体を捨て、脳を人工の脳に移す必要があるとして、これをネットワークに接続すれば、未来人はデジタル世界で思考だけの存在として生き続けることが可能となるかもしれません。


かなりSF的な話であるため、「そのような絵空事を実現するのに必要な人工脳やコンピューターをどうやって作るのかはわからない」とKurzgesagtは言及しています。それでも100兆年後の未来であるなら、これらのテクノロジーが実現している可能性は十分にあるとのこと。


膨大な量のエネルギーを手に入れ、低燃費の人工脳を作成することに成功したとして、これらでどのようにして永遠に生き続けることができるのでしょうか。「ダイソンの冷たい思考」をベースに考えれば、温度が低くなればなるほど思考に必要なエネルギーは少なくなるため、動作限界ギリギリまで温度を下げれば、限りなく永遠に近い時間生き続けることができる可能性があります。


宇宙で最後の星が死に、宇宙に永遠の暗闇が訪れたタイミングで、未来人は準備してきたバッテリーを起動し、人工脳の冷却を開始して、脳のスイッチをオフにして冬眠を始めます。すると、活動も思考も夢もない状態に入り、人工脳が熱を放射して少しずつ冷えていきます。


十分に冷えたら再び脳の電源をオンにします。すると、冷たい状態なので思考速度は遅くなるものの、思考に必要なエネルギーの量は減るはずです。


人工脳となってからもデジタル世界で活動するタイミングでは脳の電源をオンにし、非活動時には電源をオフにします。電源がオフになれば脳は夢を見ることもなく、完全な無となります。そして、電源がオフになったことで人工脳を冷やすことにもつながるわけです。

温度が摂氏300度から摂氏299度に冷めるには、摂氏100度から摂氏99度に冷めるよりもはるかに短い時間で済みます。そのため、人工脳の温度が下がれば下がるほど、脳を冷ますのに必要な時間、つまり電源をオフにする時間は長くなっていきます。


「ダイソンの冷たい思考」が非常に強力な理由は、そのスケールの広さにあります。電源のオンオフサイクルが100兆年続いたとしても、人工脳の温度は絶対零度よりも高い摂氏マイナス43度程度までしか下がりません。これにより、単純な思考にかかる時間は1秒から1.3秒に伸びます。この状態では「人工の脳の電源をオフにする時間」がなんと40万年に及びますが、人工脳として生き延びた未来人は100兆年が経過するまでに、76兆年に相当する時間を脳の電源をオンにして活動できます。なお、これは記事作成時点での宇宙の年齢の5000倍以上です。


そのため、Kurzgesagtは「死ぬことより恐ろしいのは永遠に生き続けることです」「意識のある存在がそれほど長い時間、生き続けるとして、それにどのように対処するかは全く分かりません」と言及しています。

宇宙が終焉を迎えてから数千兆年が経過すると、かつての恒星の残骸である白色矮星は黄色、オレンジ色、赤色、黒色と変化を続けます。


そして全ての銀河が消滅すると、ブラックホールは激しい爆発と共に蒸発。


それでも未来人は人工脳の中で生き続けることが可能です。ただし、人工脳が冷えすぎてしまっているため、1秒で思考できた単純な考えに、1兆年もの時間がかかるようになってしまっています。そのため、時間の99.9999999999999999997%を電源をオフにした完全に無の状態で過ごすことになってしまっているとのこと。思考にかかる時間が長くなっても、デジタル世界の中で生きる未来人たちの体感時間は変わらず、流動的で活気に満ちています。


4000兆年に相当する時間が経過して、ようやくバッテリー残量が残りわずかとなります。しかし、このタイミングでは人工脳の活動時間はより短くなっているため、ほとんどエネルギーを必要としなくなっています。

このサイクルを繰り返すことで永遠に生き続けられるか否かの重要なポイントは、「宇宙の限界が先に訪れるか、人工脳が絶対零度に到達してしまうか」です。

ダークエネルギーにより最終的に宇宙の温度が絶対零度に限りなく近い温度に達する可能性があり、そうなると人工脳はそれ以上冷えることができなくなり、バッテリーも切れ始めます。また、そのころには宇宙の量子ノイズが人工脳を破壊するかもしれません。陽子崩壊により、全ての原子が破壊される可能性もあります。


それでも終わりを迎えるまでに、人工脳は2澗年もの時を過ごすことができるそうです。

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