船の誘導係「水先案内人」にもリモートワークの波が到来 – GIGAZINE


メモ


2019年以降の新型コロナウイルス感染症の大流行、通称「コロナ禍」を経て、世界中でリモートワークの導入が進みました。リモートワーク導入の余波は港湾にも及んでおり、実際にリモートワークをしている人の仕事ぶりをウォールストリート・ジャーナルがまとめています。

Remote Work Comes to Piloting Ships – WSJ
https://www.wsj.com/articles/remote-work-comes-to-piloting-ships-ed89e8b2

港湾でリモートワークをしているというのが、デンマークに住む62歳のヨルゲン・アンデルセン氏。アンデルセン氏は港に到着するあらゆる船舶に乗り込み、沿岸水域での出入港を誘導する水先案内人(Marine Pilot)として働いています。

何世紀もの間、水先案内人は自分の船舶で他船を誘導するか、実際に他船に乗り込んで航路を示していました。ところが、近年では遠隔で船舶を誘導する技術の導入が進められており、水先案内人は陸上から船舶を誘導するようになっているということです。

アンデルセン氏はいつも室内で6台のモニターに向き合って仕事をしています。このモニターには、港湾近辺にいる船舶が所有する海図や、船舶の速度、周辺にある障害物などが映し出されており、アンデルセン氏はこれらのデータに基づいて船舶を誘導します。


船舶に記録されたデータは通常「ブラックボックス」として扱われており、このようなデータを陸上と共有するのはデンマークで初めての試みでもあるそうです。

遠隔誘導システムを支援する業界団体はシステムの安全性と人間に代わることのメリットを強調しています。従来の水先案内人は昼夜、天候を問わずあらゆる船舶に乗り込むため、時には危険が伴います。2025年7月には66歳の水先案内人がハシゴから6メートルも転落し重傷を負う事件があったばかりです。また、水先案内人のボートを付けるために船舶が減速すると、余計な燃料を消費します。


アメリカ・ニュージャージー州に本拠を置く国際港湾労働者組合は「遠隔誘導推進派の一部は商業的利害を優先しているように思える。焦点は船舶の安全な航行に置かれるべきだ」と指摘しつつ、「遠隔誘導が水先案内人の仕事を補完するのであれば我々に調査義務がある」と補足し、カナダ沿岸警備隊およびカナダ海事操船専門センターと共同で遠隔誘導に関する初期の研究を実施していると伝えています。

遠隔誘導技術を開発するDanPilotのエリック・メルケス・ニールセンCEOは「活用事例が現在十分に蓄積され、オーストラリア、シンガポール、フィンランド、スウェーデンなどで水先案内人の関心を集めています。また、船舶に派遣可能なドローンの試験を実施中であり、これにより水先案内人は映像・赤外線・暗視機能を利用して濃霧の中でも視認が可能となります。悪天候時にハシゴをよじ登る危険な作業ばかりではなくなるはずで、水先案内人の職務に変革をもたらすでしょう」と語りました。

この記事のタイトルとURLをコピーする


ソース元はコチラ

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事