「私がワールドワイドウェブを無料で提供した理由」をティム・バーナーズ=リーが記す – GIGAZINE


メモ


イギリスの計算機科学者でありワールドワイドウェブ(WWW)の発明者として知られるティム・バーナーズ=リー氏が、「私がWWWを無料で提供した理由」について語り、現代のウェブにおける問題点を指摘しました。

Why I gave the world wide web away for free | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2025/sep/28/why-i-gave-the-world-wide-web-away-for-free


バーナーズ=リー氏がWWWのアイデアを思いついたのは34歳の頃であり、会議で提案したり、ホワイトボードにスケッチを残したり、友人とスキーに興じる際に雪の上に図を描いたりと、さまざまな機会でアイデアについて語ったとのこと。そして、当時勤務していた欧州原子核研究機構(CERN)の上司に開発の許可を嘆願し、インターネットとハイパーテキストを組み合わせたWWWを実現しました。

WWWを開発した理由について、バーナーズ=リー氏は「ユーザーにインターネットをこのようにシンプルに操作する方法を提供することで、世界規模で創造性とコラボレーションが生まれると信じていました。ウェブに何でも載せられるようになれば、しばらくするとあらゆるものが載るでしょう」と述べています。

WWWが機能する上で大切だったのは、「誰もが利用することができ、そして使いたいと思うこと」だったとのこと。ただでさえ難しいこの理想を実現するためには、検索やアップロードごとに料金を請求するわけにはいかず、WWWを成功させるには無料である必要がありました。1993年、バーナーズ=リー氏はCERNの上司らを説得し、WWWの知的財産をパブリックドメインに寄付してもらい、WWWをすべての人々に開放しました。


バーナーズ=リー氏は、今日のウェブにおいてもはや自由は存在せず、少数の大規模プラットフォームがユーザーの個人データを収集して商業ブローカーや抑圧的な政府と共有し、10代の若者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすアルゴリズムが偏在していると指摘。バーナーズ=リー氏は、「サービスの利用と引き換えに個人データを売買することは、私が描く自由なウェブのビジョンとは全く相容れません」と主張しています。

すでに多くのプラットフォームにおいて、人々はもはや単なる顧客ではなく「商品」となっています。ユーザーのデータは匿名化されているにしても不特定の第三者に売られ、コンテンツや広告のターゲットにされており、これには現実世界の暴力を扇動したり誤情報を拡散したりする有害なものも含まれているとのこと。

そこで、バーナーズ=リー氏らは10年以上前にマサチューセッツ工科大学で、ユーザーが自分のデータを自分で管理できるようにするオープンソースの標準規格「Solid(ソーシャルリンクデータの略)」を開発しました。Solidではユーザーデータを一カ所に集約してユーザー自身が管理でき、Solid上で動作するアプリはユーザーにデータを要求し、ユーザーはそれに同意するかどうかを選択する仕組みです。

Solidではスマートウォッチの生体情報やクレジットカードに紐付く財務データ、YouTubeやRedditへのコメント、FacebookやXへの投稿などをまとめて保存します。バーナーズ=リー氏は、「行動、選択、体、好み、決断など、これらすべてのデータはあなた自身が生成するものです。あなたはそれを所有するべきであり、それによって力を得るべきです」と述べました。


バーナーズ=リー氏は、自らがWWWを無料で提供しようと決意した「Web 1.0」に対するビジョンと、ソーシャルメディアが台頭する「Web 2.0」の間で、世界は間違った方向に進んでしまったと主張。AIが台頭する記事作成時点で世界は新たな岐路に立っており、過去の過ちに学んでAIのガバナンスモデルを決定するための行動を起こすべきだとしています。

2017年、バーナーズ=リー氏は人々のために働くAI「チャーリー」についての思考実験を発表し、その中で医者や弁護士のように法律や規制に縛られつつ、人々のために働くAIについて描写しました。これと同じ枠組みをAIに適用することで、独占的な企業に権力を集中させることなく、人々にとって有用なAIを実現できるとのこと。

バーナーズ=リー氏は、「私はWWWを無料で提供しました。なぜなら、ウェブはすべての人にとって機能して、初めて機能するものだと信じていたからです。今日、私はその考えがかつてないほど真実であると信じています。規制とグローバルガバナンスは技術的には実現可能ですが、政治的な意志に大きく依存しています。もし私たちがその意志を結集できれば、ウェブを文化の境界を越えた協働、創造性、そして思いやりのためのツールとして復活させるチャンスがあります。私たちは個人に再び力を与え、ウェブを取り戻すことができるのです。まだ遅くはありません」と述べました。

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