AIモデルは温室効果ガス・水・エネルギーなど環境にどれぐらい影響を与えるかの詳細をMistral AIが初公開 – GIGAZINE


Mistral AIは2025年7月22日、AIが環境に与える影響についての包括的な調査結果を発表しました。この取り組みはAIの環境フットプリントを定量的に分析し、業界全体の透明性を高める新たな基準を設けることを目的としたもので、フランスのコンサルタント企業であるCarbone 4およびフランス環境・エネルギー管理庁(ADEME)と共同で実施され、さらに専門コンサルタント起業による査読を受けています。

Our contribution to a global environmental standard for AI | Mistral AI
https://mistral.ai/news/our-contribution-to-a-global-environmental-standard-for-ai

この調査はMistral AIの最も大きなモデル「Mistral Large 2」を対象としています。報告によると、2025年1月までの18カ月間の使用を通じて、モデルのトレーニング段階で生じた環境負荷は、温室効果ガス排出量がCO2換算で20.4kt、水消費量が28万1000m3、そして資源の枯渇を示す指標がアンチモン換算で660kgに達しました。


一方で、AIアシスタント「Le Chat」を利用して、約1ページ分のテキストに当たる400トークンを生成する際の追加的な影響は、1回の応答生成あたりの温室効果ガス排出量が1.14gでした。これはアメリカのユーザーが動画ストリーミングを10秒間視聴する量に相当します。また、水消費量は約50mLで、これはちょうど小さな大根を1つ育てる量と同等だとのこと。そして、資源枯渇への影響は2ユーロ硬貨1枚を製造するのと同じくらいで、アンチモン換算で約0.2mgでした。


ライフサイクル全体で見た場合、環境負荷の大部分は特定の段階に集中していました。温室効果ガス排出の85.5%と水消費の91%は、「モデルのトレーニングと推論」におけるサーバーや関連機器の電力・水使用に起因していたとのこと。一方で材料の消費に関しては、サーバーの製造、輸送、廃棄を含む「ハードウェアの具体化された影響」が全体の61%を占めており、AIインフラそのものが持つ環境負荷の大きさを示しています。

Mistral AIはこの調査から、モデルのサイズと環境フットプリントには強い相関関係があると結論付けており、ユーザーが用途に適したサイズのモデルを選択することが環境負荷の軽減に繋がると強調しています。Mistral AIは今後、AI企業が標準化された枠組みで環境影響を報告すること、そして利用者がより効率的な方法でAIを活用することを提唱しており、将来的にも環境影響報告を更新し、国際的な基準策定の議論に貢献していくとしています。

ブロガーで開発者のサイモン・ウィルソン氏は、自身のブログでMistral AIの発表を評価しつつ、いくつかの課題を指摘しています。

Our contribution to a global environmental standard for AI
https://simonwillison.net/2025/Jul/22/mistral-environmental-standard/


ウィルソン氏は、Mistral AIがMistral Large 2の環境影響に関する数値を、他の主要なAI研究所よりも詳細に公表した点を称賛しています。また、フランスの政府機関や専門コンサルタントが関与し、査読も経ていることから、その方法論は信頼性が高いと述べました。

一方でウィルソン氏は、「モデルのトレーニングと推論」に関する環境負荷の数値が合算されてしまっている点が不満だとしています。AIのエネルギー消費に関する議論では、トレーニングと推論のコストの内訳が常に重要な論点となるため、このデータを分けて示すべきだったと指摘。さらに、20.4ktという温室効果ガスの排出量が具体的にどのような規模感なのかを理解するのは難しく、文脈の中で説明されるべきだったとの考えを示しました。

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