日本には食事の際に満腹まで食べるのではなく、満腹の8割程度にとどめる「腹八分」という考えがあります。この腹八分の食習慣が食事に対する気づきと感謝をもたらし、体重増加を抑えて健康につながると、イギリスのカーディフ・メトロポリタン大学で栄養学講師を務めるアイスリング・ピゴット氏が解説しました。
腹八分は、江戸時代の儒学者である貝原益軒の健康指南書「養生訓」に由来する概念であり、近年はダイエットの方法としても注目を集めています。しかしピゴット氏は、腹八分を食事制限の方法として捉えるべきではなく、むしろ食事の時間をゆっくりと過ごし、気づきと感謝の気持ちを学ぶ方法だと主張しています。
これまでのところ、腹八分に関する科学的な研究は限られていますが、入手可能なエビデンスからは腹八分が1日の総カロリー摂取量を減らす可能性があることが示唆されています。また、腹八分は長期的な体重増加の抑制や平均ボディマス指数(BMI)の低下に関連しているほか、腹八分を実践する男性はより多くの野菜を摂取して穀物の摂取量を減らすという健康的な食事パターンを選択する傾向があることもわかりました。
さらに腹八分は、自分が何を食べているのかに意識を向けるマインドフルイーティングや、自分の空腹感に耳を傾けて食事をする直感的な食事とも多くの共通点があります。研究によると、これらの食事法は感情的な過食を減らし、食事の質を向上させることが示されています。
特に近年では、成人および子どもの70%が食事中にデジタルデバイスを使用しており、これはカロリー摂取量の増加や果物・野菜の摂取量の低下、摂食障害の増加などと関連付けられています。ピゴット氏は、「私たちは食べ物を神格化し、執着し、それについて語り、投稿しますが、実際には食べ物を楽しんでいないことが多すぎます。私たちは食べ物とのつながりや感謝の気持ちを失っているのです」と述べました。
ピゴット氏は、腹八分を心がけることで食べ物への意識を高め、味わう時間を確保し、食事を楽しむことは、体と食事のつながりを再構築して健康的な食生活につながると主張しました。そして、腹八分を試してみる人に向けた7つのアドバイスも送っています。
空腹感を解消するために食事をする前に、「自分は本当に空腹なのか?」「一体どういう種類の空腹なのか?」と問いかけることが重要です。もし身体的に空腹を感じているのであれば素直に食べるべきですが、実は「退屈だから」「疲れているから」「ストレスを感じているから」といった理由で何かを食べたいだけというパターンもあります。食べる前にじっくり考える時間を設けることで、食事が空腹以外の問題の対処法になってしまうのを防ぐことができます。
◆2:気を散らさずに食べる
食事をしながらスマートフォンやテレビを見るのが習慣になっている人も多いですが、腹八分を実践する際は画面から離れ、食事に集中するべきです。画面に注意を向けていると満腹感を察知する感覚が邪魔され、食べ過ぎにつながってしまう場合があるとのこと。
◆3:ゆっくり一口ずつ味わう
食事は感覚的な満腹感を得る体験であるべきです。ゆっくり食べることで満腹感を察知しやすくなり、食べるのを止めるタイミングを知ることができます。

◆4:心地よい満腹感を目指す
完全な空腹を「1」、横になりたいほどの満腹感を「10」とすると、腹八分が目指す満腹感は「8」程度になります。「8」の満腹感を目指すため、ゆっくりと食べて体のサインに耳を傾けることが重要です。
◆5:できるだけ誰かと一緒に食べる
食事において重要な要素のひとつが、人とのつながりや会話です。食事中のコミュニケーションは人間特有のものであり、長寿のカギにもなるとのこと。
◆6:栄養をしっかり摂取する
腹八分はあくまで満腹感の目安であり、食事の量を極端に減らしたり、特定の食材を排除したりする食事制限とは異なります。ピゴット氏は、「食事にはビタミン、ミネラル、食物繊維、エネルギーが豊富に含まれるようにしてください」とアドバイスしています。
◆7:自分への思いやりを持つ
腹八分のポイントは、「完璧な食事」を目指さなくていいということです。重要なのは自分の体に意識を向けることであり、食べる物について罪悪感を抱くことではありません。

食生活を変えるダイエットを減量の手段として捉えた場合、過度なカロリー制限や栄養不足に陥り、その反動で過食に走ってしまうリスクがあります。一方、腹八分は食事制限のアプローチではなく、あくまで適度な量と体に合った食事を推奨するという点で異なります。なお、腹八分はすべての人々に適しているわけではなく、より多くの栄養を必要とするアスリートや成長中の子ども、高齢者、病気を持っている人などは、腹八分では足りない場合があることもピゴット氏は指摘しています。
ピゴット氏は、「腹八分はしばしば単純な『80%の満腹度』という指針に矮小(わいしょう)化されがちですが、その本質は『意識的な節度』という広範な原則を反映したものです。腹八分の核心は、体の声に耳を傾けて過食を避けつつも空腹を尊重し、エネルギー源として食べ物に感謝することです。これは時代を超えて実践するべき習慣です」と述べました。
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