2025年7月にリリースされたiOS 18.6では、サードパーティ製アプリマーケットのインストール手順が、従来の15ステップから6ステップに簡略化されました。その結果、インストール途中で面倒くさくなって離脱してしまう率が65%から25%まで低下したことから、「Appleのこれまでの設計はユーザーを離れさせていた、そしてGoogleの設計は今もそのような問題がある」とEpic Gamesがデータを示して主張しました。
Apple’s Improved 6-Step Install Flow Proves That Scare Screens and Deceptive Design Undermine Competition – Epic Games
https://www.epicgames.com/site/en-US/news/apple-s-improved-6-step-install-flow-proves-that-scare-screens-and-deceptive-design-undermine-competition
Epic says it has proof Apple was scaring users off third-party app stores | The Verge
https://www.theverge.com/news/789421/epic-games-store-ios-android-installations
2023年からEUが施行しているデジタル市場法は、大手プラットフォームとそれを提供する企業を「ゲートキーパー」と定義した上で厳しい規制を設けており、違反すると最大で前年度の全世界総売上高の10%の罰金が科せられます。ゲートキーパーと指定されているのは、Apple、Googleの親会社であるAlphabet、Amazon、ByteDance、Meta、Microsoftで、 欧州委員会は2024年3月にApple、Alphabet、Metaをデジタル市場法違反の疑いで調査していると発表しました。その調査の結果、Appleがアプリ開発者に対し、「料金を課すことなくユーザーをApp Store以外のサービスに『誘導』することを認める義務を順守していない」と欧州委員会は判断しています。
AppleがEUのデジタル市場法に基づき訴追される最初の企業になる可能性 – GIGAZINE
デジタル市場法に基づいて問題視されているものの一つに、「サードパーティアプリをインストールする手順の複雑さ」があります。以下は、Epic Gamesが示した「iOS 18.6以前のApple端末で、サードパーティアプリをインストールする手順」です。サイトにアクセスした後、許可をタップして、インストールをタップ、ホームに戻って、設定アプリをタップ、追加するサードパーティアプリを許可、許可の確認、設定アプリに戻り、ホームからブラウザを再度立ち上げ、インストールを完了する、という手順が必要でした。操作自体は簡単ですが、App Storeからアプリを入れる場合はアプリの画面からインストールするだけなのと比べると、余分な手順が多くなっています。
また、以下はAndroid 12でサードパーティアプリをインストールする手順で、こちらも12ステップと多くなっています。
この状況を受け欧州委員会は2025年4月に、サードパーティアプリの規則に関する予備的調査結果を発表しました。調査の結果では、ユーザーがサードパーティアプリをインストールする過程で「過度に負担および混乱を招く」ような設計・導線を設けている、またAppleは過度に厳格な資格要件を導入して開発者がサードパーティアプリを配信することを妨げているとして、Appleがデジタル市場法に順守していないと判断しました。
欧州委員会の警告を受けて、Appleは2025年7月にリリースしたiOS 18.6で、サードパーティアプリのインストールプロセスを大幅に改善しました。以下は、Epic Gamesが示した「iOS 18.6でサードパーティアプリをインストールする手順」ですが、サイトからインストールをタップして許可をしたら、そのまま確認プロセスを進めるだけでインストールが完了し、15ステップあった手順が6ステップまで短縮されています。
結果として、アプリをインストールしている途中にインストールをやめてしまう「離脱率」が、iOS 18.6以前とiOS 18.6以後で比較すると、65%から25%まで低下したとEpic Gamesは述べています。以下は、Epic Gamesが示した月ごとの離脱率を示したグラフ。iOS 18.6リリース後の2025年8月頃に、ガクンと離脱率が低下していることがわかります。
従来の離脱率が高かった理由について、設定アプリを別途いじる必要がありユーザーを行き詰まらせていたほか、「サードパーティアプリはスマホに有害である可能性がある」など「ユーザーを怖がらせるような警告画面」が表示されていたことが原因だとEpic Gamesは主張しています。iOS 18.6でインストールプロセスが改善した結果、依然としてAppleの一部の設計は反競争的な行為が含まれるものの、WindowsやmacOSに近い離脱率まで抑えることができつつあるとEpic Gamesは述べています。
一方で、AndroidにおけるサードパーティアプリインストールプロセスはiOS 18.6のように改善されておらず、「デジタル市場法に違反し続けている」とEpic Gamesは批判しました。Androidにおけるサードパーティアプリインストールの離脱率は依然として50%あり、Epic GamesはGoogleとの訴訟でこの点についても言及しているそうです。
Epic Gamesの訴訟やEUの関連法などにより、iOSとAndroidの支払手数料や外部決済リンクの可否、アプリの配布制限など、さまざまな点がApple・Googleの独占的状態から解消されつつあります。一方で、EpicのサードパーティアプリであるEpic Games StoreはEU限定であるなど、制限は完全に解消されてはいません。今後、Epic GamesとGoogleのさらなる訴訟などを通じて、より広範な変更が行われる可能性があります。
Googleが対Epic Games裁判の控訴審でも敗北、「Epic Games Store」がGoogle Playに登場可能に – GIGAZINE
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