Googleが「オープンウェブは急速に衰退している」と語る、その真意とは? – GIGAZINE


アメリカの司法省がGoogleを独占禁止法違反で訴えた裁判で、Googleは裁判所に提出した意見書の中で「オープンウェブはすでに急速に衰退している」と述べていたことがわかりました。

Google Memorandum Ad Tech | DocumentCloud
https://www.documentcloud.org/documents/26086105-google-memorandum-ad-tech/

この裁判は2020年10月に司法省が「検索及び検索広告市場において、反競争的で排他的な慣行を通じた独占状態を違法に維持している」と主張し、Googleを訴えたものです。2024年8月、コロンビア特別区連邦地方裁判所のアミット・P・メータ判事は「Googleの行為は一般検索サービスおよび一般検索テキスト広告の独占にあたる」という判決を下しています。

Googleが金銭を支払ってスマートフォン検索の地位を維持しているのは独占禁止法違反と連邦判事が判断 – GIGAZINE


司法省はGoogleへの是正措置案として、Chromeの売却・AndroidからのGoogle検索とGoogle Playの切り離し・検索データのライセンス供与を要求。しかし、メータ判事は検索データの公開や自社サービスの独占契約禁止は認めたものの、「GoogleはChromeを売却する必要がない」とする判断を2025年9月に下しました。

「GoogleはChromeを売却する必要がない」との判決、ただし自社サービスの独占契約は禁止&AI検索の未来を見据えて競合他社へのデータ共有を義務化へ – GIGAZINE


Googleは、裁判所に提出した是正措置案に関する意見書の中で、以下のように主張しています。

「原告(司法省)側は2023年1月に提出した訴状で提示したものと本質的に同じ事業分割案を進め続けていますが、その間にも世界は変化し続けています。原告側は、まるで裁判や裁判所の責任判決、救済措置に関する証拠開示がなかったかのように、またこの司法手続きが続く間、信じられないほどダイナミックな広告技術のエコシステムが静止していたかのように、是正措置を提案しています」

「しかし、変化は多岐にわたります。AIはあらゆるレベルで広告技術を再構築しています。スマートTVやリテールメディアのような、オープンウェブではないディスプレイ広告フォーマットの人気が爆発的に高まっています。そして、Googleの競合他社はこれらの新しい成長分野に投資を向けています。今日の事実として、オープンウェブはすでに急速に衰退しており、原告が提案する事業分割案は、その衰退を加速させるだけであり、オープンウェブのディスプレイ広告収入に依存しているサイト運営者に損害を与えることになります。法律が明確に示しているように、裁判所が最後に行うべきことは、すでに市場の力によって再構築されつつある業界を、さらに作り変えるために介入することです」

IT系ニュースメディアのThe VergeはGoogleの声明について、Googleがこれまで一般に向けて発信してきた内容と「著しく矛盾している」と指摘しています。

Google admits the open web is in ‘rapid decline’ | The Verge
https://www.theverge.com/news/773928/google-open-web-rapid-decline


The Vergeは、Googleがここ数ヶ月間「ウェブは繁栄している」と主張し、AIがトラフィックを減少させていることを否定してきたと指摘。また、Googleのスンダー・ピチャイCEOや他の幹部が、AI検索ツールの導入後も「ウェブは繁栄している」と発言していたことに注目し、Googleが法廷で自らをより弱く、独占的でないように見せる明確な動機があると分析しました。

さらにThe Vergeは、Googleの主張が法廷戦略である可能性に触れつつも、その内容は「多くのサイト運営者が経験している現実を反映している」とも述べ、Google検索のアルゴリズム変更やAIチャットボットの台頭により、多くのデジタルメディアや個人サイト運営者がトラフィックの減少を報告しているという現実を指摘しました。

実際に、調査会社の分析により、Google検索からニュースサイトへアクセスする人の数が激減しており、「AIによる概要」の導入でさらに減るだろうという見方もあります。

Google検索からニュースサイトへのトラフィックが激減し「AIによる概要」の導入でさらなる危機が訪れるとの指摘 – GIGAZINE


Googleの広報担当者はThe Vergeに対して、「この声明はGoogleの法的書類を恣意(しい)的に抜粋したものであり、誤解を招くものです。前段落からわかるように、私たちが言及しているのは『オープンウェブ・ディスプレイ広告』のことであり、オープンウェブ全体の話ではありません」と述べ、The Vergeの見解を否定しました。

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