世界中で平均寿命が延びて高齢化が進む中、認知機能を維持することの重要性がかつてないほど高まっています。新たな研究では、「高学歴の人は夜型生活による認知機能低下のリスクが高い可能性がある」という結果が示されました。
Chronotype as a potential risk factor for cognitive decline: The mediating role of sleep quality and health behaviours in a 10-year follow-up study – ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S227458072500113X
Night Owls May Be at Higher Risk of Cognitive Decline. Here’s Why. : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/night-owls-may-be-at-higher-risk-of-cognitive-decline-heres-why
自分の生活リズムが早寝早起きの「朝型」なのか、それとも遅寝遅起きの「夜型」なのかは現代社会において重要です。時には、仕事の開始時間や子育てのスケジュールといった社会的要求が、自身の生活リズムと一致しないこともあります。その結果、社会的要求が多い平日とそれらの要求が少ない休日にずれが生じるソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)につながる可能性があります。
24時間周期で生理現象を調節する概日リズムの乱れは、認知症と関連付けられています。そこでオランダのフローニンゲン大学の研究チームは、オランダの公衆衛生研究データベースに登録されている2万3798人のデータを分析しました。
研究チームは40歳以上の被験者の睡眠習慣を平均10年にわたって追跡し、非言語的な認知能力を評価するRuff Figural Fluency Test(RFFT)という認知テストスコアの変化を比較。睡眠習慣と認知機能低下との関連性について、年齢・学歴・教育といった関連要因による影響を調べました。
被験者のうち、オランダの教育制度で大学か高等教育機関を卒業した「高学歴群」の割合は32.8%、おおよそ日本の高校卒業に相当する「中学歴群」は38.5%、中学校卒業かそれ以下に相当する「低学歴群」は28.8%でした。
低学歴群は中・高学歴群と比較して若干年齢が高く、喫煙者および禁酒者が多く、身体活動レベルが高かったことが報告されています。一方、高学歴郡は男性が多く、軽度および重度のアルコール障害を持っている割合が高かったとのことです。ベースラインとなるRFFTスコア(0~175)の平均値は高学歴群が「90.3」、中学歴群が「82.0」、低学歴群が「73.4」でした。
RFFTスコアの変化と睡眠習慣の関係を分析した結果、低・中学歴群では睡眠習慣とRFFTスコアの変化に有意な関連性はみられませんでした。一方、高学歴群では生活リズムが1時間夜型にずれるごとに、10年後のRFFTスコアが「0.80」低下する傾向がみられました。
高学歴群における睡眠習慣とRFFTスコア低下の関連性のうち、13.52%が睡眠の質によって、18.64%が現在の喫煙習慣によってそれぞれ部分的に媒介されていました。一方、身体活動や過去の喫煙習慣、アルコール摂取などは、睡眠習慣とRFFTスコア低下の関連性を説明しませんでした。
高学歴で夜型の人の認知機能が低下しやすい理由としては、「高学歴の人は勤務時間が9時~17時などに固定化されている仕事に就く割合が高く、夜更かししても早起きしなくてはならないため」などが考えられます。また、もともとの認知レベルが高いため認知機能低下が顕著になる可能性や、研究サンプルに朝型の人が少なかったことが影響した可能性もあるとのことです。
研究チームは、「私たちの研究結果は、高学歴で夜型のクロノタイプを持つ被験者は、より大きな認知機能低下を経験することを示唆しています」「10年間の追跡調査において、高学歴群においてクロノタイプが1時間夜型になるごとに、認知機能が0.80ポイント低下することを発見しました。クロノタイプの最小値と最大値の差が9時間であるため、最も極端な夜型の人では、RFFTスコアが最大7.2ポイント低下することが見込まれます」と述べました。
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