ゲームやマンガなどを銀行やクレジットカード会社が勝手に規制するのをやめさせる「公正な銀行アクセス法」案とは? – GIGAZINE


メモ


オンラインでのデジタルコンテンツ販売においてクレジットカードは重要な決済手段ですが、VisaやMastercardなどの決済カードネットワークが性的や暴力的な内容を含むコンテンツを配信するプラットフォームに圧力をかけて規制を強制したことが問題となり、日本だけではなく海外でも批判の声が上がっています。こうした流れの中で、2025年2月に提出された「Fair Access to Banking Act(公正な銀行取引へのアクセス法)」案について、インターネットにおける権利保障を訴える団体・U.S. Internet Preservation Society(USIPS)が解説をしています。

Fair Access to Banking | USIPS
https://usips.org/blog/2025/07/fair-access-to-banking/

S.401 – 119th Congress (2025-2026): Fair Access to Banking Act | Congress.gov | Library of Congress
https://www.congress.gov/bill/119th-congress/senate-bill/401

2025年7月中旬、反ポルノ団体・Collective Shoutが、VisaやPayPal、Mastercardなどの決済プラットフォームに対して「SteamやItch.ioでは過激なアダルトゲームが配信されている」と批判したことを受けて、SteamやItch.ioで突如大量のアダルトゲームがプラットフォーム上から削除されました。しかし、明確にどういった種類のアダルトゲームが規制の対象となるかは明記されておらず、決済プラットフォームがノーと言えばすべてのコンテンツが配信不能になってしまうとして、ゲーマーからは不満の声が上がっています。

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日本でも以前からDLSiteやFANZAなどに対し、一部のクレジットカードブランドが利用不可になったり、一部の表現に対して規制が強化されたりといったケースが相次ぎ、「決済カードネットワークによる表現の自由の侵害ではないか」という指摘がありました。また、今回の件に限らず、海外では以前からポルトサイトへの圧力があったと報じられており、「アダルト産業を実質的に規制しているのは決済カードネットワークである」という批判もありました。

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これらの決済カードネットワークへの批判を受けて提出されたのが、「公正な銀行取引へのアクセス法」案です。USIPSは「決済カードネットワークは、あなたが何を閲覧し、何を購入できるかという新たな裁定者になりつつあります。これらの巨大金融企業がサービス提供の停止をちらつかせることで、有名デジタルストアは成人向けゲームを含む数百もの合法商品を削除せざるを得なくなりました。これは、選挙で選ばれてもいない少数の役員幹部が、自由な商取引と表現に対する強大な支配力を持つことを意味します」と述べています。

公正な銀行取引へのアクセス法案は、主に総資産が100億ドル(約1兆5000億円)を超える大手銀行や信用組合、そしてVisaやMastercardのような決済カードネットワークを対象としています。これらの金融機関に対し、法案は提供する金融サービスを、その地理的市場内で事業を行うすべての人々に対して、差別なく比例的に平等な条件で提供することを義務付けています。これにより、特定の業種や個人が不当に排除されることを防ぎます。

法案では、サービス提供の拒否に関して厳格な条件が設けられています。金融機関がサービスを拒否できるのは、その個人や事業者が金融機関によって事前に設定された「定量的で公平なリスク基準」を満たさない場合のみに限定されます。特に、政治的信条や、物議を醸す事業であることによる「評判上のリスク」のみを理由としてサービスを拒否することは認められません。また、サービスを拒否する際には、その具体的な根拠を本人に対して書面で説明する義務が課されます。


さらに、違反した金融機関に対しても厳しい罰則が科されています。法律に違反した銀行や信用組合は、連邦準備制度の割引窓口貸付プログラムや、銀行間の送金に不可欠な自動資金決済システム(ACH)ネットワークの利用を禁止される可能性があります。これは金融機関の運営に致命的な影響を与えるため、法律を遵守する強い動機付けとなるとのこと。

ただし、決済カードネットワークに対する罰則は、通貨監督庁(OCC)が1回の違反につき最大1万ドル(約150万円)の民事罰を科すにとどまっています。USIPSは、特に問題の大きい決済カードネットワークに対しての実効性が低く、抑止力として不十分である点を問題視しました。

そして、この法案は被害者の権利保護にも重点を置いています。法案に違反した銀行や信用組合によって損害を被った個人や事業者は、行政上の救済手続きをすべて終えるのを待たずして、直接連邦地方裁判所に民事訴訟を提起することが可能です。そして、裁判で勝訴した場合、被害者は合理的な弁護士費用と訴訟費用に加え、損害額の3倍にあたる懲罰的損害賠償を受け取ることができます。


USIPSは、公正な銀行取引へのアクセス法案が銀行や信用組合に対しては有効な抑止力を持つと評価しています。一方で、近年オンラインでの商取引停止などで問題の中心となっている決済カードネットワークに対する罰則が非常に弱く、このままでは現状を打破できないと指摘。USIPSは、決済カードネットワークに対しても被害者が直接訴訟を起こせるようにするなど、より強力な措置を盛り込むべきだと主張しました。

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