化学に基づく「究極のレシピ」を掲載するウェブサイトがAbsurdly Optimizedです。Absurdly Optimizedの運営者であり、掲載されているレシピの考案者でもあるベンさんが、「極限まで最適化されたパンケーキのレシピ」を公開しました。
The Absurdly Optimized Pancake: Leavening Chemistry, Acid-Base Stoichiometry, and an Interactive Calculator | Absurdly Optimized
https://www.absurdlyoptimized.com/recipes/pancakes/
ベンさんは25年間パンケーキを作り続けており、同氏にとってパンケーキは「初めて覚えた料理」だそうです。ベンさんは当初、「Pancakes: From Morning to Midnight」というレシピ本に載っているパンケーキを20年近くレシピに忠実に作り続けてきたものの、J・ケンジ・ロペス・アルト氏のバターミルクパンケーキのレシピに出会い、それ以降はこのレシピを忠実に再現してきたと語っています。
しかし、バターミルクパンケーキのレシピではバターミルクというあまり一般的ではない材料を使う必要がある点、そして材料の重量ではなく不正確なカップの計量がレシピに書かれている点に不満を抱いていたそうです。
そこで、ベンさんはパンケーキの基本原理から「極限まで最適化されたパンケーキのレシピ」を考案しています。ベンさんによるとパンケーキの品質にとって重要な要素は4つあり、それは「内側の食感」「酸味」「ふくらみと構造」「外側がカリっと焼けていること」だそうです。
それぞれの特徴は以下の通り。
・内側の食感
パンケーキの内側は軽くてカスタードのような食感であるべきとベンさんは主張しており、ずっしりとしたパンのような食感はもってのほかとのこと。内側の食感は膨張剤・タンパク質・水分量によって決まります。ベンさんは「かまなければいけないパンケーキはその役割を果たせていない」と述べ、固いパンケーキを一蹴しています。
・酸味
味の薄いパンケーキはメープルシロップを引き立てる媒体のようなものです。美味しいパンケーキは意図的に中和せず残した乳酸とクエン酸による独特の酸味があり、これは化学量論的な判断であるとベンさんは主張。利用可能な酸のうち、どれだけを重曹で消費し、どれだけを残しておくかが酸味に大きく影響をおよぼすとのこと。
・ふくらみと構造
パンケーキはケーキのような厚みではなく、高さのある仕上がりになるべきとベンさんは主張しており、それには「ベーキングパウダー」「重曹と酸の反応」「高水分材料から発生する蒸気」「泡立てた卵白」が影響します。これらはそれぞれ異なる時間スケールで作用するため、それぞれが独立して効果を発揮するそうです。
・外側がカリっと焼けていること
薄いメイラード反応で茶色に焼けた表面が、食感のコントラストを生みます。これには表面温度が140度以上、還元糖・アミノ酸・澄ましバターで表面を急速に脱水するマイクロフライゾーンを形成する必要があります。カリっとした食感はコーンスターチではなくメイラード反応でできたクラストと、澄ましバターで揚げた縁から生まれます。アミロースはもろくてガラスのような殻を作りますが、少量を超えるとパンケーキのクラストというよりも、人工的な揚げ衣のような食感になってしまうため、今回のレシピではそうならないよう工夫が施されているとのこと。
なお、ほとんどのレシピはこれらの4つの要素のうち1つに最適化しただけで、他の3つを無視したものになっているそうです。しかし、ベンさん考案の「極限まで最適化されたパンケーキのレシピ」は4つの要素を最大限重視したレシピになっているとのこと。
ベンさんの考案した「極限まで最適化されたパンケーキのレシピ」は以下の通り。レシピで2人前のパンケーキが作れます。
◆材料
小麦粉:162g
インスタントイースト:0.49g
砂糖:18.9g
無脂肪粉乳:7.29g
塩:0.81~2.43g
全乳リコッタチーズ:200g
サワークリーム:50g
ケフィア:217g
レモン:1個
バター:33.8g
メープルシロップ:適量
卵(Lサイズ):2個
酒石酸カリウム(クリームオブタータ):0.4g
バニラエキス:4.2g
新鮮なレモン果汁:17.5g
ベーキングパウダー(アルミニウムフリー):12.9g
未精製のバークシャー豚の脂身の塊あるいは澄ましバター:適量
ブルーベリー(好みで):約126g
◆レシピ
1:小麦粉・インスタントイースト・砂糖・無脂肪粉乳・塩を大きなボウルに入れて混ぜる。
2:全乳リコッタチーズ・サワークリーム・ケフィア・レモンの皮を滑らかになるまで混ぜ合わせる。リコッタチーズやサワークリームをほぐすために電動ミキサーを使うのがオススメ。
3:2に1を注ぎ入れ、10~12回軽く混ぜ合わせ、全体を混ぜ合わせます。多少のだまができてもOK。混ぜ合わせたらフタをして涼しい室温(20度)で約10時間放置。12時間以上置くと発酵し過ぎて酸っぱくなるので注意。
4:バターを小さめのフライパンか電子レンジで溶かし、フライパンの予熱を始めます。鋳鉄製のフライパンが最適で、加熱時間は中弱火で8~10分程度。炭素鋼製のフライパンで、中弱火で5~7分加熱でもOK。このタイミングでパンケーキを盛り付けるお皿と、トッピングのメープルシロップを90度のオーブンで温めておきます。
5:卵を卵黄と白身に分け、清潔で乾いた電動ミキサーで卵白をかき混ぜます。これにクリームオブタータを加え、中程度の固さの角が立つまで泡立てます。
6:溶かしバター、卵黄、バニラエキス、新鮮なレモン果汁を3に手で優しく混ぜ合わせ、全体を混ぜます。少しだまが残っていてもOK。
7:鋳鉄製のフライパンが150度になったら、6にベーキングパウダーをふるいにかけながら優しく混ぜ込む。
8:7に5(卵白)を混ぜ込む。卵白はまず1/4を混ぜ、その後、残りを優しく混ぜ込みます。混ぜ込んだパンケーキの生地はできるだけ多く、フライパンで同時に焼きます。
9:熱したフライパンに未精製のバークシャー豚の脂身の塊、あるいは澄ましバターを入れ、油脂が溶けてキラキラしてきたら、直径13cmの円形に約105mlずつパンケーキの生地を流し入れます。焼いている間に生地は厚さ約1.4cmまで膨らみます。ブルーベリーを使う場合、生地を流しいれたタイミングで3.9cm間隔でブルーベリーを散らします。
10:パンケーキの生地はフライパンにフタをした状態で片面を3分半から4分焼きます。表面が固まり、水分がなくなるまで焼きます。フライパンの中に閉じ込められた蒸気が、フライパンの下から来る熱よりも早く、厚みのあるふわふわの中身を焼き上げてくれます。最後の1分ほどはフタを外し、表面を乾燥させるように焼きます。これにより、生地表面がカリっとするそうです。縁が固まり、気泡がはじけ、縁の表面が乾いたように見えるまで焼けたらひっくり返します。そしてさらに2分、フタを外して焼きます。焼き加減は時計ではなくパンケーキの中心部で判断します。表面が茶色くなっているのに中心部がまだ湿っている場合は、火力が強すぎるか、パンケーキ生地が多過ぎるということです。
11:温めたお皿にパンケーキを盛り付け、温めたメープルシロップをかけたら完成。
なお、ベンさんのレシピは何人前を作るか(SERVINGS)、酸味の強さ(TANG)、使用する材料(WHAT I HAVE)を選ぶことで、わずかにカスタマイズすることが可能。乳成分としてデフォルトでは全乳リコッタチーズ・サワークリーム・ケフィア・無脂肪粉乳が使われていますが、ギリシャヨーグルト・ヨーグルト・カッテージチーズ・レブネ・バターミルク・牛乳・豆乳・オーツミルクなどで代用することもできるため、自宅の冷蔵庫の中身に合わせてレシピを微調整できるわけです。
ソーシャル掲示板のHacker News上では「世界にはもっとパラメトリックなレシピが必要だ!これは素晴らしい。気に入った」というコメントや、「Claudeの出力のように見える」というコメントもありました。なお、ベンさんはウェブサイトのAbsurdly Optimizedについて、「このサイトは大規模言語モデル(LLM)の多大な支援を受けて制作されたものです。文献検索・執筆・計算などを支援してくれています。アプローチは人間によるものです」とAboutページで説明しています。
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