DeepSeek・Baidu・Alibabaなどの中国企業がAIモデルをオープンソースにしているのは「アメリカの規制を回避するため」 – GIGAZINE


中国のAI企業・DeepSeekは2025年1月に、OpenAIのモデルに匹敵する推論モデル「DeepSeek R1」をオープンウェイトで公開し、欧米のAI研究者を驚かせました。その後も中国のAI企業が相次いでオープンなAIモデルを市場に投入していますが、これにはアメリカの規制をかいくぐる狙いがあると、経済紙のFinancial Timesが指摘しています。

Why China is suddenly flooding the market with powerful AI models
https://www.ft.com/content/13df6250-dffb-40fc-bb79-309764fa3905


これまでのところ、OpenAI・Google DeepMind・AnthropicといったアメリカのAI企業のほとんどはAIを独占的なリソースとして扱っており、最も高度なモデルへのフルアクセスを制限し、有料サブスクリプションや法人向けプランを通じて限定的に提供しています。

また、アメリカ政府はオープンソースAIをセキュリティ上のリスクとみなし、規制されていないモデルがサイバー攻撃に流用されることを危惧しており、アメリカ議会は既に国家安全保障上の懸念を理由にDeepSeekのAIを政府のデバイスに導入するのを禁止することを提案しています。

反DeepSeekの超党派法案「政府デバイスでのDeepSeek禁止法案」がアメリカ議会下院に提出される – GIGAZINE


こうしたアメリカ側の姿勢とは対照的に、中国のAI企業はオープンなAIを矢継ぎ早に公開しています。これについてFinancial Timesは「AIをオープンソース化することで、中国はアメリカの制裁を出し抜けるだけでなく、開発を分散化し、世界中の人材を活用してモデルを改良できます。他の国々が代替ハードウェアで中国のモデルをトレーニングし、改良すれば、NVIDIAの高性能チップに対する規制すらさほど障害にはならなくなります」と指摘しました。

AIの進歩には継続的な改良が必要ですが、クローズドモデルのAIを開発している企業は改善や最適化に関する研究を自社だけで行わなければなりません。これに対し、オープンモデルのAIは世界中の開発者がこぞって研究するので、中国のAI企業はモデルを誰でも無料でダウンロードして使用できるようにしているというわけです。

この戦略には、アメリカが構築しているAIエコシステムを根本から揺るがすという狙いもあります。無料で使えるAIが独自モデルと同じくらい強力になれば、アメリカのAI企業が提供する独自モデルに高い料金を支払う人はいなくなるからです。

こうした動きを察知してか、NVIDIAの主要な競合他社であるAMDのリサ・スーCEOは2025年3月18日に中国を訪問し、自社製チップがDeepSeekのAIモデルやAlibabaのQwenシリーズと互換性があることをアピールしています。

AMD CEO Lisa Su visits China, touting AI chip compatibility with DeepSeek, Alibaba models | South China Morning Post
https://www.scmp.com/tech/big-tech/article/3302895/amd-ceo-lisa-su-visits-china-touting-ai-chip-compatibility-deepseek-alibaba-models


もっとも、無料で使える優秀なAIの普及により収益が危うくなるのは中国企業も同様なので、このアプローチはリスクを伴う捨て身の戦法でもあります。また、中国政府が誤情報の抑制や国家政策の順守を口実により厳しくAIを規制し始める可能性もあるので、AIをオープンにし続けるアプローチがいつまで続けられるかはわかりません。

Financial Timesは「このタイミングでオープンソースAIが市場に氾濫しているのは偶然ではなく、閉ざされつつあるチャンスへの反応です。トランプ大統領の下でアメリカのチップとAI技術に対する輸出規制が強化され、独自モデルが定着しつつある中、中国にとって最善の策は真っ向勝負ではなく、AI市場を無料のAIであふれさせてアメリカの勝利を無意味にすることなのです」と結論付けました。

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