世界最大のオンライン百科事典であるWikipediaは、ウィキメディア財団という非営利団体によって運営されています。2026年5月にウィキメディア財団の元CTOが解雇され、わずか1週間後にコミュニティ技術チームも解散させられた件について、デジタル活動家兼コンサルタントでありウィキペディア図書館の創設者でもあるジェイク・オーロヴィツ氏が「巨大IT企業のような労働組合つぶしだ」と批判しています。
Big Tech’s Anti-Labor Playbook Has Come for Wikipedia | by Jake Orlowitz | May, 2026 | Medium
https://medium.com/@jakeorlowitz/wikipedia-is-doing-the-capitalist-thing-56a393232943
Wikipediaは世界中の誰でも自由に閲覧・編集ができるオンライン百科事典であり、世界各地のボランティア編集者によって膨大な数の記事が作成・編集され、その内容の正確性について議論が行われています。ウィキメディア財団はWikipediaの運営母体であり、プロジェクトに必要な資金源の確保や運用、全プロジェクトの共通方針や法的措置に関する処理、ソフトウェアサービスやツールの開発などを担っています。
そんなウィキメディア財団は2026年5月中旬、Wikipediaの基盤となるソフトウェア・MediaWikiの元主任開発者であるブルック・ヴィッバー氏を解雇しました。ヴィッバー氏はウィキメディア財団が初めて採用した正社員であり、2005~2009年にはウィキメディア財団のCTOを務めた経歴の人物です。ウィキメディア財団もかつてヴィッバー氏のことを、「システムの技術的な基盤を深く理解している世界でもごく少数の人物」と評していました。
ヴィッバー氏の解雇から1週間後、ウィキメディア財団はコミュニティ技術チームの解散を発表し、これにより5人のエンジニアと1人の管理職が仕事を失いました。コミュニティ技術チームの仕事は、コミュニティ・ウィッシュリストと呼ばれる公式チャネルを通じてWikipedia編集者から寄せられた要望を形にすることであり、事実上ボランティアコミュニティが製品を管理する唯一のプロジェクトだったとのこと。
オーロヴィツ氏はヴィッバー氏が解雇されたり、コミュニティ技術チームが解散させられたりした理由について、ウィキメディア財団による労働組合つぶしだろうと指摘しています。ヴィッバー氏とコミュニティ技術チームのエンジニアの多くは労働組合の組織者であり、この動きをよく思わなかったウィキメディア財団が主要メンバーを排除しようと試みたというわけです。
ヴィッバー氏はウィキメディア財団から解雇されたことを報告したメッセージの中で、「この場をお借りしてウィキメディア財団の全職員の皆さんに、財団の従業員がいるいくつかの国々で現在進められている、労働組合結成の動きに参加していただくよう呼びかけたいと思います。すべての労働者は職場運営について意見を反映させる権利があり、すべての職場には労働組合が必要です」と訴えました。なお、ヴィッバー氏は今後もWikipediaのボランティアコミュニティに所属し続けるほか、MediaWikiのオープンソース部分についても開発を続けると述べています。
Brooke’s departure from Wikimedia Foundation – Wikitech-l – lists.wikimedia.org
https://lists.wikimedia.org/hyperkitty/list/[email protected]/thread/TRCM57VX5TNE5JACRSIN3XFVDBUWTOVM/
オーロヴィツ氏は、ウィキメディア財団は過去10年近くにわたってシリコンバレーのIT企業ようなトップダウン型の意思決定を行い、コミュニティの信頼を失ってきたと指摘。ヴィッバー氏の解雇やコミュニティ技術チームの解散について、「これは典型的なIT業界のやり口です。システムの仕組みを理解しているエンジニアを解雇し、労働組合を組織する者も解雇し、派手な製品を出荷する前に壊滅的な問題が発生しないことを祈るのです。Twitterも、Metaも、Salesforceも、Googleも、皆がこの手法をやってきました」と述べています。
ウィキメディア財団の労働組合が求めていることは、「経営陣がスタッフとコミュニティ双方への透明性と説明責任を果たす」「最終決定前に年間計画に関するスタッフの意見を反映させる」「一貫性のない採用・解雇・昇進慣行の廃止」「安全に異議を唱える権利の保障」「コミュニティと直接関わる労働者へのメンタルヘルス支援」などです。
オーロヴィツ氏は、有能なCEOであればこれらの要望を自ら率先して実行し、労働組合を歓迎して寛大な契約を結び、これから待ち受けるAI時代において困難な決定を下すための地盤を固めるはずだと指摘。しかし、ウィキメディア財団はこれと真っ向から争う道を選んだと非難しています。
すでにWikipediaの編集者らは特設ページを作成し、ウィキメディア財団の労働組合と連帯することを表明する署名活動が始まっています。オーロヴィツ氏は、ウィキメディア財団は過去20年にわたり打ち出してきた「自分たちは他のテクノロジー企業とは違う」というメッセージの真偽が、今後の労働組合結成運動との向き合い方で明らかになるだろうと指摘しました。
Wikipedia:Wiki Workers United solidarity – Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Wiki_Workers_United_solidarity
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