物語の重要なシーンや謎を「ネタバレ」されるのは、自分で見て作品を楽しみたい人からしたら絶対に避けたいところです。一方で、「作品を見る前にネタバレを知りたい」という人もおり、実際にネタバレレビューにより映画の興行収入が高くなることを示した研究もあります。なぜネタバレを恐れる人と逆にネタバレを求める人がいるのかについて、オーストラリアのセントラルクイーンズランド大学でヒューマンファクターの研究をするアンジュム・ナウィード氏が解説しています。
ナウィード氏は「ネタバレ」の範囲について、2014年のネタバレに関する研究を引用しつつ、「物語の結末に関する望ましくない情報」と定義しています。登場人物の基本的な情報や物語の導入はあらかじめ見せておくことで作品の魅力を伝えることができますが、登場人物が抱える秘密や物語のオチはあらかじめ知ってしまうと作品を見る意欲が低下してしまう可能性があります。
ネタバレを嫌う人はSNSで関連の話題を見ないようにしたり、その作品について話す人たちから遠ざかったりするはず。また、制作側もネタバレを避けるために、台本の流出や撮影しているところを見られることでネタバレが口コミやSNSで広がってしまわないよう、特殊な台本を使ったり盗撮を防ぐ環境にコストを費やしたりと、徹底したネタバレ対策をしています。
2014年にオランダで行われた研究では、ネタバレのない物語を鑑賞した視聴者は、より大きな感情的興奮と楽しさを体験することが示されました。研究によると、ネタバレは私たちのストーリーの「メンタルモデル」を補完し、物語への没頭、出来事の理解、展開する物語の味わいといった意欲を減退させる可能性があるとのこと。
一方で、短編小説やミステリー小説、映画などを対象とした2016年の研究では、ネタバレを経験した参加者はネタバレを避けた参加者と比べてほとんど変わらない高い満足度を報告していることがわかりました。この研究では、人々は物語を楽しむ際に展開や結末を「予測」し、実際の展開と予測との「心理的距離」がどれだけ離れているかによって、物語を楽しむ感覚が生まれると考えました。ネタバレを嫌がる人がいるのは、展開を知ってしまうと予測が実際の展開と近づくため、ネタバレによって物語体験が損なわれるという考え方です。しかし、研究ではネタバレを知った上でも人々は「どんな感じでネタバレのシーンが出るか」と予測し、その予測とギャップがある際に物語を楽しむため、ネタバレが体験の質を必ずしも低下させるとは限らないとの実験結果が示されました。
また、アメリカのメディア心理学の先駆者として知られるドルフ・ジルマン氏は、「サスペンス」というジャンルについて、「緊張と興奮を生み出すが、結末がうまくいったときに初めてその緊張を楽しめます」と語りました。そのため、物語の結末でスリルを解決するオチが見られることで初めて「スリルも含めて楽しかった」と感じる人が多く、ネタバレを知りたいという心理は、結末で失敗することで物語全体が楽しくなくなる作品を避けるためである可能性をナウィード氏は指摘しています。
そのほか、2009年にドラマシリーズの「LOST」を対象に行われた研究(PDFファイル)では、エピソードの結末を調べたファンは、そのエピソードをより楽しんだことが判明しました。研究者らはこれを、「ネタバレによって、認知的な『プレッシャー』が軽減されたことで、物語にじっくりと浸る余裕が生まれたため」と結論付けています。

過去の研究で見られるように、ネタバレを極端に嫌がる人がいる一方で、ネタバレを見ても物語の体験が損なわれないという実験結果や、むしろ物語を見る前にネタバレを求める人もいます。このような差が生まれる原因として、「どのように物語を体験するか」という点があるとナウィード氏は述べています。
ネタバレを回避したいと思う人は、物語に感情移入を求めている傾向にあります。例えば、物語が展開するにつれてその展開にどう向き合うかというのが受け手にとって精神的な挑戦となり、物語がうまく収束していくのを見ることが喜びにつながります。このような場合、重要なネタバレを知ることで挑戦の意義が薄れてしまうため、物語体験が大きく損なわれることになります。
一方で、ネタバレを求める人は、物語の展開から受ける「恐怖」反応を避けるため、あらかじめ結末を知っておきたいという心理になっている可能性があります。心理学者のジョアン・カンター氏はこれを「非認知的脱感情戦略」と呼んで、メディアに対する防衛反応だと表現しました。
ナウィード氏は「驚きだけでは何かを面白く、そして夢中になれるものにすることはできないのかもしれません。旅に終わりがあるのは良いことですが、結局のところ、大切なのは旅そのものなのです」と述べ、ネタバレを気にするかどうかは人それぞれの感性であり、物語を楽しむ体験自体に価値があると語っています。
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