近年のスマートフォンはほとんどが何らかの急速充電規格に対応していますが、「急速充電はスマートフォンのバッテリーを消耗させる」といった説もささやかれています。ガジェット系YouTubeチャンネルのHTX Studioがこの説を検証するため、iPhoneとAndroidスマートフォンを使用して数カ月に及ぶテストを行った結果を報告しています。
Is Fast Charging Killing the Battery? A 2-Year Test on 40 Phones – YouTube

Testing Whether Fast Charging Kills Smartphone Batteries, And Other Myths | Hackaday
https://hackaday.com/2025/11/10/testing-whether-fast-charging-kills-smartphone-batteries-and-other-myths/
スマートフォン業界では急速充電が当たり前のものになっている一方、「急速充電はスマートフォンのバッテリーを消耗させる」という説も根強く残っています。
また、「バッテリーが残り30%程度になったら充電し、80%程度で充電をやめるのが最もバッテリーに優しい」と主張する人もいます。
そこでHTX Studioは、これらの疑問の答えを見つけるための実験を行いました。
まずは6台のiPhone 12を用意し、「急速充電グループ」と「低速充電グループ」に分けました。
続いてこれらのスマートフォンのバッテリー容量を測定し、「Discharge Loop(放電ループ)」というアプリをインストールしました。
放電ループアプリが起動すると、スマートフォンのバッテリーを放電するプログラムを実行し始めます。バッテリー残量が5%まで低下すると、アプリは充電器に接続されたリレーに信号を送り、充電が開始されます。
そして、バッテリー残量が100%まで回復したらアプリが充電を止めるように信号を送り、再び放電プログラムを実行。このサイクルを何度も繰り返します。
1回の試行でバッテリー容量の約95%が充電および放電されるため、これを「0.95サイクル」とカウントし、合計「500サイクル」に達した時点で終了。
500サイクル終了時のバッテリー容量を再測定し、急速充電グループと低速充電グループでバッテリーの消耗がどれほど異なるのかを調べるという実験です。もし急速充電グループの方が低速充電グループより多くの容量損失を示した場合、「急速充電はバッテリーを消耗させる」という説が立証されたことになります。
また、実験では別のiPhone 12を3台用意し、これらを「30%~80%の間で充放電するグループ」に割り当てました。これらは1回の試行でバッテリー容量の約50%を充放電するため、これを「0.5サイクル」とカウントして、「500サイクル」に達するまで試行を繰り返しました。
もし「30%~80%の間で充放電するグループ」が最もバッテリー損失が少なければ、スマートフォンのバッテリー残量を30%~80%の間に保つことが、バッテリー保護に役立つということになります。
最後に、対照群として1台のiPhone 12も用意しました。このiPhoneは充放電を行わずに放置して、すべての実験サイクルの開始時と終了時にのみバッテリー容量を測定したとのこと。
さらに、HTX StudioはAndroidスマートフォンでも同じテストグループを用意し、同様の実験を行いました。なお、急速充電グループでは120Wの充電規格を採用し、低速充電グループでは18Wの充電規格を採用しました。
実験に使用したスマートフォンはすべて公式ストアで購入したもの。HTX Studioはどのブランドとも連絡を取らず、完全に独立した第三者として実験を行ったとのことです。
テストにどれほど時間がかかったのかがわかるように、HTX Studioはテスト中のスマートフォン付近で植物を育てながら、タイムラプス撮影を行いました。
植物が発芽。
植物がにょきにょき育つ間も、スマートフォンは充放電サイクルを繰り返しています。
植物がしおれても充放電サイクルは止まりません。
植物は枯れても、実験は継続されたとのこと。
実験開始から167日後、すべてのスマートフォンの充放電サイクルが完了しました。
iPhone 12では、急速充電グループがバッテリー容量の11.8%を失いました。一方、低速充電グループのバッテリー損失は12.3%。確かに違いは生じたものの、わずか0.5%の差にとどまりました。
Androidスマートフォンでは、急速充電グループのバッテリー損失が8.8%、低速充電グループのバッテリー損失は8.5%とこちらも微差でした。
つまり、500回におよぶ充放電サイクルを経過したとしても、急速充電を行った場合と低速充電を行った場合で、ユーザーが気付くほど大きな差は生じないということになります。
バッテリー残量を30~80%の間にとどめるグループでは、iPhone 12のバッテリー損失が8.3%にとどまり、急速充電グループよりも4%少ない損失に抑えられました。
Androidスマートフォンでは、バッテリー残量を30~80%の間にとどめるグループのバッテリー損失が6.0%となり、やはり急速充電グループより損失が2.5%少ないという結果になりました。
そのため、HTX Studioは「バッテリー残量を30~80%の間で維持することがバッテリー損失を減らすのに役立つ」と結論付けていますが、その改善効果は限定的なものだと指摘しました。
また、「スマートフォンを常時充電状態にしておくのはバッテリーに悪い」という説もあり、Appleも長期間充電したまま保管するのを避けるようにアドバイスしています。
HTX Studioはこれを6台のiPhone 12でテストしましたが、1週間程度のテストでは、充電をやめた場合と比較してバッテリー容量に差は出なかったとのことです。つまり、充電しっぱなしになることによるバッテリーの劣化は、長期的なプロセスであるといえます。
HTX Studioは、「スマートフォンを充電する最良の方法は、好きなようにすることです。考えすぎないでください。精神的なエネルギーをわずかなバッテリー寿命と交換しないでください」とアドバイスしました。
さらにHTX Studioは、バッテリー容量によってスマートフォンの使用感がどのように異なるのかもテストしています。テストにはバッテリー容量が94%・89%・85%・81%のiPhone 12と、77%のiPhone Xが用いられました。
4時間にわたり連続使用した場合のバッテリー残量は、バッテリー容量が94%のiPhone 12で39%、バッテリー容量が89%のiPhone 12で41%、バッテリー容量が85%のiPhone 12で33%、バッテリー容量が81%のiPhone 12で26%となりました。
バッテリー容量が77%のiPhone Xでは、3時間52分後に電源が落ちてしまったそうです。
バッテリーを交換して同様のテストを行ったところ、交換前のバッテリー容量が少ないほど4時間後のバッテリー残量改善は大きくなりました。
HTX Studioは、バッテリー容量が85%前後まで低下した段階でバッテリーの寿命が短くなったと感じ始め、80%前後になったらバッテリー交換をするべきだろうと述べました。
また、スマートフォンではバッテリー残量が少なくなると処理速度が低下する機能(スロットル)が働き始めます。この処理速度の低下が始まるタイミングも、バッテリー容量が少ないほど早くなります。
たとえば、バッテリー容量が85%のiPhoneでは、バッテリー残量が11%になるとスロットルがかかりますが、新しいバッテリーではバッテリー残量が5%になるまでスロットルがかかりません。
なお、今回の実験に使われたスマートフォンはすべてバッテリーを新品にした上で、視聴者にプレゼントしたとのことです。
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