ユーザーのチャット履歴を使って「顧客のAIエージェントツイン」を作成して市場調査に生かす企業が登場 – GIGAZINE


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製品開発やマーケティングに欠かせない市場調査は、1500億ドル(約2兆3800億円)規模の巨大産業となっています。ユーザーのチャット履歴を使って、AIで「エージェントツイン」を作成するSimileというAIスタートアップは、従来の企業が行ってきた市場調査をAIで置き換えることを目指していると、日刊紙のウォール・ストリート・ジャーナルが報じました。

Can AI Replace Humans for Market Research? – WSJ
https://www.wsj.com/cio-journal/can-ai-replace-humans-for-market-research-4f818890


Simileはカリフォルニア州パロアルトに拠点を置くAIスタートアップで、人間とのチャットから収集したデータを利用してAIエージェントを訓練し、人間のデジタルクローンである「エージェントツイン」を作成しています。Simileが作成したAIエージェントツインは元となった人間の好み・性格・その他特性を有しており、ユーザーはインタビューを通じてエージェントツインからさまざまなデータを収集可能。これらのデータを被験者の行動データや購買データと組み合わせることで、人間を対象に市場調査を行った時のような調査結果が得られるとのこと。

長らく、市場調査では伝統的な市場調査会社やコンサルティングに頼るのが一般的でしたが、これには多額の費用や数カ月にわたる調査機関が必要でした。一方、Simileが作成したAIエージェントツインはより迅速かつ手頃な価格で市場調査へのアクセスを提供し、市場調査を行う方法を一変させる可能性があるといわれています。

SimileのCEOを務めるジュン・ソン・パク氏によると、顧客は年間15万~数百万ドル(約2400万~数億円)でSimileのオンラインAIエージェントバンクにアクセスできるとのこと。顧客はAIエージェントツインに膨大な質問を行い、市場調査の作業コストや期間を削減することが可能。また、Simileは独自の行動予測AIモデルを開発し、それをさまざまなオープンソースモデルと組み合わせているそうです。

SimileはAIによるシミュレーション技術への関心が高まったことを受け、2024年にスタンフォード大学からスピンアウトした企業です。パク氏と2人の共同創業者は2023年、AIによるインタラクティブな行動シミュレーションに関する論文も発表しています。2026年2月、シリーズAの資金調達ラウンドで1億ドル(約158億円)の調達に成功したと発表しました。


アメリカでドラッグストアや処方薬管理プログラムを展開するCVS Healthは、自社のベンチャーキャピタルプラットフォームであるCVS Health Venturesを通じてSimileに投資しています。CVSは過去1年間にわたり、顧客に関する質問の回答を得るためにSimileのAIエージェントツインを活用してきたとのこと。

CVSが活用するAIエージェントツインは、40万人以上の実在の人々から同意を得た290万件の回答に基づいています。CVSは過去のアンケート回答やサポート対応といった自社データを利用して、AIエージェントツインの回答を補正しているとのことで、内部テストではAIエージェントツインが既知の回答結果を95%の精度で再現することが確認されています。

CVSのエンタープライズ・カスタマーエクスペリエンス&インサイト担当副社長を務めるスリ・ナラシンハン氏は、AIエージェントツインは人間と違って「常時稼働」する点が特徴だと指摘。「私たちにとって本当に大きな進歩だったのは、より深く掘り下げることができるようになったことです。質問の数が多すぎて止まることはありませんし、疲れることもないのです」と述べました。

CVSはAIエージェントツインを使ったこれまでの調査で、人々が服薬ガイドラインをどの程度順守しているのかや、人々が薬に関して懸念している事項などを調べたとのこと。また、医療従事者や慢性疾患の患者といったアプローチが難しい層にも、AIデジタルツインを使ってアプローチできるとしています。CVSは今後さらにAIエージェントツインを拡大する計画であり、ナラシンハン氏は従来の市場調査の必要性は低くなっていくと見ています。

また、大手市場調査会社のギャラップもSimileとの提携を開始しており、1000以上のAIエージェントツインを顧客に提供する計画を進めています。ギャラップのグローバルマネージングパートナーを務めるジョー・デイリー氏は、顧客が関心を持つと予想する分野として政策調査・トレンド分析・企業調査を挙げています。ゲイリー氏は、「AIエージェントツインによって従来よりも深く、大きな規模で、少ない経済的障壁で調査に取り組むことができます」と述べました。


パク氏は、将来的にSimileの顧客が「マルチエージェントシミュレーション」、つまりAIエージェントツインが相互作用する機能を求めるようになると予測しています。AIエージェントツインの相互作用を分析することで、現実世界で再現されるより複雑なシナリオをシミュレート可能になると期待されています。

ITコンサルティング企業のGartnerで新興技術アナリストを務めるエヴァン・ブラウン氏は、市場調査はAIエージェントツインが成果を上げやすい分野だと指摘。医療現場などでAIエージェントツインを採用した場合、誤作動や幻覚が命に関わるリスクがありますが、マーケティングが失敗しても即座に致命的な問題になる可能性は低いといえます。

Simileは自社のAIエージェントツインに、役割ベースのアクセス制御や機密コンテンツの監視といったガードレールを採用しているとのこと。また、CVSもAIの幻覚やその他の不正確さを防ぐため、AIエージェントツインの回答を人間の回答で検証したり、研究者に矛盾点の指摘や結果の妥当性チェックを依頼したりしているそうです。

ナラシンハン氏は、「私たちにとって、テストの流れを絶えず維持し、実際のユーザーを対象にテストされていることを確認することが重要です。私たちは実際の顧客との対話を決して止めません」とコメントしました。

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